羅典文法

GRAMMATICA LATINA

第 II 部


サン・スルピス会諸師著
サン・スルピス大神学校訳


発行所 光明社


[三上記:これは昭和26年(1951年)4月3日福岡のサン・スルピス大神学校から出された初学者のためのラテン語文法書です。私は院生の時にしばらくこの大神学校の図書館で図書の整理のアルバイトをしていたことがあり、この書物の代表者のツルデル神父様にもお会いしたことがあって、その時のことを懐かしく思い出します。以下に少しずつ、その内容を紹介していきたいと思いますが、適宜、省略・加筆した箇所があります。]
第二部 文 章 論

p.84

I -- 一致の文章論自 152 番 至 195 番

II -- 支配の文章論自 196 番 至 438 番

I -- 一致の文章論

第一編 -- 語の一致

一致する語には名詞、形容詞、代名詞および形容詞がある。

第一章 名詞の一致

152. 名詞は同格語または属辞たり得る。

A) 同格語として用いられる名詞 B) 属辞として用いられる名詞
1. 格の一致 -- 名詞は常に関係する語と
フィリッポ王の懇願に応じて。
:Rogatu Philippi "regis".
2. 性の一致 -- 性においても一致すること
があり得る。
:Quercus(f), "regina" silvae.
森の王なる樫の木。
N.B. -- "何々の町"という地理名の
前に来る"の"は"何々と呼ばれる"と
いう表現法によって置き換えられるものであっ
て、制限を示すものでなく、同格語としてと
られるべきである。
:Urbs "Roma" est pulchra.
ローマの町はきれいである。
.
.
.
.
.
同格語の規則に準ずる。
:Cicero creatus est "consul".
チチェロは執政官に任命された。
Habetur "vir bonus".
善良な人間と見なされる。
Me elegerunt "ducem".
彼らは私を指導者として選んだ。
N.B. -- 属辞は次のような動詞の後において
主語に関係する。
動詞Esse の後;若干の自動詞の後:
Manere, のまま残る;nasci, として生まれ
る;mori, として死ぬ
。等;受動詞の後:
nominari, と称せられる;videri, と思われ
る;haberi, と見なされる。

属辞は次のような動詞(能動形のもの)におい
ては補語に関係する:facere, なす;redde-
re, とする;nominare, 称する;creare,
とする;existimare, と評価する;habere,
ducere, @ と思う
等。

@ 属辞に加えられる言葉”...として, ...かのごとく,...の資格で”は、ラテン語では訳されない。

第二章 形容詞の一致

153. 形容詞は修飾語として、あるいは属辞として、あるいは名詞として用いられ得る。

154. 修飾語として用いられる形容詞は単独の語あるいは数個の語に関係することがあり得る。

1. 単 独 の 語

この場合は、その語と性、数、格において一致
する@(そして一般にその語の前におかれる)
:Folia "celsae" arboris.
大木の葉。
2. 数 個 の 語

この場合には形容詞に最も近い語と一致する
:Maximus" ardor studiumque";
ardor studiumque "maximum".

偉大なる熱意と熱誠。
@ ラテン語の修飾語は固有名詞を直接に修飾しない、かかる場合には適当な普通名詞を同格
語として挿入し修飾語はかれと一致する。
例:Cato, "vir" doctus..学者なるカトー。Scipio, "dux" fortis.勇将シピオ。
ただし限定語または異名は固有名詞に直接に合わせられ得る。
:"Ipse" Hannibal.ハンニバルその人。-- Scipio "Africanus".アフリカのシピオ。

N.B. -- いくつかの形容詞(imus, extremus, reliquus)はの本語の名詞に訳される。 例:"imus " mons, 山の麓。"extremi" digiti,指の尖。

p. 85.

155. 属辞として用いられる形容詞は単独の語または数個の語に関係し得る。

A) 単 独 の 語
この語が主格にある場合
主格以外の格にある場合
属辞形容詞は主格におかれ、関係する語と
同性、同数におかれる。
:Aristides mortuus est "pauper".
アリスティデスは貧しくして死んだ。
注意 -- 不定法または命題に関係する属辞形容
詞は中性、単数におかれる。
:"Turpe" est mentiri.
虚言を吐くことは恥ずべきことである。
特殊摘要 -- 1)主語が男性または女性であ
っても、"事物"を示す名詞の形容詞または属
辞は、省略されている negotium 等の語と
一致して時として中性に置かれる
:Turpitudo est "peius" quam
dolor.

恥は苦痛よりも悪いものである。
2)複数、属格を伴う milia と共に、属辞
(形容詞または分詞)は milia かあるいは補語と
性において一致し得る。
:Duo milia "militum" "capta"
(または"capti")sunt.
二千人の兵士が捕らえられた。
(あるいはこの語が省略されている場合)属辞形
容詞は対格におかれ、関係する語(省略され
ている場合でも)と、同性、同数におかれる。
:"Eorum" interest esse "pios".
情深くあることは、彼らにとって重要である。
注意 -- 1)"重要である","必要であ
る", "許されている", "有益である"等の
若干の非人称的発表法は不定法命題を要求し
得る。この場合、不定法命題の主語が非限定
のもの(例えば aliquem 等のような)であれ
ば省略される。しかし一致はこれとなされる:Non
licet("aliquem" 省略)esse "otiosum".
何もしないでいることは許されないことである。
2)もし licet が不定法命題を伴う代わり
に、与格および単なる不定法と共に構成される
場合には、属辞はむしろこの与格におかれた語
と一致する:
"Nulli" licet esse "otioso".
何もしないでいることは誰にも許されない
ことである。

B. 数 個 の 語
生物を表わす語

1. これらの語が同性であれば、属辞はその
性の複数におかれる。
:Pater et filius sunt "boni".
父と子は善良である。
2. これらの語が異なる性にあれば、属辞は優
位の性@の複数におかれる。
:Filius et filia sunt "boni".
息子と娘父とは善良である。
2. 無生物を表わす語

1. これらの語が同性であれば、属辞はその
性の複数におかれる。
:Ira et avaritia sunt "funestae".
憤怒と貪欲とは有害なものである。
2. これらの語が異なる性にあれば、属辞は中
性複数におかれる。
:Virtus et vitium sunt "contraria".
善徳と悪徳とは相反するものである。
@ 男性は女性に対して優位にあり、女性は中性に対して優位にある。

p. 86

156. 名詞として用いられる形容詞

1. 男性におかれた形容詞は人物を示し得る。 2. 中性におかれた形容詞は事物を示し得る・
1. -- 複数におかれた形容詞
a) ある人物のグループの全体を示すため
の形容詞は単独に用いられる。
:Nobiles,貴族(すべての)。
Docti,学者(すべての)。
b) いくらかの人物を示す場合には、形容詞
は名詞を伴わねばならぬ。
:"Viri" docti.学者たち(いくらかの)。
"Homines" Romani.
ローマ人たち(いくらかの)。
2. -- 単数におかれた形容詞
a) ある形容詞はある一つのグループの全
体を示し得る:doctus,学者(一般の)。
b) 個人を示すためには形容詞は名詞(または
代名詞を伴わねばならぬ。
:"Vir" doctus.一人の学者。
:"Nemo" doctus.いかなる学者
も...ない。
c) 若干の形容詞は真の名詞になっている。
:Sapiens,智者(一般的あるいは個人的)。
:amicus,友人。
:vicinus,隣人。
1. -- 複数におかれた形容詞
a) 主格および対格におかれた形容詞は単独
に用いられる。
b) 属格、与格および奪格におかれた形容詞
は男性の語尾との混同を避けるために、一般に
res を伴い、必要な格におかれる。@
:Amor "utilium rerum" est
melior amore "iucundarum rerum".

有益物に対する愛好心は、心地よいもの
に対する愛好心より勝れている。
2. -- 単数におかれた形容詞
a) 主格あるいは対格にあって単独の中性形容
詞は特に抽象名詞として用いられる。
例:"Utile" non est semper iucun-
dum.
有益なるものが心地よきものであると
は限らない。
b) 属格,与格および奪格形容詞は一般に
res を伴い、必要なる格におかれる。
:Pulchrae "rei".麗しいものの。
一般注意 -- I -- 真の名詞となっている形容詞は普通の名詞同様、形容詞によって修飾され
得る:"Summum" bonum, 最高善;"asperum" ridiculum, 辛辣な戯談;"fidelis"
amicus, 忠信なる友;facta "illustria" et "gloriosa", 栄光輝く行為。

II -- ただし、名詞として使われる形容詞Aは一般には他の形容詞によって修飾され得ない。ゆえ
に修飾する言葉を副詞にする:"Vere" sapientes, 真に智者 -- あるいは接続詞 et によって二
つの形容詞を結合させ得る:vir doctus "et" modestus, 慎み深き学者、multa "et"
praeclara
(または multa praeclara,注意III 参照)
III -- 例外として"多少"を示す不定形容詞:aliquot, quidam, pauci, multi, omnes
は名詞的形容詞を限定し得る:"Omnia" praeclara, 輝かしきすべての行為。

@ 例外としてn. 78, A 参照。

A 名詞として使われた形容詞。

p. 87

形容詞に関する補足
再帰所有形容詞 "suus"

157. 彼のは二つの方法で訳される。すなわち形容詞 suus, sua, suum か、あるいは eius, eorum, earum かによってである。

158. 所有者と所有物とが同一命題中にあるとき。

A) suus を用いる場合
1. 所有者が文法上の主語である時(所有
者と被所有物との間に前置詞がおかれている
時でも)。
:"Herus" vocavit servos "suos".
主人がその奴隷たちを呼んだ。
"Deus" hominem tuetur propter
"suam bonitatem".

天主はその全善のゆえに人間を保護し
給う。
2. 所有者が論理上の主語である時
論理上の主語とは主格におかれず、却って次
のような動詞によって示された動作の主体とな
る語を指す。すなわち次の品詞によって:
1) 不定法:"Sapientis" est "suis"
"stare judiciis.
自己の意見を固持す
ることは賢者の特権である。
2) 分詞:Legationes "tradentes ci-
vitates suas" judiciis."

彼は自分たちの町々を引き渡している使節たちに
聞いた。
3) 動詞的中性名詞または動詞的形容詞:Inco-
lis "rerum suarum" "ferendarum"
ius dedit.彼は住民たちに自分たちの財産を
持って行く許可を与えた。。
4) 動詞より転化した名詞または形容詞:
Bruti "adventus" ad "legiones
suas".
おのが軍団の許へのブルツスの到着。
3. 所有者が省略されている時:"Aliquem"
(省略) contentum esse "rebus suis",
今持っているものに満足することは、多く
の財産を所有することである。
.
.
4. 所有者が補語であって、前置詞によっ
て分離されておらず、また意味の曖昧をきた
さない時。
:Eis" "suus res" restitui.
私は彼らに彼らのものを返した。
(この場合に suus はできるだけ所有者の
近くにおかれる。)
さらに次のような場合に
1) 前置詞の中間におかれている場合でも、
ある者の独自の所有(特にその所有者を強調す
る時)を示す場合:
Sopitos "custodes" in "cubilibus
suis" obtruncat.
彼は眠っている番人を
彼ら自身の床の中で殺す。
2) 所有者が前置詞の cum に伴われている時:
"Navem" "cum" "remigibus suis"
ceperunt.
彼らはその船をその漕ぎ手と共に
分捕った。
3) Suus quisque の前にある時:
Eos in "suus quemque civitates"
dimisit.
彼は彼らを各々自分らの町に派遣
した。
4) Sui が"自分のもの"を示す名詞とし
て用いられている場合:
Hoc fuit luctuosum "suis".
これは自分の家族にとって嘆かわしいこと
であった。
5) 感情を示す五つの動詞(n. 131, 3)の中
のある一つと用いられている場合:
"Hos milites" pudebat "suae igna-
viae".
この兵士たちは自分の卑怯を恥じてい
た。
(この場合所有者は前置詞によって所有
物から分離されていない。しかも論理的
主語である。

p. 88

重要なる注意 -- 日本語においては所有は必ずしも所有形容詞、"彼の、その..."等によって示されていない。例えば、"この人の野望は彼を滅ぼすであろう"のような命題において、所有形容詞は見出されなくも、事実上においては所有物(野望)と人称代名詞(彼)によって表わされた所有者(この人)が見出されるのである。
規則 -- この種の句においては、所有者が同一命題においてある補語たる代名詞によって表わされている度毎に suus (彼固有のものを意味する)によって所有を示されねばならぬ。
:"Sua" hunc "hominem" perdet ambitio; (直訳:この人を彼の野望が滅ぼした)。
Multitudo "sua" "Romanis" auxit animum;
(直訳:ローマ人たちに彼らの数の多いことが勇気を増大した)。
ローマ人たちの数はその勇気を増した。

B) eius, eorum, earum を用いる場合
1. 所有者が示されていないか、あるいは同一
命題中に見出されない時。
:"Eius" indoles est optima.
彼の性質は優れている。
[この場合には所有者は示されていない]
Pater amat liberos suos --at
"eorum" vitia odit.

父は子どもたちを愛するが -- 彼らの欠点
を憎む。
[この場合所有者(子どもたち)は同一命題中
に見出されない。]

注意

所有者と所有物とが主語であり、しかもこ
の二つの主語が接続詞 et, vel, neque,
nec, sed 等によって結合されている時には、
所有は常に eius, eorum, earum で表わ
される。
例:Paulus "eiusque" frater vene-
runt.

パウロとその兄弟とが来た。
聞いた。
[すなわち、パウロが来た、そして彼の兄弟が
来た。ゆえにこの二つは同位命題であり、
所有者(パウロ)は所有物と同一命題中
に見出されない。]
2. 所有者が補語にあって前置詞によって
所有物より分離されている時。
:"Deum" agnoscis "ex" operibus
"eius".人は天主をその御業によって
認識する。
Deus "hominem" tuetur "prop-
ter" "eius" miseriam.
天主は人間をその惨めさのゆえに保護
する
"Ciceronem" laudat "pro" me-
rito "eius".彼はチチェロを彼の功
績のゆえに賞賛する。

注意

所有者と所有物とが補語であって、しかも
この二つの補語が接続詞 et, vel, neque,
sed 等のいずれかをもって結合されている
時には所有は常に eius, eorum で表わされる。
:Vidi "Paulum" "eiusque"
"fratrum".
私はパウロとその兄弟とを見た。
[すなわち私はパウロを見た、そして私は彼の
兄弟を見た、ゆえにこの二つは同位命題で
あり、所有者(パウロ)は所有物とは同
一命題中には見出されない。]

p. 89

159. 二つの命題において -- 所有者が主文の主語であり、所有物が附属文の中におかれている時には所有はあるいは suus...によりあるいは eius...で表わされる。

A)所有が suus... で表わされる場合 B)所有が eius... で表わされる場合
附属文が所有者の言葉、思想あるいは意向
を示す場合。例えば:
1. 次の補足命題において
1) 不定法命題において:"Rex" iussit--
"servos suos" vocari.王は自分の奴隷
たちを呼ぶように命じた。
2) 間接疑問文において:"Orator per-
vestigat - quid "sui cives" cogitent.
演説家は自分の市民たちが何を考えているかを
尋ねる。
3) Ut, ne, quin, quominus によって
引き出される補足命題において:"Mater"
orat - ut "filio suo" ignoscas.
母は自分の子を汝が許すように汝に願って
いる。
4) 間接説話のすべての命題中において:
Tibi gratias agit - quod sibi "liberos
suos" reddideris.
彼は汝が彼の子どもたちを自分に返してくれた
ことを感謝している。
2. Ut, ne, qui(=ut ille)の目的
(状況)命題において:"Dux legatum
misit - qui exercitum reduceret "su-
um".将軍は自分の軍隊を誘導するため使
節を派遣した。
さらに次の場合:

