マーケティング部

良い品が売れるとは限らない 田中淳夫(ノンフィクション作家)

「田舎暮しの本」という雑誌がある。
縁があって、以前取材をしていただいたのだが、その時取材された田中淳夫氏が別の雑誌に書かれた文を紹介する。

 九州のある村を訪れた。そこで会ったTさんは、二棟の水耕栽培施設によって葉野菜やなりものを生産していた。すでに収益は年間数千万円になり、家族以外に常時五、六人雇用して日々の仕事をこなし、有限会社も設立していた。
 この水耕栽培プラントは、村が建てたものを四年前に引き継いだという。驚いたことに、Tさんは地元の人間ではなく、まったくの農業の素人だった。県の新規就事業に応募して移り住んだのである。一方村が経営していた時代の水耕栽培事業は、慢性的な赤字を抱えていた。人件費や高熱費、運送費などのコストを村が負担して帳尻を合わせている状態だった。それを引き継いだTさんはたった一年で黒字に転換させた。
 Tさんは、成功の秘訣を「営業努力です。」と簡単に説明してくれた。生産した野菜類を農協に任せて地元市場に出荷するだけでなく、さまざまなチャンネルを使って高価格で契約し、また新たな市場への営業活動を行った。独自ブランドも設けた。その結果、大幅に収支が改善されたのである。
 この事実にTさんは、「良い品を作っていれば黙っていても売れる、とは限らない」という言葉を発した。
 同じ時期に新規就農した人々の中には、作物の品質を上げることに熱中する人がいる。しかし、結果として経営はあまりうまくいっていない。なぜなら販売に工夫が見られないからだ。
 農家に限らず生産者は、ものづくりには熱心だが、販売方法にも同じ努力をかける人が少ない。しかし品質を上げても、販売方法が変わらねば売れ行きに反映されにくい。むしろ品質より宣伝の力で打っている商品がいかに多いことか。
 もちろん品質より宣伝だ、というつもりはない。一定以上の品質を保つことは最低限の条件だろう。また一層の品質向上の努力も重要だ。しかしどんな商品も消費者の目にとまらないと買ってもらえないし、逆に買いたたかれるケースも出てくる。
 各地の特産品の中で成功したケースを追うと、必ず担当者の並々ならぬ販売努力が存在した。ところが、視察に行ってもそれに気づかない人が多いようだ。たとえば某村でユズの加工品が大ヒットしたため、周辺の村も類似商品を出したものの、赤字を抱えて苦しんでいた。逆に二番せんじを自覚した商品が、本家を抜くほど売れたケースにも出会った。その差は、やはり販売努力だ。商品の品質や、独自のアイデァは重要だが、経営成功のカギを握るのは営業力なのである。
 農業だけではない。林業でも国産材が売れないという嘆きが聞かれるが、肝心の大手住宅メーカーは「これまで国産材の業者が営業に来たことはない」ともらす。販売努力をせずに売れないと不平をもらしているのである。
 農業や林業も、営業がビジネスの基本であることを再認識してほしい。
(この記事は、平成13年度の「農林経済」の第○号の巻頭言に記載されたものを、ご本人の許可をえて転掲したものです。)


販売部

天使 百姓が物を作りさえすればよい時代は終わりを告げた。
直売所の天使の声に救われて、今日も又、ファーマータナカは過酷な戦場に飛び出して行く。
「ビールを飲む暇があったら、更新せよ。」とものの本に書いてある。

せめて1週間に、1度は何らかの形で更新しようと決心してこのページを立ち上げたのだが、やはりこの体たらくだ。
世の偉大な経営者の方々に比すれば、きっと日々の仕事の量も質も雲泥の差があることはわかっているのだが、でも、メチャ忙しいのだ。
昨日だって、銀河高原ビール(酵母が生きていた)と蘭館夢譚という日蘭交流400周年記念醸造日本酒(ハウステンボスで買ったやつ・・・ちょっと甘かったけど正にライスワインという言葉がぴったりの味わいだった)を引っ張り出して飲むだけの暇しかなかった。

ところで前回は、直売の愚痴をタラタラ書いてしまったので、少し心温まる話をしよう。

先週末、例によって大山町の直売所「木の花ガルデン」にトマトとサラダ菜を持って行った時の事である。
その直売所に天使がいて、真珠のような言葉の星を降らせたのである。

この直売所への配送は、日、火、木は農協がやってくれる。がその他の日は自分で持って行くしかない。通常は、早朝仕事の前に持って行くのだが、場合によっては、仕事を終えて、夕方行くこともある。
ファーマータナカの高給を時間給に換算し、ガソリン代の2乗で除し、睡眠不足時間を減じると、今はやりの費用対効果の観点からは、首を傾げざるを得ないかもしれない。

それはさておき、荷物を降ろしていると、天使が、
「『津江のトマトはないんですか?』と何人もレジに聞きに来られますよ。」と、声をかけてくれた。
苦しいけれど、ほんとうに救われる一瞬だ。
その天使(天使って女性でしたっけ?)は、あくまでも主観によれば、世界一、いや宇宙一美女であった。
もちろん聞きに来たお客様は間違いなく全員良妻賢母、美人薄命、容姿端麗、淡麗辛口(おっとこれは関係なし)、とにかく絶世の美女だったことは、想像に難くない。

そう思って、つらつら考えてみると、いかに多くの人々に支えられていることだろう。

「人気メニューになりつつありますよ。」とは、グルメトマトのメニューで使っていただいてる久留米市内の炉ばたの大将。
津江の新しい特産品として、積極的に紹介してくださる、地元民宿の女将。
水郷日田の旅館の女将さん達。
会席料理の一メニューとして使っていただいている、愛知県の蟹料理専門店の店長。
野菜流通に夢と情熱を傾ける、若き中卸会社の社長と、彼を紹介してくれた、元の店の飲ん兵衛お客さん。
企画やイベントに何度も使ってくれる上津江村役場の職員の皆さん。
上津江村の地産地消を目指す、森の宅配屋さん、やすらぎの里さん。
アルコールの代わりにフルーツトマトジュースをオーダーしてくれる、クラブのホステスさん。
カリウム、カリウムと、毎月宅配を心待ちにしてくださる、健康志向だけど、飲み屋街を徘徊するTさん。
木の花ガルデン、道の駅、津江の森、ふきのとうの直売所の皆さんとお客さん。
有機野菜が専門なのに扱っていただいているTさん。
地元の日田市や小国町のスーパーさん、食材宅配屋さん。
宅配を通じて知り合った何人ものリピーターの人達。
「アグリの杜」さんをはじめ、紹介していただいているネット上の方々。
数億のURLの中から、奇跡的にたどり着いていただいた数少ないネットのお客さん。
無理やりつき合わされている、学生時代の悪友達。
同じく飲食店時代のスタッフとお客さん。
同じく簿記学校時代のの悪友・・・・・。
(順不同です。怒らないで下さい。)

市場取引でお世話になっている、青果会社、中卸、量販店・業務店ルートの取引に比べれば、量も少ないし、配達や梱包、結構大変だけど、顔の見える取引というか、これは百姓冥利に尽きると心から思う。

と、感謝と決意を新たにするファーマータナカであるが、何かあるとすぐめげてしまうところが、人間らしいというか、ですので末永く支えてください。お願いします。(2002.04.14 No.10)

広告宣伝部

ラジオ出演 NEW 生産者と消費者のマッチングは正しく行われているのか。
市場は末端消費者のニーズを本当につかんでいるのか。
メディアの反響に度肝をぬかれたファーマータナカであった。
インターネットビジネスの話題は尽きない。
楽天をはじめとする、巨大なショッピングサイト、次々に誕生する成功者の情報、新たなヒット商品の数々・・・。
だが、一方で、見栄えのよいホームページを持ったのはいいが、実際は出店経費が売上よりも高かったり、ホームページの出来栄えはよいが、結局製作会社を儲けさせただけだとかいった声も聞かれる。
(有)ニューファーマーズファクトリーも推して知るべしといったところである。
アクセスカウンターの単位は実は千(,000)ですよと見栄の一つも張りたいところだ。
(もちろんこのページからオーダーをいただいた沢山のお客様には、ただひたすら感謝感謝である)

しかし、反面いいこともあるのである。
当然といえば当然なのであるが、インターネットは途轍もなく膨大な情報の集合体だ。
という訳で、ビジネスとして情報を探している会社がいっぱいあって、特にメデァ関係とか、ある企画について情報を収集しようとする場合、打って付けなのである。