1) 奪格別句 -- a) 同一人物が二つの動作を
なす時:"Galba" - missis armis ad
"exercitum suum" - constituit.
ガルバは自分の軍隊の方に武器を送って
から決定した。
b) 奪格別句が間接説話の部分をなす時。
(上記4 参照)
2) 論理的一致 - 例:"Regi" persuasum
est (=rex credit) - "hostes suos"
aggressuros esse.王は彼の敵らが攻撃
するだろうと確信した。
附属文が所有者の言葉、思想あるいは意向を示
さない場合。例えば:
2. 次のごとき状況を示す命題において
1) 時間:"Dux" fugit - "cum" "exer-
citus eius" deletus esset.将軍はその軍
隊が敗北させられた時に逃げた。
2) 理由:"Dux" fugit - "quia" "exer-
citus eius" deletus erat.将軍はその軍隊が
敗北したので逃げた。
3) 結果:"Dux" sic egit - "ut" "ex-
ercitus eius" deleretur.将軍はその軍隊が
敗北させられるような行動をとった。
4) 条件:"Dux" gaudebit - "si" "ex-
ercitus eius" victoriam retulerit.
軍はその軍隊が勝利を得るならば喜ぶであろ
う。
5) 譲歩:"Dux" gavisus est - "quan-
quam" "exercitus eius" victoriam non
retulerat.将軍はその軍隊が勝利を得なか
ったにもかかわらず、喜んだ。
6) 比較:"Dux" est fortior - "quam"
"legatus eius". 将軍はその使節よりも勇
敢である。
[ただし、dux est fortior legato "suo"
言う。何となれば単独命題にすぎないから。]
3. - 関係命題において
Ultus est iniurias - "quae" illatae
erant "matri eius".
彼はその母になされた不義を復讐した。
[ただし、ultus est iniurias matri
"suae" illatas.
と言い得る。何とな
れば単独命題にすぎないから。]
.
.
.
.
.

p. 90

第三章 代名詞の一致

160. 代名詞は単独の語あるいは数個の語と一致する。

1 -- 単独の語との一致 2 -- 数個の語との一致
代名詞はその代わりをしている名詞と同性、
同数、同人称にされる。ただしその役目によっ
て要求された格にしておく。
:Deus videt "virum" bonum
"ei" favet.天主は善人を眺め、これを
嘉し給う。
[代名詞 ei はこれが代わりをしている語
virum が男性単数にあるがゆえに、男性単
数におかれている。しかしこれが与格におかれ
ているのは、それが favet (自動詞)
の補語であるからである。]
"Deus", "cuius" Providentiam
miramur, nos amat.
われわれがその摂理を讃美している天主はわれわれを
愛し給う。
[関係代名詞 cuius はその先行詞 Deus
が男性単数であるので、男性単数におか
れている。しかしこれが属格におかれている
のは、これが Providentiam の限定補語
であるからである。]
A) 生物の名詞の時。
1.- もしこれらの名詞が同性であれば代名詞
はその性の複数にする。
Pater et filius "qui" sunt boni.
善良なる父と子。
2.- もしこれらの名詞が異なる性であれば
代名詞は複数の優位の性にする:
Filius et filia "qui" sunt boni.
善良なる息子と娘。
B) 無生物の名詞の時。
1.- もしこれらの名詞が同性にあるならば、
だいめいしは、その性の複数にする。
Campus et mons "qui" sunt amoeni.
心地よき平原と山。
2.- もしこのらの名声が異なれる性にあるなら
ば、代名詞は複数、中性にする。
Virtus et vitium "quae" sunt contraria.
反対する善徳と悪徳。
.
.
161. 特殊摘要 -- 属辞との一致 -- 1) 属辞が名詞であり、関係命題が句の意味に不可欠
なものでないならば、関係代名詞はその先行詞とよりもむしろ名詞たる属辞と同性にする。
:Animal hoc, plenum rationis, "quem" vocamus "hominem", creatum
est a Deo. 理性に充ちあふれた動物 -- これをわれわれは人間と呼んでいる -- は天主より創造された。
2) もし主語が中性の指示代名詞であり、属辞が名詞であるならば指示代名詞は属辞とその性
において一致せねばならぬ。
:"Haec" est mea "culpa". (hoc est ではない)これは私の過失である。
この規則は"ところの人が", "ところのものが"(フランス語の ce qui, ce que)の関係代名詞にも適応
される。
:"Quae" "invidia" vocatur.嫉妬と呼ばれるところのもの。

p. 91

代名詞に関する補足

162. 第三人称の代名詞は、あるいは再帰代名詞 sui, sibi, se によって訳されるか、あるいは代名詞 is,
ea, id
の種々の格で表わされる。

163. 第三人称の代名詞は次のような場合 sui, sibi, se で表わされる:

A) 同一命題において
(主文または附属文)
B) 数個の命題において  (附属文
の代名詞は主文の主語と同じものを示す)
1.- 代名詞がその命題の文法上の主語を示
している時:
"Homo" non "sibi" soli natus est.
人間は己れ独りのために生まれたのではない。
2.- 代名詞が論理上の主語、すなわち主格にお
かれずして、次の如き動詞に示された行為の
主体であることを示している時:
1) 不定法:"Sapientis" non est de
"se" praedicare.
自分自身を賞賛することは智者のすることで
はない。
2) 分詞:Ignovit "hostibus" traden-
tibus "se".彼は己れを渡す敵に対して赦
した。
3) 動詞的中性名詞または動詞的形容詞:
"Hostibus" non reliquit facultatem
"sui" colligendi.
彼は敵たちに相集まる機会を与えなかった。
3. 代名詞が省略された主語を示す時:
Deforme est (aliquem省略) de "se"
praedicare.
自分自身を賞賛することは不作法である。
4. Per se, inter se および(時として)
propter se 等の表現法において:
"Civibus" sunt multa "inter se"
communia.

市民たちはお互いに共同の多くの財産をもって
いる。
[この最後の例における se の用法は論理的
一致によってでも説明され得る。
"cives" habent multa inter se communia.]
代名詞を含む附属文が主文の主語の言葉,
思想および意向を示す時。例えば:
1. 次のような補足命題において
1) 不定法命題:"Vulpes" negavit -
"se" esse nocentem.狐は自分が有罪者
であることを否定した。
2) 間接疑問文:"Dux" petivit - cur
ad "se" non venirent.将軍はなぜ彼ら
が自分の許へ来ないのかと尋ねた。
3) Ut, ne, quin, quominus に引き出さ
れる補足命題において:"Mater" te orat -
ut "sibi" ignoscas.母は汝が自分を許す
ように願っている。
2. 間接話法のすべての命題において:
Tibi gratias agit - quod me "sibi"
reddideris.
彼は汝が私を彼に戻してくれたことを感謝
している。
3. Ut, ne, qui に引き出される目的(状
況)命題において:
"Dux" agit - ne "se" hostes oppri-
mant.将軍は敵共が自分を抑圧しないように
行動する。
4. さらに次のような場合
1) 奪格別句 -- (89ページ参照)。
2) 論理的一致 --例:"Ei" spes erat
(= sperabat)--"se" victurum esse
hostes.
彼は自分が敵に勝つことを望んでいた。
.
.

p. 92

164. 第三人称の代名詞は次のような場合 is, ea, id で表わされる;

A) 単独命題において(独立命題) B) 数個の命題において  (代名詞
かその属する命題の主格を示さない時)
代名詞がその命題の文法上の主語をも、論
理上の主語と同じものを示さない時:
:Amici ad "eum" venerunt.
友人たちは彼の許にやって来た。
[ここにおいて代名詞 eum が用いられてい
るのは、代名詞が主語たる amici に係ら
ず、かえってその命題中に示されていない他
の語にかかっているからである。
B)数個の同位命題において
代名詞が同一命題の主語を示さない時。
:Deus amabilis est "eumque"
amo.
天主は愛されるべき御方であり、彼を
私は愛する。
[ここにおいて代名詞 eum が用いられてい
るのは、それが属する命題の主語を示さな
いからである。]
1. 次のような補足命題において
1.- 代名詞があり主文の主語を示さない補
語命題において。
:Credo -- "eum" venisse.
彼が来たと私は信じている。
2.- 状況命題において(目的命題を除く)。
:Paulus est tam pius - ut omnes
"eum" revereantur.
パウロはすべての者が彼を尊敬しているほどに
敬虔深い。
3.- 関係命題において
:Ultus est iniurias - quae "ei"
illatae erant.彼は彼になされた不義の復
讐をなした。
[ただし、ultus est iniurias sibi illa-
tas とも言い得る。何となればそれは単独
命題にすぎないからである。]
.
.

再帰代名詞に関する注意

165. 所有形容詞が直接話法中で"私の" "われわれの" となるような場合間接説話においては suus, sua, suum によって訳される。同じく直接説話の"私" "われわれ" は sui, sibi, se で表わされる。
例えば、"狐は彼が有罪者ではないと言った" という文章を直接説話にすれば、"狐は言った - '私は有罪者ではない’"となるゆえに "se" を用いる。

166. Suus および sui, sibi, se はある時は主文の、ある時は附属文の主語を示し得る。どの主語を再帰形容詞あるいは代名詞が示しているかは、主文の前後関係によって調べねばならない。
:Resopondit Ariovistus neminem secum sine sua pernicie contendisse.
アリオヴィスツスは誰も自己の損害以外のためにと共に戦わなかったものはいないと答えた。

p.93

第四章 動詞の一致

167. 動詞は単独の主語、あるいは数個の主語と一致し得る。

A) 単独の主語 B) 数個の主語
1. 数における一致 -- 動詞は一般にその
主語と同数におかれる。
:Pueri "ludunt".子らは遊ぶ。
2. 人称における一致 -- 動詞は常にその
主語と同人称におかれる。
:Tu "rides"; ego vero "fleo".
汝は笑い、われは泣く。
3. 性における一致 -- 受動詞および形式受
動詞の複合時称においては、属辞敵分詞は主語
と同性にされる。
:Urbs "capta" est.都市は占領さ
れた。

特殊摘要

1) 同格名詞との一致 -- 主語たる都市の固
有名詞と一致する代わりに一般に動詞は urbs,
oppidum, civitas
等の語と一致する。
:Corioli, "oppidum", "captum
est".

コリオリの要塞が占領された。
2) 属辞との一致 -- 動詞が主語よりも属辞
の近くに位置している時には、一般に名詞た
る属辞と一致する。
: Gens illa "Veneti appellati
sunt".
あの種族はヴェネチア人と
呼ばれている。
3) 意義上の一致 -- 主語が集合名詞または
集合的意義をもつ代名詞 pars, multitu-
do,..,uterque, unusquisque...
である
時にはそれに関係する動詞は、他の命題中
にある時に限り複数におかれる。
: Cum premeretur "multitudo",
ad unum aliquem "confugiebant.

群衆は圧迫されたので、ある一人の
者の許に逃げた。
.
.
.
.

1. 数における一致 -- 動詞は一般に複数
におかれる。
: "Petrus" et "Paulus" "ludunt".
ペトロとパウロが遊んでいる。
2. 人称における一致 -- a) もし主語が同
一人称にあるならば動詞もその人称におかれる。
:Paulus et frater eius "legunt".
パウロとその兄弟とが読んでいる。
b) もし主語が異なる人称にある時は動詞は
複数の優位の人称におかれる。(一人称は二人
称より優位であり、二人称は三人称より優位
である)。
: "Tu" et "Tullia", "valetis".
汝とトゥリアとは健康である。

特殊摘要

隣接語との一致 -- 次のごとき場合、数個の
主語を有する動詞は一般に最も近いものと一
致する。
1) 動詞がすべての主語の前に位置している時。
: Te "dilligit" pater et mater.
汝の父と母とは汝を愛している。
2) 一般に主語が無生物の名詞である時、また
はあるものが生物で他のものが無生物である
時。
: Impendimenta et "equitatus"
"secutus est".荷物と騎兵隊とが
それに従った。
3) 選択接続詞 aut, vel, ve, sive 等が
主語の間にある時。
: Cicero "aut" Seneca "dicebat."
チチェロかセネカが言っていた。
4) 各主語が et...et, nec...nec 等の
語によって先立たれている時。
: "Neque" M. Crassus, "neque"
Cn. Pompeius ad dicendum "reli-
quit".
クラッススもポンペイウスも
私に言うべきことを残さなかった。

p. 94

第二編 -- 命題の一致

第一章 命題一般

168. 命題には肯定命題@, 否定命題,疑問命題,間投命題がある。

1。 否定命題

169. 否定詞は否定副詞(p. 67)と不定形容代名詞(p. 27)である。

1. 単純否定

A) 否定が命題全体にかかる時 B) 否定が一つの語にのみかかる時
命題の冒頭にあるいは動詞の前に non をおく
:Puer diligens tempus "non
perdit".

勤勉なる子どもは時間を浪費しない。
.
普通その語の前に non をおく。
:Cicero creatus est "consul".
:Puer "non diligens" tempus
perdit.

勤勉ならざる子どもは時間を浪費する。
注意 -- 1) 否定が enim, vero, autem, tamen 等の語に伴われる時にはしばしば non
の代わりに nec が使用される。
2) Haud は形容詞および副詞の前にのみ使用される。ただし scio の前には使用する
haud scio.
私は知らない。
3) Nihil, 少しも...ない, minus, 余り...ないは否定副詞として使用される。

1. 二重否定(同一命題における)

A) 一般には打消し合う B) 例外的には更に強化される
二重否定は強化された肯定@の意味をもつ
:"Nemo non" diligit hunc puerum.
誰もがこの子どもを愛する。
(彼を愛しないものは誰もいない。)
.
.
第一の否定詞 non, nemo, nunquam,
等が, neque...neque; nec...nec, ne...
quidem に伴われている時:
:"Nemo" unquam, "neque"
poeta, "neque" orator fuit.
詩人も、演説家も誰もいなかった。
@ 強化された肯定には次のごときものがある。
Nemo non, --すべての者;non nemo,-- ある人々;Nihil non, --すべての(もの);
non nihil,--あるもの;Nullus non,--各々の;non nullus,--ある人々;
Nunquam non,--常に;non nunquam,--時々;Nusquam non,--到る所;
non nusquam,--どこかに、等々。

 @肯定命題に関しては特記すべき事項はない。

p. 95

2。 疑問命題

170. 単純直接疑問は疑問詞および疑問小辞によって構成される。

A) 疑問詞 B) 疑問小辞
1。この語はもし不変化であるならば、文
の冒頭におかれる;答えの語は変化すべき語
であれば、その役目によって要求される格に
おかれる。
: "Quomodo" huc intrasti?
どうして汝はここへ入って来たのか?
"Ubi" habitat? -- "Lugduni".
彼はどこに住んでいるか? --リオンに。
2。この語はもし変化すべきものであれば、
その役目によって要求される格におかれる;
答えの語も同様、その役目によって要求され
る格におかれる。
:"Quis" venit? -- "Paulus".
誰が来たか? -- パウロです。
"Quem" misisti? -- "Paulum".
汝は誰を派遣したのか? -- パウロです。
"Cuius" est hic liber? -- "Meus".
この本は誰のか? -- 私のものです。
"Quem" pudet culpae suae? --
"Me".
誰が自分の過失を恥じるか?-- 私だ。
1。Ne? Aは答が肯定なるか否定なるかを
質問者が予期し得ない場合に用いられる;しか
してこれは疑問とされる語の後に結合される
(この合成語は冒頭におかれる)。
:"Aegrotatne" pater tuus?
君の父は病気ですか?
:"Paterne" tuus aegrotat?
病気しているのは君の父ですか?
2。Nonne は肯定的答を予期してい
る場合に用いられる。
:"Nonne" Deus est iustus?
天主は正義でないのか?B
3。Num? は否定的な答を予期している
場合に用いられる。
:"Num" Deus potest nos fallere?
天主はわれわれを欺かれることがあり得る か?
.
.
.
.
.
171. 答えの方法 -- 疑問小辞を用いてなされた質問に対しては、二つの答えの方法がある。
1) 然りは ita, etiam で、否は non ita, minime である。
2) しかし疑問の語を繰り返して答えた方がよい。
: "Aegrotatne" pater tuus? - 然り,aegrotat,否, non aegrotat.
"Tuusne" pater aegrotat? - 然り,meus, 否, non meus.

@ ラテン語においては単なる言葉の抑揚または疑問符によってのみ疑問が示されることがある。特にそれが驚きあるいは憤怒を示す時にはそうである。
: Haec credis!汝はこれを信ずる?

A 時としてne num または nonne の代わりに用いられる。

B 日本語の疑問が否定を含む時は nonne を用いるべきである。

p. 96

172. 二重直接疑問は普通二重疑問か釈明二重疑問かである。

A) 普通二重疑問 B) 釈明二重疑問
1。疑問の第一部には utrum? -ne?
を用いる。
2。第二部において、”或は”は an,”或は
...なか”は annon によって訳される。
[Necne は寧ろ間接二重疑問に用いられ
る。]
: "Utrum" ea vestra, "an" no-
stra culpa est? それは汝らの過失なるか或は我々の過
失か?
"Dormisne" "annon"?
眠っているのか、眠っていないのか?
注意 -- 第一部における utrum 或は -ne
は時として省略される。
Hoc dixisti "annon"?
汝はこれを言ったかどうか?
.
1。疑問の第一部は一般的に, uter の適
当な格を用い、文の冒頭におく。
2。説明たる二重疑問において、説明の第一
語の後に-ne を附加し、第二語の前には an
をおく。説明の二つの語は同様、その役目に
従って要求される格におかれる。
:"Uter" est doctior@, "tune"
"an" frater tuus?
二人の中、どちらが学者ですか、汝で
すか、汝の兄弟ですか?
"Utrius" interest, "meane"
"an" tua? どちらに大切なことか、私にか、汝にか?
"Utrum" praestat, "parerene
an imperare"?
どちらが優れているか、服従すること
か、命令することか。

@ この場合ラテン語は比較級を用いることに注意せねばならぬ(n.39 参照)。

3。 間投命題

173. 感嘆はラテン語においては、ある一つの格によりまたはある一つの命題によて表現される。

A) ある格によって。

1。対格 2。主格 3。呼格 4。与格
O fallacem spem!
おー,偽の希望!
Ecce @lupus!
あれ 狼だ!
O fortuna fili!
おー,幸運なる子よ!
Vae mihi!
われは呪われよ!
@ En または ecce 後に対格を置いてもよい:ecce lupum!

B) ある命題によって。

1。動詞は不定法 2。動詞は接続法
対格にある主語と共に,
:"Mene" incepto desistere!
われはわが計画を放棄せん!
(或は単に"me" desistere)。
主格にある主語と共に,
: "Ego" irascar tibi!
われは汝に対して憤激せんか!
(n. 195 参照)

p. 97

第二章 -- 動 詞

1。-- 相

174. 相とは主語が動詞の行為に対して能動である、受動であるかを示すを言う。相には三種がある。すなわち:能動相, 受動相, 受動形式能動相(n.89および121参照)である。

能動相@および受動形式能動相法 受動相
能動相および受動形式能動相は動詞によって
示された行為を主語がなすことを示す
:Caesar Gallos "vicit".!
チェザルはガリア人たちを負かした。
受動相は主語が動詞によって示された行為
を他によってしかけられたことを示す。
: Gallia a Caesare "victi sunt".
ガリア人たちはチェザルから負かされた。
175. 注意 -- 1) 主語が動詞によって示された行為をなす場合でも、その行為が再び主語
に帰って来る場合にはしばしば受動相で表わされる。例えば
Lavari, 身体を洗う; Purgari, 弁解する; Dedi, 身を渡す(降参する)等。

2) 非人称的受動相 -- 不定主語の能動相はラテン語においては非人称的受動相によって訳さ
れる。(n.131, 4)。
:Tibi "favetur".人は汝を優遇する。

@ 能動相はなお、時として主語が動詞によって示された行為をなさしめることをも示す。
:Caesar pontem "fecit".チェザルは橋を架けさせた。

2。-- 時 称

176. 時称とは動詞によって示された行為が、時間の継続のいかなる部分に関係しているかを示すために動詞が要求する形である。 -- 動詞の時称と法とはラテン語では密接な関係があるので、この問題は法の部、特に直説法の部に詳述することにする。

3。-- 法

177. 法とは語る者とあるいはその言葉を引用する者との思想と動詞の行為する状態による動詞の形である。

p. 98

A) 直 説 法

178. 独立命題において直説法は事実を述べる法である。

179. 直説法における時称の意義 -- ラテン語の時称の観念は、フランス語、英語等におけるそれと同様に用いられる -- 動詞には次の三つの意義がある、すなわち、
1)現在 -- 行為が現在なされていることを示す。例:lego, 私が読む。
2)過去 -- 行為がなされたことを示す。
3)未来 -- 行為が将来なされるであろうことを示す。

180. 直説法には、一つの現在と、二つの未来と、三つの過去とがある。
1。現在 -- n. 179参照。
2。未来 -- これには単純未来と先立未来との二つがある。
a) 単純未来 -- 単に未来とも称せられ、未来において行われる事実を示す。
:legam,私は読みましょう。
b) 先立未来 -- ある未来の事実に対し、それより以前に行われる他の事実を示すために用いる。
:legero,私はすでに読んでいるだろう(彼がくるだろう時には)。
3。過去 -- 半過去、過去、大過去の三つがある。
a) 半過去 -- ある一つの過去の行為と同時に行われつつあった他の行為を示すために、あるいは過去の習慣的動作または多少長期に亘って行われた連続的動作を表わすために用いられる。
:legebam,私は読んでいた(彼が入って来た時)。
b) 過去 -- 単に過去に行われた行為を示すために用いられる。例:legi,私は読んだ。
c) 大過去 -- ある過去の事実に対し、前に行われた事実を表わすために用いられる。
:legeram,私はすでに読んでしまっていた(彼が入って来た時には)。

181. 現在は試みの現在および歴史的現在として用いられる。

1。試みの現在 2。歴史的現在
(これは行為そのものよりも努力を示す)。
:Domum "vendit."
彼は家を売ろうとしている。
(これは叙述の現在とも言われる)。
: Caesar "maturat" proficisci.
チェザルは出発せんと急いだ。

182. 半過去も同様、試みの半過去および書簡的半過去として用いられる。

試みの半過去 書簡的半過去@
:Domum "vendebat."
彼は家を売ろうとしていた。
: Coelum grave "erat" nubibus.
空には雲が厚くたれこめている。
@ ラテン人たちは過去の代わりに大過去を用いていた。何となれば書簡に
おいてはある事件は差出人にっては現在であっても、受取人にとっては既に
過ぎ去っているからである。ただし一般的経験の真理は現在におかれていた。

183. 過去は過去形現在としてまた未来として用いられる。

1。過去形現在 2。未来の代わり
この時には過去は既に成就された行為の継続
的結果を示す。
:Didici. (私は教わった)私は知っている。
この時には確実なる将来の事柄を示す。
:Perii.
僕にとって万事休す。

p. 99

B) 命令法および接続法

184. 命令法とは直接意思を示す法である。
接続法とはあるいは直接意思を、あるいは願望、疑念、仮定、可能等を示すものである。

185. 命令は次のごとく表わされる。

第一および第三人称 第二人称
接続法現在の適当な人称によって。
:"Amemus" patriam.
祖国を愛そう。
:"Exeat" proditor.
裏切者が退出せんことを。
1) 一般的には命令法現在によって。
:"Claude" fores, puer.
ボーイ、戸を閉めよ。
2) 稀には命令法未来によって(n. 114 参
照)
接続法はまた、厳格な意味における命令というよりもある許可を示すことが
あり得る:exeat,出てもよろしい、出ることができる。

186. 禁止は次のごとく表わされる。

第一および第三人称 第二人称
ne と接続法現在とによって。
:Malos "ne imitemur."
悪人に倣うな。
:"Ne" quis "exeat."(あるいはnemo
exeat). 誰も退出しないように。
.
1) 一般的には noli (単数), nolite (複
数)と不定法現在とによって。
:Noli credere.信ずるな。
:Nolite credere.信ずるな。
2) 時としては ne と接続法過去@とによって。
:Ne credideris; ne credideritis.
187. 注意 -- 1) (命令および禁止の表現における)接続法現在の第二人称は一般的格言にお
いてのみ用いられる。
: Isto bono "utare" dum adsit; cum absit, "ne requiras."財産がある間は
それを利用し、それが失われた時には憾むなかれ。
2) 禁止において、ne quis, ne quid, ne unquam の代わりに、nemo, nihil, nunquam
使ってもよい。
3) Neve は二つの禁止を結びつける: ne luseris "neve" riseris.戯れたり、笑ったり
するな。
Neque あるいはnec (非常に稀に neve )は一つの禁止を前の命令に結びつける:lege "nec"
riseris.読め、そして笑うな。

@ 接続法過去は時として第一人称または第三人称の禁止を示し得る。

p. 100

188. 願望は接続法現在および過去によって示される。

接続法現在 接続法過去
願望が実現され得るものとして予期される
場合、utinam と共にあるいはそれな
しに用いられる。
:"Utinam" felix "vivas"!
汝が幸福に生き永らえんことを!
一つの事柄が既に実現されることを望む場
utinam と共にあるいはそれな
しに用いられる。
:"Utinam perfecerit"!
彼が完成してしまっているように!
否定は ne である:utinam "ne" veniat"彼が来ないように!

189. 遺憾(実現されない願望)は接続法半過去および大過去によって示される。

接続法半過去 接続法大過去
一つの事柄が現在に実現されないことを述
べる場合は utinam と共に用いられる。
:"Utinam viveret"!
彼が生き永らえていれば、いいのだが!
一つの事柄がかこにおいて実現されなかっ
たことを述べようとする場合には utinam と共に用いられる。
:"Utinam" melius "vixisset"!
彼がもっとよく生活しておればよかったのだが!

190. 仮定あるいは譲歩は接続法現在、過去、半過去によって示される。

接続法現在 接続法過去 接続法半過去
ある事柄の可能性を(それ
を事実として考えずに)仮
定し、現在のことである場
合。
:"Vendam" aedes.
私が家を売るとすれば。
.
ある事柄が起こったことを
(それを事実として考えず
に)仮定し、過去のことで
ある場合。
:"Vendiderim"!
aedes. 私が家を売ったとすれば。
仮定が現実と相反しているこ
と、即ち現在あること及び過去
に於てあったことを示そうとする場合。
:At "dares" hanc vim
Crasso.この権力がクラッ
ススに与えられたとすれば。
191. 注意 -- 1) 否定詞は殆ど例外なしに ne である。
:"Ne" sint in senectute vires. 老年には精力がないと仮定すれば。
2) 半過去は過去の事柄に関する場合には大過去によっても置き換えられ得る。
:"Vicissent" ; quid deinde? 彼らが勝ったとすれば、これからどうなっただ
ろうか?
3) 仮定(或は譲歩)の接続法は ut によって始まることもある。
:"Ut quaeras" ; non reperies. 汝は探すとしても見出さないだろう、汝は
探しても無駄だ。

p. 101

192. 可能は接続法現在或は過去及び半過去によって示される。

接続法現在或は過去 接続法半過去
現在又は将来に於て実現され得る行為に
関する場合。
:Quis "credat" ? 或は"Credide-
rit"? 誰が信ずるだろうか? 信ずることが
出来るか@?
行為が過去に於て可能であったことを示さ
んとする場合。
:Quis "crederet" ?
誰が信じ得たか?
.
.
@ 出来るという動詞を posse によって訳すならば、それは直説法に於かれる。

193. 弱意肯定は接続法現在あるいは過去によって示される。

接続法現在 接続法過去@
:Hoc vix "videatur" veri simile.
このことはやっと真実らしく思われるが。
:Nemo hoc "suaserit."
誰もこれを勧めることができないだろうが。
@ ただし、velim, malim, nolim は現在におかれる。
:"Velim" ex te scire.私は汝からそれを知りたいのだが。

194. 疑念(即ち決定に対する躊躇、困惑)は接続法現在及び半過去によって示される。

接続法現在 接続法半過去
とるべき決定に対して現に困惑しているこ
を示すために。
:"Eloquar" an "sileam"?
われは語るべきか黙すべきか?
:Quid "faciam"?
私はどうしようか?
とるべき決定に対して過去に於て困惑して
いたことを示すために。
:Quid "facerem" ?
私はどうすべきであったのか?
[N.B.--大過去は極く稀に用いられる]
.

195. 強力なる反駁は接続法現在、半過去、及び過去によって示される。

接続法現在 接続法半過去 接続法過去
現在に関する断言の拒否。
:Ego tibi "succense-
am"?
私が汝を怨んでいると言
うのか?
[汝を私が怨んでいると言
うことを反駁する為に。]
半過去に関する断言の拒否。
:Ego tibi "succense-
rem" ?

私が汝を怨んでいたと言う
のか?
[汝を私が怨んでいたと言
うことを反駁するために。]
過去に関する断言の拒否。
:Ego tibi "succensu-
erim" ?

私が汝を怨んだと言う
のか?
[汝を私が怨んだと言うことを
反駁するために。]

II -- 支配の文章論

第一章 主格(主語)

主格とは主語及びそれに関係する語の格である(n. 4 参照)。

第一項 -- 主語たる語

196. 主語となる語は名詞又は動詞の不定法である。

名詞@ 不定法
人称的法における動詞の主語は主格におか
れる。
:"Pueri" ludunt.
子どもらは遊んでいる。
主語たる動詞は不定法におかれる(n. 109
参照)。
:Utile est "legere."
読むことは有益である。
@ 代名詞は名詞の規則に準じて主格におかれる。
:"Unusquisque" nostrum morietur.我々の各のものは死ぬであろう。
但し主語たる人称代名詞は n. 49 に於て指定された場合以外にはおかれない。

197. 特殊摘要 -- 日本語の主語はラテン文に於ては、他の役目をもつことがある。この場合ラテン文に於けるその役目に従って要求される格におかれる。かくして日本語の主語はラテン文に於ては与格又は対格におかれることがある。