てな訳で、ラジオ出演なのである。
今回お世話になるのは、TBSラジオの「日本列島ホット通信」という全国放送の情報番組だ。

 旬の夏野菜→トマト→森のトマト姫

これしかないと言えるような100点満点の模範解答だ。
(本当のところは、よくも探しあてたものだとTBSを褒めてあげたい)
ファーマータナカは、学生の時の就職希望先はマスコミ関係だったのだが(こういう訳の判らない輩がうじゃうじゃいたのだ)、その頃からTBSには一目おいていたのだがやはり流石というべきか。
で、肝心の放送日時をお知らせしておきます。

近隣の受信可能な放送局は以下の通り。放送日は7月15日(火)。
  OBS大分放送  14:20頃
  RKK熊本放送  13:15頃
  RKB毎日放送  14:52頃
だそうです。
(念のため申し添えておきますが、当日は受付電話回線は100本しかなく、つながりにくいと思われますのでご了承下さい。又向こう1年間くらいは注文殺到が予想されますが、トマトの樹任せなので、熱(ほとぼり)のさめた頃のご注文がよいかと思います。それまで会社が存続してる事を願うばかりです。)(2003.07.14 No.18)
24時間TV メディアにとり上げていただき、大変ありがたいのだが、注文殺到→
億万長者の強迫観念に不眠症となるファーマータナカであった。
今年もまた24時間TVの季節がやってきた。
人の愛や善意は尊いものだ。
人の愛や善意をただただ求めてやまないファーマータナカも又その存在自体が尊い。(やや論理展開に無理があるか?)
ただそれらをどう扱うかについては、確かにいろんな論議がある。
が、その点についての考察は、次項に譲ろう。

FBS福岡放送に、「ナイトシャッフル」という番組がある。
おなじく「めんたいワイド」という番組(先日フルーツトマトジュースの紹介をしていただき、例えて言えばMegaどころか、Gigaや Teraいやいや無量大数や不可思議的なご注文お問い合わせをいただいた。ありがとうございました。桁外れの大法螺吹きでした)が、「涼麺」というしろものを作るそうである。
それに対抗して、究極のハンバーガー「ナイトシャッフル・バーガー」というものを作り、それを福岡ドームの前で販売して、その売上を募金しようという企画だそうだ。

以前これまた「どっちの料理ショー」という番組のたしか「オムハヤシVSカツカレー」の中で、ハヤシソースかケチャップの材料に当社のフルーツトマトジュースを使いたいとの問い合わせがあった時(お目が高い)、結果的に不覚にも採用ならなかったという苦い経験がある。
採用され放送されていれば注文殺到で、一躍億万長者の仲間入りであったが、この分だと、億万長者になるのが少し遅れるようだ。
ミーハータナカとしては、求めてやまなかった愛と善意をこちらから差し出す絶好のチャンスを逃す訳にはいくまい。
(誤解のないように言って起きますが、愛と善意で食材の提供はいたしますが、御代はいただきます。ハイ)というわけで、当社のトマト「森のトマト姫」が、バンズにはさまれることになったのである。
究極というくらいだから、お肉はもとより、レタスや玉葱も極上らしい。
それにしてもうちのトマトがサブの食材というのは、滅茶苦茶贅沢ではないか。
ざっと原価計算しても、売価の40%近くになる。(うっ!計算間違いか)
フルーツトマト・バーガーとよんでもよさそうだ。
困るのは、ひょっとして、マクドナルドが新メニューとして採用したいなどといってきた場合、契約金はいくら位だろうか、(この場合、億万長者になるのが少し早まる事になる)はたまた量が少し足りないかもしれないと、心配で夜もおちおち眠れないことだ。

8月17日(日)の22:30〜23:24の放送では、若干の紹介もあるかもしれない。

では、8月24日(土)、25日(日)には、貴方の愛と善意を福岡ドーム前でお待ちしています。(2003.08.16 No.20)
メールマガジン(団塊の帰農) 厄介者は何処へ行っても厄介者だ。
いよいよメールマガジンの発刊だ。
以下に記念すべき創刊号を載せておく。