与 格 対 格
1。 非人称的表現 persuasum esse, 確
信する等と共に。
:"Mihi" persuasum est.@
私は確信する。
2。 Esse, 持つ, 所有すると共に。A
:Est liber "fratri" meo.B
私の兄弟は本を持っている。
1。 非人称的動詞 paenitere, 後悔する;
pudere, 恥じる等と共に。(n.131,3参照)。
:"Paulum" pudet fateri.
パウロは告白することを恥じる。
2。 無知Cを意味する動詞 fallere, la-
tere, praeterire と共に。
:Multa "eum" fallunt.
彼は多くのことを知らない。
@ 確信する(Etre persuade)は人称的表現法 persuasum habere によって訳される
場合、主語は主格におかれる。
:Cicero persuasum habebat.チチェロは確信していた。
A 但し、持つ, 所有する habere によって訳す場合は主語は主格におかれる。
B Esse nomen, 名づけられる, という名前であるも同様所有与格と共に用いられる。
:Est "mihi" nomen Petrus.(又はPetro) 私はペトロと申します。
C 但し、ignorare, 知らないとともには、主語を主格におく。

p. 103

198. 不定主語(フランス語の On, 人は)-- ラテン語では不定の主語を示すために、二通りの方法がある。

I -- 第一方法 -- 動詞の形態によって

A) 動詞の受動形によって示される不定主語。

1。)人称的受動形に
よって
a) 他動詞と直接補語とを使用する代りに、直接補語を主語とし、他
動詞を受動形にする:
:Homines virtutem amant. -→virtus amatur.
人々は徳を愛する。
b) もし動詞が下記のものの何れかであれば、即ち、iubeor, 人は
私に...を命ずる;imperor, 人は私に...を命ずる;vetor, 人は私に...
を禁ずる
(稀にはsinor, 人は私に...を許す)等意志の動詞及びcogor,
私に...を強いる;prohibeor, 私に...を妨げる
の活動性の動詞(それ
に属する動詞は不定法におかれる)。
:Libros sibyllinos inspicere "iussi sunt."
人々は彼らにシビルの本を調べるように命じた。
2。)非人称的受動形
によって(n.260)
もし能動形が直接補語をもたない時。
"Dicitur" と人は言う。-- "dicendum est"というべきである。
:"Ventum est" . 人が来た。
備考 -- I. 動詞videri, 人が思うを使う時は常に人称的の形を用いる:
:Ut "videmur".われわれが思うように。
II. 但し、主要動詞は非人称不定法動詞を伴う場合には、非人称形におかれる。
:"Dicitur" te "paenitere".汝が後悔していると人は言う。
III. 助動詞 debet, potest, solet が不定法動詞を伴っている時には、助動詞でなく、
不定法動詞を受動形にする。
:Est "mihi" nomen Petrus.(又はPetro) 私はペトロと申します。
:Quod "dici solet".普通に人が言うことは。

p.104

B) 動詞の能動形によって示される不定主語。

1。)接続法単数二人
称によって
a) 現在。
:Memoria minuitur nisi eam "exerceas".
記憶はもしそれを鍛わねば減退する。
b) 過去。
:Tantum remanet quod virtute "consecutus sis".徳の
結果しか残らぬ(人が徳によって得た物だけしか残らぬ)。
c) 半過去。
:"Videres" homines qui honores appeterent.
人は名誉を渇望する人々を見ていた。
2。)複数三人称によ
って
Dicunt, 人々は言う; ferunt, tradunt, と伝える;aiunt, 人々は言う;
putant, と人々は思う等の如く風評を示す動詞のために。

II -- 第二方法 -- 名詞又は代名詞によって

不定主語は適当な意味の名詞か代名詞によって示される。

1。)“総てのもの”
を示す不定主語
a) 肯定文に於ては homines, omnes, quilibet, quivis, ne-
mo non によって示され得る。
:"Homines" pudet male vixisse.
人は悪く生きたことを恥じる。
b) 否定文に於ては nemo, nullus によって。
:"Nemo" superbos amat.
人は傲慢な者を好まない。
2。)“いくらかのも
の”を示す不定主語
ラテン語の適当な語によって表わされる。
1)"Plerique" adolescentes sunt leves.
人々は青年時代に於ては軽々しい。
2)Quo plura "quis" habet, eo plura cupit.
持てば持つだけ持つことを望む。
3)"Quidam" dicunt te esse pigrum.
人々は汝が怠慢であると言っている。
4)"Aliquis" fores pulsat.
人が戸を叩いている。

p. 105

第二項 -- 主語たる命題

199. 補足命題の中、不定法命題と接続詞命題とは、或る動詞の主語として役目をもつことがある。

1。不定法命題 2。接続詞命題
不定法命題が或る一つの非
人称動詞或は或る非人称的表
現法:decet, 適している;
constat, 明白である;ne-
cesse est, 必要である等に
従属している場合。
:Constat "Deum"
nos "tueri".
天主が我々を保護し給うと言
うことは明白なことである。
.
Ut, と言うことと共に接続法におかれた命題。
多くの非人称的表現法:accidit ut, fit ut, という
ことが起こる;sequitur ut,という結果が生ずる、
の後。
:Fit "ut erremus".我々が間違うということが起こる。
Quod, ということが,と共に直説法におかれた命題

人称的或は非人称的動詞の如何を問わず、凡ゆる動詞の後。
Multum ei detraxit "quod erat" alienae civitatis.
異国人であるといことが彼に大いに害になった。

第二章 -- 呼 格

呼格にある語

200. 呼格とは呼びかけの格である(n. 4 参照)。

1。呼びかけの語 2。それに関係する語
a)呼びかけの語は呼格@におかれ、又一
般に文の冒頭におかれない。
:Incipe, "Mopse", prior.
モプスよ、先に始めよ。
b)呼びかけを強めるには文の冒頭にお
かれる。
:"Domine", salva nos!
主よ、我らを救い給え!
a)修飾語及び同格におかれた語は呼格に
おかれる。
:O "fortunate" adulescens!
おー, 幸福なる若人よ!
b)呼格に関する属辞は主格Aにおかれる。
:Domine, quam "bonus" es!
主よ、爾は如何に善良に在すことよ!
.
@ 呼格の代わりをする主格の用法は古語又は詩語に属する。
:Audi tu, "populus" Albanus.汝、アルバンの人民よ、聞け。
A 呼びかけの語が命題に属しない故、属辞は表わされた或は省略されている主語たる tu
(vos )と一致するのである。

p.106

第三章 -- 属 格(制限)

200. 属格は限定補語の格である(n. 4 )。

限定補語たる語

この語は名詞か動詞である。

限定補語としての名詞 限定補語としての動詞
1。確定せる補語@に関する場合には属格
におかれる。
:Corona "nostri regis"
我々の王の冠。
Rex "Macedonum".A
2。不確定の補語に関する場合には、それ
が修飾形容詞を有するか否かを見なければな
らぬ。
a) 修飾形容詞を伴う補語は属格におかれ
る。
:Orator "magni judicii".
偉大なる鑑識力を有する雄弁家。
b) 修飾形容詞を伴わない補語たる名詞は
これより転化した形容詞に変えられる。
:Corona "regia".王冠。
@確定せる補語はある一定のものを示す補
語である--不確定の補語は、一定のものを
示さず単に他の語より示されるものの品質を
表わす。
A権威、地位を示す名詞の補語である国
の名は、その国の人々を示す名詞の複数属格
によって代えられる--或る民族を示す形容
詞も同様に名詞の複数属格によって訳され
る。
:Imperator "Romanorum".
ローマの将軍。
1。現在の動詞。
a) これが補語を持たない時には、-di に終
る動詞的中性名詞を用いる。
:Tempus "legendi".読書の時間。
b) これが補語を持っている時には、その補
語は動詞的中性名詞にある動詞によって要求
される格におかれる。
:Tempus legendi "historiam".
歴史を学ぶべき時間。
c) 但し、補語が対格におかるべき場合に
は動詞的形容詞を用いる方がよい(n.120)。
:Tempus "legendae historiae".
歴史を読む時間。
2。過去の動詞。
この動詞は受動的過去分詞@によって訳さ
れる。
:Dolor "amissi patris"ei mor-
tem attulit.
父を失った悲しみが、彼の死の原因とな
った。
@ 自動詞の如く受動相をもたない時に
は、quod を用いて、理由命題となし得る。
:Gaudium "quod studuerit"
historiae...
歴史を学びし喜び...。
.

p. 107

203. 属格の他の意味 -- 属格は所有を示す(n. 202)以外に、更に確定せる度量、品質等を示す。

1。確定せる度量(度量属格) 2。品 質(性徴属格)
この場合属格は常に基本数形容詞を伴う。
:Fossa "quindecim pedum."
15尺の溝。
Puer "decem annorum".
10歳の子ども。
Classis "quingentarum navium".
500隻の艦隊。
.
.
.

3。全体のうちの一部(部分属格)
a) 次の如き若干の名詞の後:multitu-
do, pars 等。
b) 若干の(不定又は疑問)代名詞の後:
nemo, unus, aliquis, pauci, multi@
quis?等。
c) 最上級の後。
:Dimidia pars "vitae".生命の半分。
Aliquis "nostrum".
我々の中の誰か。
Doctissimus "hominum".
人々の中最も学識ある。
@但し、Plerique は寧ろ形容詞となる。
plerique milites,大部分の兵卒。
この場合属格@は常に品質形容詞を伴う。
:Puer "egregiae indolis."
良い性質の子ども。
@ 奪格も用いられる:Puer egregia
indole.而して外的又は一時的な品質に関す
る時には必ず奪格にされる。
:Britanni "capillo" sunt promis-
so.ブルトン人の髪は長い。

4。定 義(説明属格)
或る語によって名指されたものが何である
か、何で構成されているかを説明する。
:Alimenta "olerum et carnis".
野菜と肉との食物。
Nomen "Imperatoris".
帝王の名。
Virtus "abstinentiae".
無私無欲の徳。
@ 他の語を説明するための地理的固有名
詞はその語と同格におかれる:urbs "Ro-
ma".ローマ(の都)(n. 152)-- かかる場
合に属格を用いるのは極めて稀れである。

204. 動詞より転化した名詞に伴う属格は二様の意味即ち主体的意味と客体的意味とを有する:Amor(amo より転化),metus(metuo より), odium(odi より)。

主体的意味 客体的意味
この時属格は行為者を示す。
:Amor "parentum".
両親の愛[即ち、両親がもつ愛]。
この時属格は対象となる人物を指す。
Amor "parentum".
両親の愛[即ち、両親に対する愛]。
注意 -- 1) 翻訳の場合、それが主体的意味でか客体的意味なるかは、文の前後関係によって
知られる。作文の場合には曖昧を避けるために前置詞 in, erga を用いることができる。
:Amor in parentes. 両親に対する愛。
2) 人称代名詞の属格( mei, tui,...)は一般に客体的意味をもち、所有形容詞( meus,
tuus...)は一般に主体的意味をもつ。
:Amor meus, 私がもつ愛。(主体的意味)
:Amor meus, 私の愛(私が愛される愛)。(客体的意味)

p.108

特殊なる適用

205. 不確定なる補語は、尚それがある事件の起こった場所、語る人物の居住地、或る物の材料及び出所を示す場合には、名詞より転化せる形容詞によっても訳される。

1。或る事件の起こった場所。 2。或る人物の居住地。
:Pugna "Cannensis".@
カンヌの戦い。
3。或る物の材料。
:Vas "aureum".A
金の器物。
:Timon "Atheniensis".
アテネ生まれなるチモン。
3。或る物の出所。
:Vinum "Italicum".
イタリア産のぶどう酒。
@ 或はPugnas "ad Cannas".
A 或はVas "ex auro". -- 前置詞 e, ex はもしも材料を示す名詞が形容詞を伴う
場合には不可欠のものとなる:Vas "ex aruo solido", 金無垢の器。

制限属格に関する補足

206. ラテン語において属格を支配する若干の形容詞、代名詞、動詞、副詞及び前置詞は、制限属格の規則に従う。

1。-- 形容詞

207. 分与、願望、能力の概念(及びこれらに対立する概念)を示す形容詞の補語は属格におかれる。その若干の形容詞をあげると

Particeps,に与る、を有する。
Expers,を欠いている。
Compos,を掌中に収めたる。
Similes,@ に似た。
Advisus,に貪欲な。
Cupidus,を望む。
Curiosus,に好奇心がある。
Studiosus,に熱心な。
Conscius,を意識した。
Peritus,に上手な。
Providus,を予見した。
Rudis,に慣れない。
:Compos "mentis".
落ち着いた。
:Avidus "gloriae".
光栄を渇望した。
:Peritus "belli".
戦争上手な。
@ :Similis は与格を支配する:Similis "patri".父に似ている。--但し、補語が
人称代名詞であるならば、必ず属格におかねばならぬ:similis "tui".汝に似ている。

208. 注意 -- -ns に終わる分詞は、形容詞として用いられた場合には、属格を要求し、習慣的状態を示す:patiens "frigoris",常に寒気に耐えるもの。

p.109

2。-- 代名詞

209. ラテン語においては中性主格または対格の代名詞の補語としてしばしば属格が用いられる。

一般の用法 他の用法
Nihil "novi"何の新しいこともない。
Quid "consilii" est tibi!
汝にはどんな意見があるか?
Nihil "novum".(nihilと一致する)。
Quod "consilium" est tibi?
(Quodは疑問形容詞となる)。

210. 注意 -- 次の二つの場合には属格を使用することはできない。

a) 補語たる形容詞が第三変化に属する場合。
:Aliquid "instabile"(instabilisではない)或る変わり易いもの。
b) 補語たる形容詞がそれ自身補語を有する時。
:Aliquid "dignum laude"(laudeがあるのでdigni とならぬ)。賞賛に価する或るもの。

3。-- 動 詞

211. 五つの非人称動詞 me paenitet, me pudet, me piget, me taedet, me miseret (n. 131, 3。)は、その日本語における補語が名詞である時は、属格を要求し、動詞である時は不定法を要求する。

補語が名詞である時 補語が動詞である時
:Me paenitet "culpae meae".
私は私の過失を悔やむ。
:Me pudet "dicere".62 頁 V)
私は言うのを恥じる。

212. 特例 -- 不定法にある paenitere 等を引き出す動詞の中あるものは人称的形をとり、又或るものは非人称的形をとる。

人称的形をとるもの 非人称的形をとるもの
volo, 私は望む; cupio, 私は切望する
nolo, 私は望まぬ;credo, 私は思う
malo, 私は寧ろ..望む;audeo, @私は敢てする等。
:"Nolo" tui pudere.
私は汝について赤面することを望まない。
.
debeo, 私は..ねばならぬ;incipio,coepi,私は始める;
possum, 私は..できる;
videor, 私は..思われる;desino, 私は止める;
soleo, 私は..の習慣である。
:Eos "visum est" paenitere.
彼らは悔いているように思われた。
@ 何となればこれらの動詞の行為は生物によってのみなされるゆえである。
A これらの非人称の中に含まれた観念(恥入りや後悔等)は主動詞の真実の
主語と見なされ得る。(Incipit me paenitere=Paenitentia incipit me tenere.)

p. 110

213. 告訴する、(有罪と)納得させる、免訴する、罪に処す等の意味を有する動詞の後には、次の格が用いられる。

属 格 @ 奪 格 @
告訴され、又罪に宣告される原因となる違
法行為の名称は属格におかれる。
:"Furti" insimulatur.
彼は窃盗の罪で告訴される。
Damnare "proditionis".
謀反のために罪に宣告される。
@ 若干の表現法に於て属格は de + 奪格z
によって代え得る。しかし damnare "de
vi"(暴力の為に罪に宣告する)の表現法に
於て de は絶対に必要である。
宣告された罰を示す名称は奪格におき、宣
告するという動詞は multare,稀に dam-
nareAによって訳される。
:Multare "pecunia".62 頁 V)
罰金に処す。
.

@ 古典時代以後には、刑罰の名称はad,
in と共に対格におかれていることもある。
A 死刑に処すは一般に damnare "capi-
tis 或は capite" を以て訳する。

214. 告訴する又は罪に宣告するの動詞が補語として動詞を有する時。

告訴する arguere@を以て訳す 宣告する iubere を以て訳す
a) 告訴するが能動相の場合は quod
接続法と共に(n. 267 参照A)。
b) 告訴するが受動相の場合は単なる不定
法或は quod と共に訳される。
:Arguitur "occidisse".
彼は殺人をなしたことで告訴される。
.
a) 宣告するが能動相の場合は不定法命
題と共に。
:Iussit "eum occidi" .
彼は彼を死刑に処した。
b) 受動相の場合は単なる不定法と共に。
:Iussit est "occidi" .
彼は死刑に処せられた。
@ quod を用いる時、accuso を以ても訳され得る。
A 古典時代に於ては arguo 又は accuso (能動相)は不定法命題と共には
構成されなかったようである。

215. 告げる、告知するという意味を有する動詞の補語は

属格におかれ得る。@ しかし大抵は de と共に奪格Aにおかれる。
:Eum admonui "periculi".
私は彼に危険を告げた。
然し次の方が更によろしい。
Eum admonui "de periculo" .
@ 補語が中性代名詞ならば対格におかれねばならぬ。
:"Hoc" te monebo,私はこのことを汝に告げよう -- 尚、受動相の時も
対格が使用される、"hoc" monitus sum a patre meo.
A Moneo の補語は常に de + 奪格におかれる。

p. 111

216. 動詞meminisse, 記憶する、及びoblivisci, 忘れるの補語は次の格におかれる。

一般には属格に 時としては対格に
:"Vivorum" memini, nec obli-
viscor "mortuorum".

私は生者を記憶し、死者をも忘れない。
特に補語が事物を示す名詞である時。
:Memento "beneficia" .
恩恵を記憶せよ。

217. 記憶するを意味する recordor も次の格を要求する。

対 格 de と共に奪格
補語として事物を示す名詞を有する時。
:Recordor "consilia" tua.
君の勧告を記憶している。
補語として人を示す名詞を有する時。
"De te" recordor .
私は君を記憶する。
チチェロは ipse "flagitiorum" suorum recordabitur, かれはその恥辱を記憶するで
あろう
と属格を使用したが、然しこの構文は非常に稀にしか用いられない。

218. 動詞憫むは次の言葉によって訳され得る。

Misereri@ MiserariA
補語に属格を要求する。
:Miseremini "sociorum".
汝らの同盟者を憫れまんことを。
補語に対格を要求する。
:Juno miserata est "eum".
ジュノーは彼を憫んだ。
@ 同様に属格を要求する me miseret によっても訳し得る(n. 211)
A Meserari は又、惜む、嘆くの意味をもつ:miseror communem conditionem.
私は我々の共同の状態を嘆く。

219. 価格の動詞@vendere, 売る;emere, 買う;constare, 価する等を修飾する量の副詞Aは、或るものは属格、又或るものは奪格の形をとる(n. 173. 参照)。

属格の形をとるもの 奪格の形をとるもの
tanti, かほど; minoris, より安く;
quanti,いかほど; pluris,より高く.
magno,高く; maximo,非常に高く;
parvo,安く; minimo,非常に安く.
@ 価格の動詞の補語たる名詞は常に奪格におかれる(n. 329, 3。)
A 評価の動詞と共に副詞は常に属格の形をとることができる。

p.112-113

220. Interest, est の補語

Interest(非人称動詞)(refert)...に大切である;...に有益である。

A) 人を示す名詞は属格に
:Interest "filii" amare parentes.両親を愛することは子どもには大切である。
Interest "Civitatis" tueri cives.人民を守ることは国家に大切である。

B) 事物を示す名詞は ad と共に対格に
:"Ad honorem" nostrum interest recte vivere. よく生きることはわれわれの名誉のために大切である。

C) 代名詞@
1。 -- 人称代名詞以外のものは属格に
:"Cuiusnam" interest sutdere?誰に勉強することが大切か?
"Omnium" interest recte vivere.よく生きることは凡ての人に大切である。

2。-- 人称代名詞
一人称は mea, nostra
:"Mea" interest esse impigrum.勤勉であることは私に大切である。
二人称は tua, vestra
:"Vestra" interest esse sapientes.賢人たることは汝に大切である。
三人称は
a) 一つの命題においては
eius, eorum, earum. :"Eius" interest loqui.話すことは彼の義務である。
b) 二つの命題においては
sua は再帰代名詞の規則に従って用いられる(n.159及び163 参照)。
:Paulus credit "sua" interesse loqui.パウロは話すことが彼のためになることを信ずる。
eius は他の場合に用いる。
:Credo "eorum" interesse pugnare.私は戦うことが彼らのためになると思う。
@ この代名詞に伴う形容詞を属格に、例:Mea "unius" interest.私一人に大切である。
これらの代名詞に伴う名詞は寧ろ関係命題によって訳される(特にそれが品位、地位、職業を示す時)。例:Vestra interest, "qui estis patres".それは元老員たるあなたたちに大切である。


Est(非人称動詞);...の義務である;...の特徴である;...の特権である;...に属する;...に関する。

A) 総ての名詞は属格に...例:Est "regis" tueri suos(又は subditos sibi).臣民を守るのは王の義務である。

B) 代名詞@
1。-- 人称代名詞以外のものは属格に...例"Alterutrius" vestrum est loqui.話すのは汝らの中の一人のことである。
"Cuiusvis" est studere.学ぶのは凡ての人の務である。 2。-- 人称代名詞
一人称は meum, nostrum...例Meum" est pugnare.戦うのは私の務である。
二人称は tuum, vestrum...例"Vestrum" est agere.行うは汝らのことである。
三人称は
a) 一つの命題においては eius, eorum, earum,"Eius" est loqui.話すことは彼の義務である。
b) 二つの命題においては suum は再帰代名詞の規則に従って用いられる(n.159及び163 参照)。
suum :Paulus credit "suum" esse loqui.パウロは話すことが自分の義務であると信ずる。
eius は他の場合に用いられる。
:Credo "eorum" esse loqui.私は話すことが彼の務めであると信ずる。
@ interest に関する注意参照。


Esse(人称動詞);...に属する。Fieri(人称動詞);...の所有となる。

A) 総ての名詞は属格に、例:Hic liber est "magistri".この本は先生のものである。
Ilae rozae sunt "sororum" mearum.このバラは私の姉妹のものである。

B) 代名詞@
1。-- 人称代名詞以外のものは属格に...
:"Cuius" est hic liber? この本は誰のものか?
Hic liber est "alterutrius".この本は二人の中の一人のものである。
2。-- 人称代名詞
一人称は meus, noster(形)...例:Hic liber est "meus".この本は私のものである。
二人称は tuus, vester(形) ...例:Istae rosae sunt "vestrae".これらのバラは汝らのものである。
三人称は
a) 一つの命題においては...eius...Hi libri sunt "eorum".これらの本は彼らのものである。
b) 二つの命題においては...suus, a, um (形)は再帰所有形容詞の規則に従って用いられる。(n.159 参照)。
:Paulus dicit hos libros esse "suos".この本が自分のものだとパウロは言う。
eius は他の場合に用いられる。
:Credo has rosas esse "eius".このバラが彼のものであると私は思う。

p.114

221. Interest est との構文 -- この非人称動詞に伴う動詞は、ラテン語においては、次のごとくおかれる。

単なる不定法 不定法命題@
Interest, est の補語が、第二の動詞の
行為をなす人である場合。
:Pauli interest "venire".
来ることはパウロに大切である。
.
これらの補語が、第二の行為を
なす人でない場合。
:Pauli interest "te venire".
汝が来ることはパウロに取って重大で
ある。
@ 不定法命題の代わりに時として ut と接続法を用いる;但しこの構文法は極く稀である。

4。-- 副詞

222. 或る種の副詞は属格を支配する。即ち:

時の副詞 場所の副詞
補語がdiei, 日であるとき。
:Pridie huius "diei".
この日の前日。
N.B.もしも補語が diei でない時は
対格におかれねばならぬ。
:Pridie "carendas", "nonas".
(ante が省かれているとして)。
カレンデ、ノンネの前日。
a) 特に補語が gentium, terrarum,
loci
である時。
:Ubinam "gentium"?
世界のどこに?
b) 補語が抽象名詞である場合にはしばしば。
:Eo "dementiae" venit.
彼はこの点まで馬鹿になった。
.
.
同じく属格を要求する副詞:(multum "aquae")は後に述べる(174頁)。

5。-- 前置詞

223. 或る種の副詞は属格を支配する。即ち:

前置詞として用いられた奪格の
causa gratia. @
不変化名詞の instar が前置詞
として用いられる場合。
:"Morbi" causa.
病のために。
:"Montis" instar equus.
山のごとき馬。
@  causa garatia とは、常にその補語の後におかれる。

p. 115

224. 特殊摘要 -- Causa gratia の補語たる人称代名詞は特別の規則に従う。

一人称及び二人称に於て 三人称に於て
a) 人称代名詞は causa と共には、所有
形容詞に変えられる。而して causa と一致
する。
:"Tua" causa id faciam.
私はあなたのためにそれをしましょう。
b) gratia と共には、他の言い方が用い
られる。
"Tui commodi" gratia id faciam.
私はあなたのためにそれをしましょう。
a) 代名詞がもし再帰の意味をもつならば
所有形容詞に変えられる。
:Dicit te id fecisse "sua" causa .
彼はそれを貴方が彼の為になしたと言う。
b) もし再帰の意味がなければ代名詞の属
格を用いる。
"Eius" causa id faciam.
私は彼のためにそれをしましょう。
.

属格の用法一覧表

1。名詞の補語として属格は次のものを示す。

所有
度量
品質
区分(部分属格)
定義
主体、客体
Corona "nostri regis".
Fossa "quindecim pedum".
Puer "egregiae indolis".
Dimidia pars "vitae".
Nomen "imperatoris".
Amor "parentum".
n. 202
n. 203, 1。
n. 203, 2。
n. 203, 3。
n. 203, 4。
n. 204.

2。形容詞の補語として属格は次のものを示す。

分与
願望
能力
Compos "mentis".
Avidus "gloriae".
Peritus "belli".
n. 207.
n. 207.
n. 207.

3。代名詞の補語として属格は次のものを示す。

区分(部分属格)
Nihil "novi".
n. 209.

4。動詞の補語として属格は次のものを示す。

後悔等
告訴
告知
記憶
憐憫
価格
利益等
Me paenitet "culpae".
"Furti" insimulatur.
Eum admonui "periculi".
"Virorum" memini.
Miseremini "sociorum".
Tanti 等の副詞と共に.
Interest "regis".
n. 211.
n. 213.
n. 215.
n. 216.
n. 218.
n. 219.
n. 220.

5。副詞の補語として属格は次のものを示す。

時間
場所
Pridie huius "diei".
Ubinam "gentium"?
n. 222.
n. 222.

6。前置詞の補語として属格は次のものを示す。

理由(causa, gratia と共に)
類似
"Morbi" causa.
"Montis" instar equus.
n. 223.
n. 223.

p. 116

第四章 -- 与 格

225. 与格は一般に間接補語の格である。日本語に於て、”に”或は”の為に”によって示される以下に掲げるものは与格にある間接補語を要求する。

A-- 他動詞

1。に与える、に返す、に約束する、に拒
む、に示す等を意味する他動詞。
:Dare vestem "alicui."@
誰かに衣服を与えること。
.
2。Ante, inter, post, prae, ob, pro,
super, ad, cum, in, sub
A の前置詞によ
って合成された他動詞。
:Iniicere tumultum "civitati."
町に不和を投ずること。
@ 特殊構文法:Induere alicui vestem (或は aliquem veste, )誰かに衣服を着せる。
また donare alicui civitatem(或は aliquem civitate )誰かに市民権を与える。
A これらの動詞が本来の意味に於て用いられた場合、古典的散文家は前置詞、特に ad, in,
cum, sub を好んで繰返し用いる。この時ほごは前置詞の要求する格におかれる。
:Se "in medios hostes" iniicere. 敵中に身を投ずる。

B-- 自動詞

1。一般に日本語に於ても、ラテン語に於
ても、自動詞であるもの:
placere,気に入る;parere,従う;
irasci,怒る;servire,仕える。
:"Nemini" irascor.
私は誰にも怒らない。
3。前置詞との合成自動詞:
:Ratio "inest" "homini".@
人は理性を有する。
2。日本語に於ては他動詞で、ラテン語に
於ては自動詞Aであるもの:
parcere,容赦する;favere,ひいきする;
mederi,癒す;nocere,害する。
:Mederi vulneribus.
傷を癒すこと。
4。非人称的合成動詞:
accidit, contingit, evenit.
...が起こる。
@ 或は前置詞を繰返して ratio inest "in homine" とも言う。
A 反対に日本語で自動詞、ラテン語で他動詞であるものがある。
Decet,に適当である。例:Modestia decet "puerum".慎みは子どもに適当である。
Manet,留る。例:Gloria "nos" manet. 光栄は我等に留まる。
Deficit,に不足する。例:Vires "me" deficiunt. 力が私に不足する。

p. 117

C-- 受動詞

一般に かなり屡々 時として
義務のある人を示す為に -dus
に終る動詞的形容詞と共に。
:Tria "oratori" viden-
da sunt.
演説家は三つのことを心
得なければならぬ。
.
.
凡ゆる動詞の受身的過去分詞
の合成時称と共に。
:"Mihi" hoc consilium
captum est.
私はこの計画をとった。
.
.
.
動詞 probari, 同意される、
improbari, 非難される; in-
telligi, A理解される、のすべ
ての時称と共に。
:Hoc consilium "Cae-
sari" probatum est.
この計画はチェザルに同意され
た。
@ この使用法は与格の意味が曖昧にならない場合か又義務を負う人の名詞を特に強調したく
ない場合に用いる。
A Videri, 見える、思われるも与格を要求する。例:Tu "mihi" videris esse bonus.
君は善良であると私には思われる。
しかしvideri, から見られるは受動詞の規則に従う。

D-- 凡ゆる種類の動詞

226. その種類如何を問わず凡ての動詞と共に、その動作によって利益或は不利益を受ける人の名詞は与格におかれる(利益の与格)。
:Roscius praedia coluit "aliis" non "sibi".
ロッシウスは自分の為にではなく、他人の為に自分の畑を耕した。

-- 特 例 --

227. 或種の動詞は特別の構文法による。

二重与格 二重与格と対格
もたらす、原因となるを意味する esse
共に、人の名詞と事物の名詞とを与格におく。
:Tua pigrita est "mihi" "dorori".
汝の怠惰は我にとって悲のもとである。
.
.
laudi(或は vitio )と共に用いられる
を賞讃する、を非難するの意味をもつdare,
tribuere, vertere という動詞の補語は
生物の名詞を対格に、人の名詞を与格におく。
:"Mihi" meam "fidem" vitio
vertit.彼は私の善意を非難する。
@ 二重与格が用いられる例:
Mittere(或は venire )auxilio alicui.或人を助けに遣る(或は来る)。
Esse curae alicui. 或る人に心配の種である。
Esse saluti (或は perniciei )alicui.或る人の救い(或は滅び)の原因となる。

p. 118

228. Gratulari の構文法

Gratulari, 祝する、と共には人を示す名詞を与格に、物を示す名詞を対格(時としては de
共に奪格)におく。例:Dux "ei" gratulatus est "victorem"(或は de victoria ). 将
軍は彼に勝利を祝した。

229. 二様の構文法 -- Scribo, 書く;mitto, 送る;fero, 持って行く は二様の構文法を有する。

1。与 格 2。ad と共に対格
:Hanc "tibi" mitto epistolam.
私はこの手紙を君に送る。
[この場合 ad は...の方向を示す。n. 342]
Hanc "ad te" mitto epistolam.