無料♪総購読者予定数10万♪ 2003年10月25日号(創刊号) ==== Vol.1
                1世紀に3回不定期発行・次回未定or廃刊予定
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆◆◆  森のトマト姫通信  ◆◆◆        [ 実配信数:雀の涙程度 ]
      ― ジョーク版 ―
                  ◇ 発行 ◇ (有) ニューファーマーズファクトリー ◇
                     ◇ 編集発行無責任者 ◇ ファーマータナカ ◇
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ユーザー登録番号:ヘロヘロ※〒⇒∞ゲロゲロ(文字化けではありません)

秋の上津江は秋桜も早々と枯れかかり、ススキがわがもの顔で漣んで
います。おお寒ッ(身も心も懐も)!!
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃★ 今号のトピックス ★    ・・・団塊世代は農を目指す・・・      ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
これから数年のうちに、我等「団塊の世代」800万人は一挙に還暦を迎えます。
定年退職する人、リストラされた人、離婚された人、肝機能障害の人、
アルコール&ニコチン(薬物はまさかないでしょうな)依存症の人に、今後の
人生を示唆する本が出ました。

現代農業11月号増刊
「団塊の帰農」 それぞれの人生二毛作 という本です。
http://www.ruralnet.or.jp/zoukan/200311kinou_m.htm
ファーマータナカの薄っぺらな人生も紹介されていますが、(本当はこの事が
言いたかっただけです)今後の貴方の、いや日本の、いやいや地球の未来の
ためにもぜひ購読をお奨めします。
業界では有名な雑誌ですが、一般にはマイナーな本なので、大型書店の
隅の方か、奥の倉庫を捜してみて下さい。
すでに返本になっているか、もともと入荷されていないかもしれません。
なお、10冊以上まとめ買いをされる場合は、無償で友人知人に配布される
事を妨げるものではありません。
立ち読みは現行犯のみ、150年以下の懲役、又は900円(定価)以下の罰金と
なっておりますのでくれぐれもお気をつけ下さい。
もちろん団塊の世代以外の方にもお奨めです。

---------------------------------------------------------------
次号予告 2036年10月25日までに第2号配信予定。
すでに御陀仏の場合は自動廃刊となります。

と、これはジョーク版で、凡庸なファーマータナカにとって、メルマガ発行は100年早い。
実は -- 現代農業11月号増刊号「団塊の帰農」 それぞれの人生二毛作 -- の取材を受けたので、ただそのことをお知らせしたかっただけなのでした。

堺屋太一氏が命名した、「団塊の世代」。実際には昭和22年から24年といわれるから、ファーマータナカは1年遅れをとっている。
だが、貧乏というものを肌で感じて育ち(何故か今も貧乏は継続している)、いわゆる高度成長を経て(自分自身は低成長のままデフレスパイラルに突入)、今まさしくリストラの憂き目に遭っている(家庭内リストラではあるが)世代という点では、ほぼ仲間に入れてもらってよいであろう。
「全共闘世代」とも言われ、今となっては、誰もが革命の闘士であったような顔をし、したり顔で最近の若者の政治的無関心や個人主義や馬鹿さ加減を憂いて見せるが、実際「自己否定」し、全共闘運動に傾倒していたのは、たぶん10%程度であったろう。
ファーマータナカも、自慢ではあるが、
   ♪♪♪ 学生集会へも時々出かけたーり、就職が決まって髪を切ったり(「いちご白書」をもう一度)♪♪♪ したり、
金魚の糞みたいにデモに参加して、催涙弾に目を腫らし、機動隊に嫌と言う程足を踏んづけられた事はあるが、如何せん現実には、大学が封鎖されていることをいいことに、、パチンコによってかろうじて本にありつき(当時は学生街のパチンコ屋にはちょっとした本屋以上に景品のひとつとして本があったのだ)、学生結婚を具現化した挙句、性差による権力闘争には早々と惨敗しといったところが、関の山であった。
そうこうしてるうちに、仲間は、銀行や商社や放送や石油会社やゼネコンやあのY新聞等に就職が決まり(これは転校程度。言ってる事とやってる事が全然違う。確固たる思想主義を持っていた場合は転向という)、良くも悪しくもその後の日本の屋台骨(米帝日帝の手先とも言う)となっていく。
又、北海道で牧場をやっている時、隣の標津町で、いわゆる日大全共闘の生き残りの数家族が、「興農塾」というコミューンみたいなものを作って、酪農をやっていたところへ見学にいったこともあるが、そこにはある種暗鬱たる敗北感が漂っていたと思う。