230. 意義の変化 -- 或る種の動詞は与格を支配するか又は他の格を支配するかによって意義を異にする。

与格を支配する場合 他の格を支配する場合
Prospicere "patriae".
祖国の救いを監視する。
Consulo "tibi".
汝の利益について注意する。
Vocare "militiae".
軍務に服する。
Hoc "mihi" manet.
このことは私に残る。
Prospicere "futuros casus".
未来の危険を予見する。
Consulo "te".
私は汝の意見を尋ねる。
Vocare "militia".
軍役から除外される。
Hoc "me" manet.
これのみが私に残る。

231. 注意 -- 下記の如き場合に於ては日本語の”に”はラテン語の与格では表現されない。即ち、

傾向を示す補語 出所を示す補語
日本語の”に勧める””に圧迫する”
の補語はラテン語にては前置詞 ad と共に
対格におかれる。
:Vos hortor "ad laborem".
私は貴方達を労働に勧める。
日本語の”尋ねる””に於て買う”
等の動詞の補語は前置詞 ab, ex, de と共に
奪格におかれる(n. 330,3。)。
:Petere a Caesare tribunatum.
チェザルに護民官職を求める。

p.119

間接補語に関する補足

232. 或る名詞、形容詞又は副詞の補語は間接補語の規則に従う。

1。-- 名詞

233. 与格を支配する動詞から出た名詞にも与格の補語があり得る。

:Obtemperatio "legibus".法への服従。
Responsum "postulatus".問いへの答。

2。-- 形容詞

234. 利益、友情、接近、平等又はこれらと対立する概念を表わす形容詞の補語は与格におかれる。

Utilis, に有益な。
Gratus, に愉快な。
Salutaris, に有効な。
Necessarius, に必要な。

:Id "mihi" utile est.
それは私に有益である。
Amicus, の友の。
Carus, に愛すべき。
Benevolus, に親切な。
Infensus, に敵意ある。

:Patria est "mihi"
cara.国は私に懐かしい。A
Par, に等しい。
Vicinus, の隣の。
Propinquus, に近い。
Similis, に似た。

:Filius par "patri"
父に等しい子ども。B
@ Similis の補語は属格にもされ得る。補語が人称代名詞の時は必ず属格である。
:Similis est "tui"貴方に似ている。
A 友情を表わす多くの形容詞は前置詞 in, erga, adversus と共に与格を支配することもあり
得る。
:"Erga eum" benignus fui. 私は彼に対して親切であった。
B 平等を示す若干の形容詞は名詞的に用いられ、補語は属格に置かれ得る。
:Aequales "Ciceronis". チチェロと同時代の人々。

235. 形容詞 aptus, idoneus, pronus の補語は与格或は前置詞 ad と共に対格におかれる。

与 格 ad +対格
唯それが適合性だけを表わす時。
:Genus dicendi aptum "adoles-
centibus." 青年に相応しい雄弁術。
.
.
それが能力、傾向を示す時。
:"Ad omnes res" aptus est.
凡ての事に能力を有する。
Pronus "ad irascendum."
怒り易い。

p. 120

236. 注意 -- Assuetus, に熟練した; paratus, に準じた、等の如く、能力を示す形容詞的にとられた若干の分詞の補語は次のようにされる。

普通に ad +対格 時として単なる不定法
:Miles paratus "ad pugnandum".
闘うために準備した兵士。
[関係対格]
Miles paratus "pugnare" .@
@ Paratus "pugnando" は使用すべきでない。それは与格を支配する補語として
-do に終る動詞的中性名詞或は与格の受動的形容詞の使用は、古典時代以後の用法であるからで
ある。

3。-- 副 詞

237. 副詞 obviam, の出迎えに;convenienter, congruenter, に応じて、及び元来与格を支配する形容詞又は分詞から作られた凡ての副詞は与格を支配する。
:Obviam "patri" procede.貴方のお父さんを出迎えに行きなさい。

与格使用の一覧表

1。与格は次の如き動詞の補語たり得る。

贈与補語
状況補語
自動詞の補語
.
非人称動詞の補語
受動詞の補語
.
.
利益補語
二重与格
.
.
祝意を示す動詞の補語
記述を示す動詞の補語
Dare vestem "alicui".
Iniicere tumultum "civitati".
"Nemini" noceo.
Parcere "regi" victo.
.
Tria "oratori" videnda sunt.
"Mihi" consilium captum est.
Consilium "Caesari" probatum est.
Praedia coluit "aliis", nono "sibi".
Tua pigritia est "mihi" "dolori".
"Mihi"meam fidem "vitio" vertit.
Esse "perniciei" "alicui".
"Ei" gratulatus est victoriam.
Hanc "tibi" scribo epistolam.
n. 225, A.
n. 225, A.
n. 225, B.
n. 225, B.
n. 225, B.
n. 225, C.
n. 225, C.
n. 225, C.
n. 226.
n. 227.
n. 227.
n. 227.
n. 228.
n. 229.

2。与格は名詞の補語たり得る。

動詞転化名詞の補語
Obtemperatio "legibus". n. 233.

3。与格は形容詞の補語として次のことを示し得る。

利益等
友情等
平等等
適応性
Id "mihi" utile est.
Patria est "mihi" cara.
Filius par "patri".
Genus aptum "adlescentibus".
n. 234.
n. 234.
n. 234.
n. 235.

p. 121

第五章 -- 対 格

238. 対格は直接補語とそれに関する語との格である。(参照 n. 4)。

第一項 -- 直接補語たる語

239. 直接補語は名詞或は動詞の不定法である。

名 詞
動詞の不定法
他動詞の直接補語は対格におかれる。
:Amamus "Deum".
われわれは天主を愛する。
Imitor "virum" probum.
私は善人を真似る。
.
他動詞の直接補語たる動詞は不定法におか
れる。
:"Vincere" scis, Hannibal.
ハンニバルよ、汝は勝つことができる。
Vellem "legisse".私は読み終わって
いることを望んでいるのに。

240. 二重対格 -- 若干の動詞は二つの対格(即ち一つは人物の、他は事物の)を支配する。

一般に
稀に
1。Docere,@edocere 教える
:Eam "artem" "nos" docebis.
汝は我々にこの芸術を教えるだろう。
2。前置詞trans,の合成動詞、即ち
transportare, trajicere, traducere,A
渡させる
:"Flumen" "copias" traduxit.
彼はその軍隊に河を渡らせた。
備考 -- Docereが"報ずる"を意味する時
は事物の名詞を de + 奪格にする。
:"De itinere" hostium senatum
docuit.彼は敵の行程を元老院に報知した。
然し、中性代名詞は、たとえ、受動詞の後で
も対格におかれる。
:Caesar "omnia" edoctus est.チェ
ザルは凡てのことについて報知された。
1。Celare, 隠す
:"Te" celavit "consilium" .
彼は汝にその計画を隠した。
2。Poscere, flagitare, 要求する;
postulare, 願う(与える様に);precari,
祈る、interrogare,B尋ねる。
:"Me" poscit "pecuniam".
彼は私に金子を請願する。
N. B. --古典的構文法においては、
1)Celare "aliquem" "de aliqua re".
2) Poscere, flagitare, postulare, pe-
tere, "aliquid" "ab aliquo."
3) Interrogare, precari "aliquem"
"de aliqua re".となる。
.
.
@ 受身 doceor の代りに、一般には動詞 discere, 学ぶが用いられる。それ故、次の様に
言う。Pueri discunt grammaticam(pueri docentur grammaticamの代りに)。
A 此等の動詞の受動形に於ては、事物の名詞は対格のままにする。
:Exercitus "flumen" traductus est.軍隊に河を渡らせた。
B 二つの対格によって構成された rogare, 諮問する、は司法的、政治的の言葉である。
Rogare aliquem, sententiam.或る人に自分の意見を諮問する。
注意すべき表現句:。rogare legem(或は rogare populum).法律を提議する。

p. 122

241. 修飾対格 -- 或る動詞は直接補語としてではなく状況を示す補語として対格を支配する。この場合対格におかれる語は名詞或は代名詞である。

名 詞
代名詞
名詞の対格は自動詞と共に使用せられ次の
条件を具備せねばならぬ。
a) 名詞は動詞と同一語根或は殆ど同一意義
を有すること、又
b) 名詞が修飾形容詞或は限定詞に伴われて
いること。
:"Beatam" vivere "vitam".
幸福に生活を送る。
:"Longam" ire "viam".
長途を歩き廻る。
:Eius "gaudium" gaudeo.
彼と共に喜ぶ。
特に id, quod, nihil 及量の概念を示す
形容詞、例えば、unum, pauca, multa,
plura, cetera, omnia 等の代名詞は以下
の動詞と共に対格におく。
1。 自動詞と共に。
:"Unum" omnes student.
凡ての人は同一の趣向を有する。
2。告げる、@奨めるを意味する他動詞
又は人物を示す名詞を直接補語として有して
いる他動詞と共に。
:"Quod" te hortor.私が汝に奨め
ることは。
@ 修飾対格は受動詞と共に用いられる。
:"Unum" te monitum volo.私は汝が一つの事について忠告されていることを望む。

242. 副詞的対格 -- 多くの名詞、形容詞、代名詞の対格は屡々副詞的に用いられる。例えば、

Magnam partem, 大部分。
Tum ipsum, ちょうどその時。
Nunc ipsum, 今も今。
Ceterum, 尚又。
Id temporis, その時。
Primum, 先ず。
Pleraque, 大体。
Nihil, 少しも...ない。
Aliquid, 幾らか。
Omnia, 全く。
Summum, 精々。
Vicem, の様に、等。
例::Thebani "nihil" moti sunt.テバニ人達は一寸も感動しなかった。

対格語の一覧表

直接補語たる名詞
直接補語たる動詞
二重対格
.
.
.
修飾対格 .
.
.
.
副詞的対格
Amamus "Deum",
"Vincere" scis, Hannibal,
Eam "artem" "nos" docebis,
"Flumen" "copias" traduxit,
"Te" celavit "consilium",
"Me" poscit "pecuniam",
"Beatam" vivere "vitam",
Eius "gaudium" gaudeo,
"Unum" omnes student,
"Quod" te hortor,
Thebani "nihil" moti sunt,
n. 239
n. 239
n. 240
n. 240
n. 240
n. 240
n. 241
n. 241
n. 241
n. 241
n. 242

p. 123

第二項 -- 直接補語たる補足命題

命題も動詞の直接補語になり得る。それは不定法命題、接続詞命題、疑問命題の三つである。

I-- 不定法命題

244. 不定法命題は一般に知性を示す動詞によって引き出されるが、然し又、意思或は感情を示す幾つかの動詞によっても引き出され得る。

1.知性を示す動詞

245. 知性を示す動詞の種類

1。意見を示す動詞 2。認識を示す動詞 3。陳述を示す動詞
Credere, 信ずる、
putare, 思う、
sperare, 望む、
opinari, 判断する
Videre, 見る、
docere, 教える、
discere, 習う、
scire, 知る、
dicere, 言う、
fateri, 告白する、
nuntiare, 告げる、
iurare, 誓う等。
N. B. 知性を示す動詞の意味を有する動詞的熟語:fama est, と言うことである;spes est,
と言うことを望む、も不定法命題を伴う。

246. 不定法命題の構文法

接続詞
主語
動詞
無し 対格におかれる 不定法におかれる
例:Scio "Deum" "esse" justum.私は天主が正義に在すことを知っている。

247. 不定法命題の時称 -- 主動詞の行為に対して附属動詞の行為が

同時の場合
以前の場合
以後の場合
動詞は不定法現在におかれる。
Credo eum "legere".
彼が読んでいると私は思う。
Credebam eum "legere".
彼が読んでいると私は思っていた。
.
.
動詞は不定法過去におかれる。
Credo eum "legisse".
彼が既に読んだと私は思う。
Credebam eum "legisse".
彼が既に読んだと私は思っていた。
.
.
動詞は不定法未来におかれる。
Credo eum "lecturum.
esse".彼が読むだろうと私は
思う。
Credebam eum "lecturum
esse@."彼が読むだろうと思
っていた。
@ 不定法未来に於ける esse は屡々省略される。

p. 124

不定法命題の主語に関する補註

248. 不定法命題の主語の標示。

一般規則
例外の
原則として主要命題と附属命題の主語が仮
令同一であっても表示される。
:Alexander dicbat "se" esse
filium Jovis.
アレクサンデルは自分がジュピテルの子で
あると言っていた。
Spero "me" cras profecturum
esse.
渡しは明日出発したいと思う。
.
.
.
1。不定法が非人称動詞である場合は主
語はない。
:Dicit "pugnari".戦が交えられてい
と彼は言う。
2。不定法の主語たる se が、同時にそ
の命題の直接補語として繰返される様な場合
:Nuntiat "se" permittere.
彼は身を渡すと言っている。
3。非人称主動詞の後、附属命題の主語
が不定である時。
:Non licet(省略 aliquem) esse
otiosum.無為でいることは許されない。
@ 古典時代に於てさえ、或る作家は、上記の三つの場合以外にも時として不定法の主語を省い
ている。

249. 特殊な場合 -- 不定法である附属命題の主語が第三人称の人称代名詞である時には、次の二つの方法によって表現されるべきである。

1。再帰代名詞 se によって
2。Eum, eam, eos 等によって
主動詞の主語と不定法動詞の主語とが同一
である時。
:Paulus credit "se" esse doctum.
パウロは学者である(自分が学者である)
と思っている。
主動詞の主語と、不定法動詞の主語とが同
一でない時。
:Credo "eum" esse doctum.
私は彼が学者であると思う。
.
ここでは163 及び 164 番の se の規則が適用されているのである。

250. 主語の位置 -- 不定法命題の主語は普通に主要命題の動詞の直後におかれる。
:Credo "te" si pater tuus venerit, gavisurum esse.
もし貴君の父が来られるならば、君が喜ぶだろうと私は思う。

251. 属辞と主語との一致 -- 不定法命題の属辞はその主語と同格即ち対格におかれる。
:Scio Deum esse "iustum". 私は天主が正義に在すことを知っている。

p. 125

不定法の時称に関する補註

252. 未来の用法 -- 不定法未来は動詞 sperare, 期待する;jurare, 誓う;polliceri, 約束する;minari, 嚇す, 並びに他の類似語と共に使用される。
:Sperabat se magnas copias mox "habiturum esse".
彼は間もなく自分が大軍隊を統帥するだろうと期待していた。

253. 注意 -- Sperare, 思う;iurare, 宣誓する の動詞の後には文章の意味に従って不定法現在、不定法過去も使用される。
:Spero me tibi causam "probasse".私は貴方に私が理由を証明したと思う。

254. 不定法命題に於ける未来の用法

A) 単純未来
B) 先立未来
1。目的分詞をもつ動詞は、その不定法
未来(能動形に於ては -urum esse, 受動形
に於ては -um iri )を用いる。
:Credo eum "venturum esse" .
彼が来るであろうことを私は信ずる。
Scio vos "amatum iri".
私は貴方が愛されるであろうことを知
っている。
2。目的分詞をもたない動詞に於ては、
fore ut 或は futurum (esse) ut と接続
法(主要詞の時称に従って現在或は半過去:
参照 n. 271)を以て表現される。
:Credo "fore ut" Paulus studeat.
私はパウロが勉強するであろうと信ず
る。
Credebam "fore ut" studeret.
私は彼が勉強するだろうと信じていた。
Fore ut, futurum esse ut と接続法に
よって。
1。過去は -- もし主要動詞が現在或は
未来であれば、
:Credo "fore ut" tum "advene-
rit".私は彼がその時には到着してい
るであろうと思う。
2。大過去は -- もし主要動詞が過去で
あれば、
:Credebam "fore ut" tum liburm
"legisses".>
私は貴方がその時には既に本を読んで了
ったであろうと思っていた。
.
.
.
.