で、帰農である。
進学、就職、昇進、結婚と常に競争社会に生きてきたこの厄介な世代が、農に帰るという。
自己主張が強く、人の言う事を聴かない、意見を変えない、常に自分が正しいと思っている、何でも競争に持ち込み、無理くりにでも、勝ちに行きたがる、独自の物差しを持っているふうに言うが、権威、権力、ブランドに滅法弱く、個性個性と言いながら群れないと落ち着けない、いつまでも若いと思っている、強がる割には意外と脆いという団塊の世代の気質(=ファーマータナカの自己性格分析)を前提にすれば、帰農ではなく、いわば逃農である大先輩ファーマータナカの個人的見解としては、自戒を込めて、「はまりすぎないで」と忠告しておこう。
環境保護、森林保全、地方の再生、食の安全、食の自給、有機、無農薬・・・・・・。
彼(我)等にとってターゲットとしては、格好だと思うかもしれないし、又出番がやってきたと思うかもしれない。
しかし、当然農も森も田舎もとても一筋縄ではいかない。
土に返るものとしての謙虚さを持って、ささやかな、しかし確かな二毛作にしたいものだ。(2003.11.02 No.21)

栽培部

再会 農業に病害虫はつきものだ。
だが、その病原菌がまさか・・・・だったとは!!
こんなところで又会うなんて、神様も悪戯好きだ。

ファーマータナカは酒に溺れていた。情報収集と称してのべつ幕なし酒場や酒売場を徘徊していた。
貴女に初めて会ったのは、私にとっては似つかわしくない、確か高級ホテルでのワインの試飲会という、お洒落で、運命的な出会いであった。

酒に限らず、嗜好というものは段々としかも末期には、過激にエスカレートしていくものだ。
例えばペペロンチーロならニンニクと唐辛子の中にパスタが少量からまっていればいいという具合に。
又例えば性愛なら鞭と縄と女王様という具合に(ちょっと違う?)。
お酒もまさしくその通りである。
ウオッカなら、96°か、唐辛子入りに行き着き、ウィスキーならヨード香バリバリのアイラに行き着き、ブランデーなら荒削りのグラッパに行き着き、リキュールならスターアニス(八角)入りのアニス酒に行き着く。
ワインならもちろん甘くてはいけないし、えぐいタンニン臭が際立っていなけらばならないはずだった。

その会場に立つ貴女の、甘美だが上品なアロマ、気品を重ねたブーケ、高貴なのにセクシーボディ(白いドレスだったが)がファーマータナカをほんの一時だが、おどろおどろしい酒のタルタロス(奈落)の底から引き戻してくれたのだった。
依存や刺激ではなく、忘れかけていた憧れやときめきを運んでくれた貴女。

貴女の名前はソーテルヌ。
たが所詮身分が違う。
下層階級のファーマータナカにとっては、偶然の成せる技であり、ましてや彼女を又口でころがしたりはおろか、二度と貴女と会うことさえないと思っていた・・・。

それから随分と時は流れ、日々の忙しさに明け暮れていた。

いきあたりばったりで始めた百姓という仕事。
自給ではなく、人が農を業とした時から始まった様々な矛盾。
例えば、温度を獲るために、過湿というとんでもないお荷物をかかえてしまった。
密閉したハウスの中は、夜間湿度はほとんど100%になってしまうのだ。
カビの類には打って付けの環境となる。

「灰色カビ病」という病気がある。
ファーマータナカは、サラダ菜とトマトを作っているのだが、そこに敢然と立ち塞がっていたのがこの病気の元凶、そう、「ボトリチス・シネレア」という菌だ。
この菌は枯死した有機物の上でも容易に繁殖できる。
日常生活の中でも台所に放置しておいた野菜や果物に生えてくるカビの多くもこの菌と言われる。
したがって、トマトの株元でも侵されるなら、自慢の1株から数千個を収獲するという高度な技術もあっという間に水泡に帰してしまう。
収獲間際のサラダ菜の同じく株元が侵されれば、ビタミンたっぷりの緑の葉も出荷することができなくなる。