255. 注意

1.-- 目的分詞を持っている動詞の場合でも fore ut, futurum esse ut を使用し得る。-- 多くの文法学者はこの言い方の代わりに普通受動形、不定法未来を用いる方が良いと述べている。然しチチェロは -um iri に終わる不定法を好んで用いたようである。

2.-- Posse, debere, velle, malle, nolle は決して fore ut 或は futurum esse ut の形をとらず、未来の概念を表わす為にも、矢張り不定法現在の形をとる。
:Sperat se "posse" mox venire.彼は自分がやがて来ることができるであろうと期待している。

3.-- 受動詞と受動形能動詞とに於ては、先立未来の概念は普通 fore (不変化)と過去分詞とによって表現される。
:Credo hos libros tum "lectos fore".その時これらの本が既に読まれているだろうと私は信ずる。
Credebam eos tum "profectos fore".彼らがその時既に出発したであろうと私は思っていた。

p.126

256. 不定法命題に於ける設若文 -- 不定法命題に於ける設若文を構成するためには、まずその条件が可能を意味するか、事実の反対を意味するかを調べねばならぬ。

1。)可能の意味を有する場合
2。)事実の反対の意味を有する場合
A) 結題の表現

1。[動詞が目的分詞を有する時]
-urum esse に終る不定法(能動形)、
-um iri に終る不定法(受動形)。
2。[動詞が目的分詞を有しない時は必ず]
futurum esse ut と接続法現在又は
半過去@
3。[特に補足命題の動詞が受動形である時]
Posse と不定法現在。

B) 条件命題の法と時称

1。主要命題が過去でない時は接続法現在。
2。主要命題が過去である時は接続法半過去
例:
Scio[現在]
te empturum esse si habeas pecuniam.
futurum esse ut emas si habeas pecuniam.
te posse emere si habeas pecuniam.
私はもし汝が金をもっているならば、汝が
それを買うだろうことを知っている(汝は他日
恐らくそれを持つであろう)。
Sciebam[過去]
te empturum esse si haberes pecuniam.
futurum esse ut emeres si haberes pecuniam.
te posse emere si haberes pecuniam.
私はもし汝が金をもっているならば、汝が
それを買うだろうことを知っていた(汝は他日
恐らくそれを持つであろう)。
.
.
A) 結題の表現

1。-urum fuisse に終る婉曲な言い方。
[動詞が目的分詞を有していてそれが能動詞
か或は形式受動詞である場合。]
2。Futurum fuisse ut と接続法半過去
の言い方。
[動詞が目的分詞をもたない場合が又は受動
相なる時は必ずこれを用いる。]
3。Potuisse と不定法現在。

B) 条件命題の法と時称

1。現在の事実に反対することであれば接続
法半過去。
2。過去に事実に反対することであれば接続
法大過去
例:
Scio(又はsciebam)
te empturum fuisse si haberes pecuniam.
futurum fuisse ut emeres si haberes pecuniam.
te potuisse emere si haberes pecuniam.
私はもし汝が金をもっているのなら、それ
買うだろうことを知っている(知っていた)
[但し実際には汝はそれを持たない]。
Scio(又はsciebam)
te empturum fuisse si habuisses pecuniam.
futurum fuisse ut emeres si habuisses pecuniam.
te posse emere si haberes pecuniam.
私はもし汝が金をもっていたならば、それを
買ったであろうことを知っている(知って
いた)[但し実際には持っていなかった]。
@ 主文の動詞が現在であれば接続法現在に、過去であれば接続法半過去に。

257. 二つの動詞に属する附属命題 -- 附属命題が二つの動詞に属する場合には二つの中の一つが過去であれば上記の例の如く主動詞の過去の規則(n. 271, 2。)を守らねばならぬ。
"Sciebam" te empturum esse si "haberes" pecuniam.
Respondebunt se armatos tibi "obstitisse" ne "progredereris".
彼らは汝の全身を阻む為に武器をとったと答えるだろう。

p.127

258. 知性を示す動詞に関する補足 -- 次の如きものも、不定法命題を要求する。

1。非人称動詞
2。非人称的表現句
Expedit, ...は有益である;
decet, ...は適する;
apparet, ...は明らかである;)
constat, ...は明瞭である)等。
:Omnibus bonis expedit "salvam
esse rem publicam".
国家が安全であることは全ての善良な
人に有益である。
Verum est, ...は本当である;
falsum est, ...は謬である;
aequum est, ...は正当である;
mos@ est, ...は習慣である等。
:AEquum est "cives parcere"
civibus suis.
国民が自国民を許すことは正しいこと
である。

@ Mos est は又接続法命題と共にも構成される(n. 279 参照)。

259. 三様の構文法 -- 非人称動詞 necesse est, 必要である;oportet, ねばならぬ;licet, 許される は次の方法を以て構成される。

1。不定法命題  2。Ut なしに接続法
3。単なる不定法
もし附属動詞の主語が示されるならば、1。或は2。の何れ
を用いるも自由である。
例:Oportet "te studere";或は oprtet (ut)
"studere".汝は勉強せねばならぬ。
もし附属動詞の主語が示されな
い場合。例:Oportet "studere".
勉強せねばならぬ。
@ この場合には主語が省略されていると言ってよい。従って属辞があればそれを対格にお
くべきである;non licet esse "otisoum".

260. 受動形非人称動詞の特殊構文法 -- 受動的非人称動詞、例えば dicitur, 言われる;creditur, 思われる;narratur, 語られる;nuntiatur, 告げられる等の場合、次の構文法が用いられる。

人称的構文法
非人称的構文法
もし言われる、...と思われるを意味する
動詞が単純時称にあるならば、非人称的構文
法よりも寧ろ人称的構文法が用いられる。
:"Dicuntur cervi" diutissime vi-
vere.鹿は非常に長く生きると言われる。
N.B.-- 補足命題の主語は主要動詞の主
語となる。属辞たる形容詞或は分詞は主格に
おかれる。
:Dicitur leo sic "locutus" esse.
獅子は斯く語ったと言われる。
.
.
.
.
1) もし二つの動詞が複合時称にあれば、
常に非人称的構文法が用いられる。
:"Nuntiatum est" Romanos vic-
tos esse".
ローマ人達は敗北したと告げられた。
である。
2) もし言われる、...と思われるを意味
する動詞のみが複合時称にあるならば人称的
構文法よりも寧ろ非人称的構文法が用いられ
る。
:Ubi tyrannus (est), ibi "dicen-
dum est" "nullam esse" libertatem.
暴君の居る処、何らの自由なしと言わねばな
らぬ。

p.128

2.意志及び活動性を示す動詞

261. 意思を示す動詞 -- 意思を示す動詞の中(その大部分は接続命題を要求する n. 268), jubere, 命ずる;vetare, 妨げる;sinere, 許す;pati, 堪える;cupere, 切望する;volo, nolo, malo の動詞は不定法命題或は単なる不定法を要求する。即ち、

不定法命題(現在)
単なる不定法(現在)
もし二つの動詞の主語が同一でない時
例:Jubeo "te abire".
私は貴方に出発する様に命ずる。
Volo "te esse" clementem.
私は貴方が寛仁であることを望む。
もし二つの動詞の主語が同一である時
例:Jussus est "abire".
彼は出発する様に命ぜられた。
Volo "esse" clemens.A
私は寛仁であることを望む。
@ 或は ut なくして接続法(n. 278):volo "sis" clemens.
A Volo, malo, cupio(極めて稀には nolo )の後には、主語が同一であっても附属動詞
esse 或は受身の不定法の場合には不定法命題を構成する。

262. Jubeo の構文法 -- 動詞 jubere, 命ずる;vetare, prohibere, 禁ずる は能動形或は受動形に用いられるに従ってその構文法は異なる。

能動形に用いられる場合
受動形に用いられる場合
不定法命題と共に構成され、日本語に於け
る間接補語がその不定法命題の主語@となる。
例:Vetat "filium abire".
彼は息子に出発することを禁ずる。
単なる不定法と共に構成される。
例:Jussi sunt "abire".
彼らは出発する様命ぜられた。
.
@ 日本文に於ける間接補語がない時には、附属命題の動詞は受動形になる。
:Eum "occidi" prohibuit.彼は殺すことを禁じた。

263. Statuo の構文法 -- 動詞 statuere, decernere, constituere, 決定する には二様の構文法がある。

1。単なる不定法@
2。Ut 或は ne と共に接続法
もし主動詞と附属動詞の主語が同一である時。
例:Rhenum "transire" decreverat.
彼はライン河を渡ることを既に決心していた。
.
.
もし主動詞と附属動詞の主語が同一でな
い時。A
例:Dux statuit "ut" milites "oppu-.
gnarent".将軍は兵士達が攻撃する様に取
決めた。
.
@ これらの動詞が信ずる、察する、評価する等の意味を有する場合には不定法命題を以て構成
する(参照;意見を示す動詞 n.245, 1.)。
A 二つの動詞の主語が同一である場合でも、ut を用いることがある。
Constitui "ut" Aqwuini "manerem".私はアキノに留まるに決めた。

p.129

264. 活動性を示す動詞 -- 幾つかの活動性を示す動詞: prohibere, 妨げる、禁ずる;cogere, 強制する 等の動詞は前に述べた意思の動詞と同様の構文法をとる(n. 261 参照)。
例:"Mori me" coges.貴方は私に死ぬことを強制する。

265. しかし多くの動詞は単なる不定法をとる。

studere, に努める;
instituere, を企てる;
scire, が出来る;
conari, に努力する;を試みる
niti, に努力する;を試みる。
dubitare, に躊躇する;
morari, に遅れる;
desinere, を止める;
negligere, を怠る;省く;
desistere, を抛棄する;断念する。
posse, が出来る;
debere, ...ねばならぬ;
properare, を急ぐ;
incipiere, を始める;
coepisse, を始める。
例:Qui fortiter "mori conantur" "vincere possunt".
勇敢に死なんとするものは、勝利を得る。

3.感情を示す動詞

266. 感情を示す動詞は次のことを表わすことが出来る。

感情そのもの
感情よりのもの
gaudere, ...喜ぶ;
laetari, 喜ぶ;
dolere, 悼む;)
mirari, 驚く等。
gratias agere, 感謝する;
vituperare, 咎める;
gratulari, 祝う;
accusare, 告訴する、等。

267. これらの動詞の構文法

もしこれらの動詞が
感情そのもを示すならば@
もし感情よりのものを示すならば
1。一般に不定法命題を取る。
例:Miror "eum dicere".
私は彼が言っていることに
驚く。
2。例外として非人称動詞paeni-
tet...は一般に単なる不定法と
共に構成される。
例:Me pudet "dicere".
私は言うのを恥じる。
(n. 211 参照)。
.
.
1。これらの動詞は寧ろ quod
a) 直説法 -- もし作者が感情が実際的な事柄に基づいてい
ることを示したい時。
例:Tibi "quod abes" gratulor.
私は汝が此処に居ないことを祝う。
b) 接続法 -- もし作者が他人の意見を引用した場合。
例:Accusatus est "quod corrumperet" ju-
ventutem.彼は青年を堕落させたことを訴えられた。
2。例外として -- 受身動詞 argui(及び accusari) 訴え
られるは単なる不定法をとる。
例:Arguitur "prodidisse" patriam.
彼は祖国を裏切ったことを訴えられる。
@ 感情を示す動詞と共に接続詞 quod が使用されることがある。しかしそれは非常に稀である。
-- 感情よりのものを示す動詞は不定法命題と共にも構成され得る。 queri, 驚く、不平を言う、
にはこの構文法が普通である。

p. 130

II -- 接続詞命題

268. 接続詞命題は一般に次の様な動詞に属している。
1。意思(願望、欲求、勧告、命令)を示す動詞。
2。妨害(抵抗、拒絶、禁止)を示す動詞。
3。恐怖を示す動詞。

269. 法 -- 接続詞で始まる補足命題は通常接続法におかれる(quod の命題、n. 281 を除く)。

270. 時称 -- 接続詞命題の時称を定めるには次のことを考慮せねばならぬ。
1。主動詞の時称。
2。附属動詞の相対時間。

271. 時称の一致 --

主動詞の時称 附属動詞の相対時間 接続法の時称
1。現在に、或は二
つの未来の時称
の一つにある場
合。
.
.
.
.
.
.
.
.
2。過去の時称の一
つにある場合。
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
a) 同時或は以後
.
.
.
.
.
b) 以前
.
.
.
.
.
a) 同時或は以後
.
.
.
.
.
b) 以前
.
.
.
.
.
a- 現在
.
.
.
.
.
b- 過去
.
.
.
.
.
a- 半過去
.
.
.
.
.
b- 大過去
.
.
.
.
.
Opto, optabo, opta-
vero, optem, "ut ve-
niat".

私は彼が来る様に希望
する、希望するであろう、
希望するが。
Opto ut rem "con-
fecerit" (prius quam
advenero).

(私が到着する前に)彼
が彼の仕事を既に終って
いる様に希望する。
Optabam, optavi,
optaveram "ut veni-
ret"

私は彼が来ることを希
望していた、希望した、
以前希望していた。
Optabam, optavi,
optaveram "ut iam
venisset"

私は彼が既に来ている
様に希望していた、希望
した、以前希望していた。
特殊用法 -- 時称の一致の為に。
1。叙述不定法(n.109)、書簡的半過去(n.181)は何時も過去の時称として取扱う。
2。歴史的現在(n.180)は一般に過去の時称として取扱う。
3。過去形現在(n.182)は或は現在として、或は過去として取扱う。

p. 131

1.意思及び活動性を示す動詞

272. 意思を示す動詞 -- optare, 望む;suadere, 勧める;hortari, 励ます;monere, 忠告する;exigere, 要求する;petere, rogare, 懇願する等の動詞は接続法命題を引き出す。

273. 規則 -- これらの動詞の後に来る附属文の接続詞は ut 或は ne である。

ut と接続法
ne @と接続法
附属文が肯定の場合 例:Suadeo tibi "ut legas".
私は読む様に君に勧める。
附属文が否定の場合>
:Te hortor "ne" istud "agas".
私は君がそれをしない様に君を励ます。

@ 然しながら、...しないことを許す permittere "ut non" と訳する。

274. Ut の省略 -- 次の場合接続詞 ut (或は ne)を省略する。

一般に
稀に
動詞volo, nolo, malo (n。261, n.1),
necesse est, oportet, licet(n。259,2。)
と共に。
:Mihi "credas" velim.@
君が私に信頼する様希望する。
Scribere, permittere, hortari等の
動詞と共に。
.
.
.

@ 不定法命題も使用出来る(n。261)。

275. Ut の置換 -- 否定形補足文に於て

以下の様に言わずして
Ut nemo, tu nihil, ut nunquam, et ne,
以下の様に言う
Ne quis, ne quid, ne unquam, neve.
:Obsecro te "ne quid" agas, "neve" dicas.
私は君に、何もなさず又何も言わない様に切願する。

276. 二様の構文法 -- 言う、書く、告げる等の動詞は其の意味に従って次の様に訳する。

接続詞命題
不定法命題
勧告を示す場合
:Dic ei "ut veniat".
彼に来る様に言え。
出来事を述べる場合
:Dic ei "me venisse".
私が来たと彼に言え。

p. 132

277. 活動性を示す動詞 -- Cavere, videre, providere, のように気を付ける; curare, operam dare, ...に念を入れる;tentare, ...を試みる; efficere, facere, ようにする; obtinere, consequi, ...を得る、 等の動詞は接続法命題を引き出す。

278. 規則 -- これらの動詞の後に来る補足文は、次の接続詞によって引出される。

ut
ut non @
ne
もし附属命題が肯定である
ならば。
:Navem idoneam "ut
habeas," diligenter vide-
bis.適当な船を所有する為に
汝はよく気を配るであろう。
もし附属命題が否定で、主
動詞が意向を示さない場合。
:Splendor vester fa-
cit "ut non possitis"...
汝らの名誉は汝らが...をする
ことが出来ない様にする。
もし附属命題が否定で主動詞が
意向を示す場合。
:Vidit "ne" quid res-
publica detrimenti "cape-
ret.彼は共和国が何らの損害を
も受けない様に気を配った。

@ 或は意味によって ut nemo, ut nihil, ut nunquam.