18世紀のヨーロッパ貴族社会の頃から珍重されている「貴腐ワイン」という白ワインがある。
葡萄の開花期後に降ったり晴れたりの天気が適当な間隔で繰り返された年に、収獲期の葡萄に灰色のカビがたくさんつくことがある。カビのついた葡萄は、表面のワックスが溶かされて水分の蒸散が盛んになるために、干し葡萄状態となり、果実内では酸が消費されて、糖度の高いいわゆる「貴腐葡萄」ができるのであった。
この一粒一粒を摘み取って作り出される「貴腐ワイン」がそう「ソーテルヌ」貴女だったのだ。

表と裏、善と悪、天使と悪魔、ジキルとハイド・・・.。
ああ、ソーテルヌ!! ああ、ボトリチス・シネレア!!
ファーマータナカの生存を脅かすその元凶が貴女だったとは、あまりにひどいめぐり合わせではないか。(2003.05.16 No.23)
爆発 施設栽培といえども、自然を牛耳るなんておこがましい限り。
徹底的に翻弄されるファーマータナカであった。
爆発だ。
芸術の話ではない。農業は爆発だ。
ファーマータナカはファーマータロウ・オカモトと改名しなくてはならない。

5月2日のトマトの収穫個数は、3,708個、重量は、224,330gであった。
(忙しいくせに、よく数えたり、計ったりする暇があるもんだ。)
去年の平均からすると、実に、4倍くらいの量になる。
以前にも、このコラムで書いたことがあるが、作物の開花や結実や収獲の時期は、最終的には作物自身が牛耳っており、百姓は聾桟敷におかれている。
爆発されたら、為す術はない。全てを受け入れるしかないのである。
(小生はこのことを駄犬「ひめ」から学んだ。忙しくて食事を与え忘れたことを夜中に気づいても、まるで哲学者の風貌で、文句ひとつ言わないではないか。)
もちろん小生も朝食は抜き。(実は、いつも食べさせてもらってません。)
お昼は、パートさんが休憩用にいつも持ってきてくれるおにぎりや、お惣菜や、お漬物や、バナナや餅や饅頭等(これらは実に絢爛豪華、満漢全席)を主食に、ジャンクフードをおかずにと慌ただしい食事となる。
実のところ、うちの職場は、パートさんに福利厚生してもらっている、不思議な職場なのだ。

1日は24時間という不文律があるから、どうにも間に合わないのである。
農協への出荷は午後3時までとなっており、こっぴどく叱られる。
直売所への配送を委託してあるトラック便の集配時間にも間に合わない。
ニューファーマーズファクトリー王国の王妃のイライラもピークに達する。
ニューファーマーズファクトリー王国のマーフィーの法則「全ての悪しき結果は、ファーマータナカの存在自体に起因する。」により、冷たい視線と態度、罵詈雑言の雨嵐は当然私のみに集中砲火となる。
(本当はよくやってくれてます。話をおもしろくするためにだけ書いているので、ハイ王妃。)

おまけに、決定的なのは、市場原理というやつである。

「神の見えざる手」によって、ファーマータナカの販売価格は、「自然」なレベルどころか、超「自然」なレベルにまで下落するのはどういうわけだ。
「労動が疎外」されていないのに、「剰余価値」が生まれないのはどういうわけだ。
「総需要が供給を決定」しないで、「供給」だけが一人歩きするのはどういうわけだ。
そもそも、出荷量と価格は反比例するとは、どこのどいつが決めたんだ。
アダム・スミス出て来い!マルクス出て来い!ケインズ出て来い!(経済音痴ですいません。)

F市場の市況は、2分の1となってしまった。(4分の1にならなかっただけまだかろうじて神は存在するのか?)
箱などの資材はもとより、出荷調製作業にかかわる人件費(自家労賃含む)等の経費は、当然4倍かかるのである。

こうして今年もコールデン・ウィークとやらは、極度の疲労困憊と小生への謂(いわ)れのない憎悪を内包しつつ、暗雲立ち込めるブラック・ウィークとして、情け容赦なく過ぎていくのである。(2002.05.05 No.11)