279. 活動性の動詞の補足 -- 次の動詞も亦接続詞命題(主語的補足命題)と共に構成される。

1。非人称動詞
2。非人称的表現
Fit ut, ...が起こる;
evenit ut, ...が起こる;
accidit ut, ...が起こる;
contingit ut, ...が起こる;
sequitur ut, ...おいう結果になる;
restat ut, ...ということが残る。
Mos@(moris)est ut, ...ということは慣例である;
consuetudo est ut, ...ということは習慣である;
non locus est ut, ...するのは適当でない;
tantum abest ut, ...する所ではない;
in eo res est ut, ...ということ迄になった;
reliquum est ut, ...ということが残る。

@ Mos は不定法命題をも要求する(n.258)。

280. 否定詞 -- 上記の非人称的動詞又は表現句の後に用いられる否定詞は常に non である。
:Saepe fit "ut non" recte sentiamus.正しく考えないということは屡々起る。

281. Quod の補足命題 -- quod によって引出される直説法にある補足命題は直接補語或は主語となり得る。

直接補語
主語
特に addere, 加える; praeterire;
omittere, 黙過する; bene facere, をす
ることはよい、と共に。
:Omitto "quod" sedem "dele-
git".私は彼が住居を選んだのを黙過する。
いかなる動詞(人称又は非人称)と共に
も。
:Multum ei detraxit "quod erat"
alienae civitatis.
彼が外国人であることは彼に大変害をなした。

p. 133

2.妨害の動詞

282. 妨害、抵抗、拒絶を示す動詞 impedire, 妨げる; interdicere, 禁ずる; recusare, 拒む; obstrare, resistere, に抵抗する; deterrere, をひるがえさせる等の動詞は接続法命題を要求する。

283. 規則 -- これらの動詞の後、附属命題は次の接続詞によって引き出される。

ne @
quin @
妨害を示す動詞が肯定の時。
:Id impedit "ne proficiscaris".
そのことが君の出発を妨げている。
妨害を示す動詞が否定又は疑問の時。
:Quid obstat "quin proficiscaris"?
何が君の出発を妨げているのか?

@ Quominus ne, quin の代わりに特に impedio と共に用いられる。

3.恐怖の動詞

284. 恐怖、危惧を示す動詞 timere, metuere, vereri 等の動詞又は periculum est, の恐れがある、は接続詞命題を要求する。

285. 規則 -- これらの動詞の後、附属命題は次の接続詞によって引出される。

ne
ne non @
附属命題の動詞が肯定の場合。
:Discipulus piger timet "ne" se
magister "castigat".
対だな聖徒は先生が鞭打つのではないかと
(打つことを)恐れる。
附属命題の動詞が否定の場合。
:Pius filius timet "ne non" pater
suus morobo "convalescat".
孝行な子供は父が病より恢復しないのでは
ないかと(恢復しないことを)恐れる。

@ 恐怖の動詞の後、時々 ne non の代わりに ut が用いられる。

286. 特殊な和文羅訳 -- 恐れるという動詞は常に timeo によって訳されるのではなく、その意義に従って次の様にも訳される。

躊躇する(せぬ)を意味する時
敢えてせぬ(する)を意味する時
Dubitare(或は non dubitare)+不定
法現在によって訳される。
:Fateri "non dubitat"
告白するを恐れぬ(躊躇せぬ)。
Non dubitare(或は audere )+不定
法現在によって訳される。
:Dicere "non audeo".
言うことを恐れる(敢えてせぬ)。

p. 134

III -- 間接疑問命題

287. 基本概念 -- 疑問は次の様に示される。
1。)直接には"汝は何をしているか?"[これは直接疑問であり、独立命題によって表わされている]。
2。)間接には"汝が何をしているかを私は尋ねる”。[これは間接疑問であり附属命題によって表わされている]。

288. 間接疑問の補足命題は scire, 知る;intelligere, 理解する;quaerere, 尋ねる;dicere, 言う;scribere, 書く、等の様な思想又は陳述を表わす動詞に附属し、一つの疑問詞によって引出される。

289. 備考 -- 尚、間接疑問は或る名詞又は形容詞、conscientia, inscius, memor 等と、或る表現句 quid est cur, quid est causae cur, ...にはどんな理由があるか;nihil est cur, ...には理由がない等と共にも構成される。

290. 疑問詞 -- 間接疑問を引出す語には次の如きものがある。

1。代名詞或は形容詞

Quis, 誰が;
qui, どんな;
quid, 何が;@
uter, 二つのうち何れ;
qualis, どんな;
2。副詞

Cur, 何故;
quo, ubi, 何処;
quando, 何時;
quomodo, どのように;
quam, どれほど;
3。疑問小辞

単純疑問:NumA或は-ne...か;
単純疑問:nonne, ...ないか;
二重疑問:Utrum ...an, か或は...か;
二重疑問:-ne...an, か或は...か;
二重疑問:utrum...necne, Bか...否か;
@ ...ことは、...ことをに疑問がかかる時には、接続法と疑問視quid を以て訳するが、も
し疑問がかからない時には直説法と関係代名詞又は関係形容詞 quod とを以て訳する。例:Dic
quid velis, 望むことを言いなさい;Proba quod dixisti, 汝が言ったことを証明せよ。
A 間接疑問に於て num ne との間に意味の差異はない。
B Necne は間接疑問に於ては annon よりも頻繁に使われる。

291. 法 -- 思想、陳述を示す動詞に、疑問詞によって附属している凡ての命題はその動詞を接続法におく。
:Scio cur "veneris",私は何故汝が来たかを知っている。

292. 時称 -- 疑問命題の動詞をどんな時称におくべきかを知るには以下のことを見なくてはならぬ。
1。主要動詞の時称。 2。附属動詞の行為の相対時間。

p. 135

293. 時称の一致 --

もし主要動詞が

1。現在か或は
二つの未来
の中の一つ
であれば、
.
.
.
.
.
2。過去の時称
の中の何れ
かであれば、
.
.
.
.
.
.
.
.
.
附属動詞の相対時間

a)同時の時
.
.
b)以前の時
.
.
c)以後の時
.
.
a)同時の時
.
.
.
b)以前の時
.
.
.
c)以後の時
.
.
.
接続法の時称

a)現在
(全般的一致
n. 271)。
b)過去
(全般的一致
n. 271)。
c)-urus sim の形
(全般的一致の
例外)。
a)半過去
(全般的一致
n. 271)。
.
b)大過去
(全般的一致
n. 271)。
.
c)-urus essem
の形(全般的一
致の例外)。
.

Scio(sciam) quid "agas".@
私は汝が為していることを知ってい
る(知っているだろう)。
Scio(sciam) quid "egeris"
私は汝が為したことを知っている
(知っているだろう)。
Scio(sciam) quid "acturus sis".
私は汝が後に為すだろうことを知っ
ている(知っているだろう)。
Sciebam(scivi, sciveram) quid
"ageres".
私は汝が為していることを知ってい
た(私は知った、既に知っていた)。
Sciebam(scivi, sciveram) quid
"egisses".
私は汝が既に為したことを知ってい
た(私は知った、既に知っていた)。
Sciebam(scivi, sciveram) quid
"acturus esses".
私は汝が(後に)為すことを知って
いた(知った、既に知っていた)。
@  私は何を為そうか知らぬ nescio quid "agam"となる。何となれば疑念的接続法
(n. 194)は、-urus sim, essem によって訳されないからである。
A この規則によって彼は良心の呵責の力が如何なるものなるかを示した(過去)はOstendit
quanta conscientiae vis "esset".と訳される。

294. 備考 -- 相対的時間が以後の場合に於て -urus の形がない動詞は全般的一致の規則に従う(n. 271)。即ち、

目的分詞のない動詞
受動詞
:Quaero num eum "paeniteat".@
私は彼が後悔するだろうか否かを聞い
いている。
:Quaerebam num "puniretur".
私は彼が罰されるだろうかと自問して
いた。

@ Mox, brevi, 間もなくを加えることができる:quaero num eum "mox paeniteat".

p. 136

295. 間接疑問に於る設若文 -- 和文羅訳に於ては設若文を構成する前に、この条件に可能又は事実の反対の何れの意味があるかを考慮しなければならぬ。[ここでは結題の規則と共に条件文の規則を掲げる]。

もし直接疑問に於て
以下の時称にあるならば
接続法現在
(可能)
Quid agat,
si adsit?
もし彼が列席すれば
何を為すか?
.
.
.
接続法半過去
(現在の時事の反対)
Quid ageret,
si viveret?
もし彼が生きているならば
何を為すだろうか?
接続法大過去
(過去の事実の反対)
Quid egisset,
si vixisset?
もし彼が生きていたならば
何を為しただろうか?
.
.
.
.
間接疑問に於ては
主動詞の
1。現在と共に。
.
.
.
2。過去と共に。
.
.
.
.
現在又は過去
と共に。
.
.
.
.
1。現在と共に。
.
.
.
.
2。過去と共に。
.
.
.
.
.
.

結題は -urus sim の形をとり、
条件文は現在に止まる。
Scio "quid acturus sit", "si adsit."
私はもし彼が列席すれば何を為すかを知っている。
結題は -urus essem の形をとり、
条件文は半過去におかれる。
Sciebam "quid acturus esset", "si ades-
set"私はもし彼が列席すれば何を為すかを知
っていた。
結題は半過去の儘に残り、
条件文も同様である。
Scio (sciebam) "quid ageret", "si
viveret".
もし彼が生きていたならば、何を為すだろうかを
私は知っている(知っていた)。
結題は -urus fuerim の形をとり、
条件文は大過去の儘に残る。
Scio "quid acturus fuerit", "si vixis-
set".私はもし彼が生きていたならば、何を為したで
あろうかを知っている。
結題は -urus fuissem @の形をとり、
条件文は大過去の儘に残る。
Sciebam "acturus fuisset, quid", "si vixis-
set".もし彼が生きていたならば、何を為したで
あろうかを知っていた。
@  Titus Livius は主動詞が過去の場合でも屡々 fuerit を用いている。

296. 備考 -- もし -urus の形がない時は条件文の一般規則が守られる(n. 149)。即ち、

可能の場合@

Scio cui rei "stude-
at," si "habeat" li-
bros.
もし彼が書物を持ってい
るならば、彼が何を勉強す
るかということを、私は知
っている(そして彼はそれ
を他日持つことができる)。
現在の事実の反対の場合

Scio(或は sciebam)cui
rei "studeret, " si "habe-
ret" libros.
もし彼が書物を持っているなら
ば、彼が何を勉強するだろうかと
いうことを私は知っている(或は
知っていた)。
.
過去の事実の反対の場合

Scio(或は sciebam)cui
rei "studuisset, " si "ha-
buisset" libros.
もし彼が書物を持っていたなら
ば、彼が何を勉強したであろうか
ということを私は知っている(或
は知っていた)。
.
@ 但し、可能の場合に於ても主動詞が過去であれば現在の代りに半過去を用いる。即ち、
"Sciebam" cui rei "studeret", si "haberet" libros.

p. 137

間接疑問についての補註

297. 間接疑問文の種類 -- 間接疑問文は単純疑問か或は二重疑問かである。

1.単純間接疑問

298. 疑問詞の用法。

Num@

疑問或は疑念を示す為
に用いられる。
:Milites speculati
sunt "num" hostes
advenissent.兵士達は
敵が到着したか否かを調
べた。
Ne

Num と同じ意味で使われ
る。然し疑問の言葉に附加
される。
:Rana interrogavit
"latiorne" esset bove.
蛙は牛よりも大きいかと尋
ねた。
Nonne

...ではないのか Aを訳す為に用いられ
る。然しこれは動詞 quaerere の後にし
か用いられない。
:Quaesieras "nonne" putarem
...貴方は私が考えていたのではないかと
お尋ねになった。
.
@ 間接疑問 num は直接疑問の場合と違って否定の意味を引出さない。
A 然し、dubito, nescio 等(n. 229 参照)の表現句の後では、...ではないか an
よって訳される。

299. An の特殊用法 -- Dubito, haud scio, nescio の動詞及び dubium est, incertum est の表現句の後に使われて、

an (多分)
an non (多分...ない)
軽い肯定を示す。 例:"Nescio an" dormiat.@
彼が眠っていないのか私は知らない;
彼は多分眠っているであろう。
実際の疑いを示す。 例:"Dubio an non" venturus sit.
私は彼が来るかを疑う;
多分彼は来ないだろう。
@ 或は forsitan dormiat(forsitan は特に古典では接続法を要求する)。
A 或は意味に従って an nihil, 多分何もない;an nemo, 多分誰もないが使われる。
:Haud scio "an nihil" impetraverit.多分彼は何も得なかったであろう。

300. 否定的 dubitare の構文法 -- もし dubitare が否定或は疑問を伴っていれば、ということを quin と接続法(間接疑問の一致の規則、n. 293)を以て構成される。
:Quis dubitat "quin" virtus amabilis sit?
誰が徳は愛すべきであるということを疑うのか?

301. 備考 -- フランス語の "se douter" は予測する、憶測するを意味するのであって、suspicari 或は praevidere と不定法とを以て訳される。
:Rem male cessuram esse "suspicabar".
Je me doutais que la chose irait mal.
私は事が悪く行くだろうと予測していた。

p. 138

302. 名詞を形容する動詞は間接疑問によって訳される -- もし主動詞が間接疑問を引出す動詞であるならば、一般に関係命題の代わりに間接疑問文を用いる。例:Quis nescit "quae fuerit" in re publica tempestas illa?
共和国の上に起こったあの嵐(が如何なるものであったか)を誰が知らないのか?

303. 偽疑問 -- Nescio quis, nescio quomodo, nescio quando 等の語法は度々 或る人、或る方法を以て、或る時は等の不定代名詞又は副詞の意味を有する。(nescio quisaliquis; nescio quomodoaliquo modo; nesucio quandoaliquando)。それ故これらは何等の間接疑問をも引出さない。
:Nescio quem "misit".彼は私が知らない人を遣った。

2.二重間接疑問

304. 二重直接疑問(n. 172)と同様に、間接疑問には、普通二重と釈明二重との二つがある。

A)普通二重
B)釈明二重
1。第一部に於ては utrum 或は ne が使わ
れる。(ne は疑問におかれる語に附加される)。
2。第二部に於ては an が使われる。もし
否定の場合には necne @が使われる。
:Nescio "utrum" dormiat "an" vigilet.
Nescio "dormiatne" "an" vigilet.
私は彼が眠っているか、醒めているかを知ら
ぬ。
Parum curo "utrum" me vituperet
"necne".
私は彼が私を叱るか否かを殆ど気にしない。
1。疑問の第一部に於ては概して uter
適当な形を用いて、其の疑問命題の冒頭にお
く。
2。説明たる二重疑問に於て第一語の後に
-ne を附加し、第二語の前に an をおく。
:Nescio "uter" sit doctior, "tu-
ne" "an" frater tuus.私は二人の中ど
ちらが、より学者であるかをしらない。
貴方ですか或は貴方の兄弟ですか。
Dic mihi "utrius" intersit "meane"
"an" Pauli.誰に大切なのか私に言え、私
にか、或はパウロにか。
@ 一般に annon は直接疑問に於て用いられる。

305. 疑問詞の省略 -- 疑問詞は二重直接疑問の場合よりも、屡々省略される。

Utrum 或は ne
第一部に於て省略されることがある。
この場合-ne
第二部に於ける an の代りとすることがある
:Sine sciam ad hostem "an"
ad filium venerim.
私が敵に出会うのか、或は我が子に出会う
のか私に教えなさい。
:In incerto erat vicissent "vic-"
tine" essent.
彼等が征服者であったか、或は被征服者で
あったかを人々は知らなかった。

p. 139

補足文に関する補足

I.間接説話

306. 或る人の言葉は二通りの方法を以て述べられる。

1。直接に
2。間接に
:Paulus dixit: "Paratus sum".
パウロは "私は準備した"と言った。
:Paulus dixit se paratum esse.
パウロは自分が準備出来たと言った

307. 直接説話と間接説話との相違 -- 一つの文を直接説話より間接説話に移すには多くの変化が行われる。
1。)命題と法に於て、 2。)時称に於て、 3。)人称において。

1。-- 法と命題とに於ける変化

308. 原則 -- ラテン語に於て間接説話に於て用いられる法は、不定法又は接続法のみである。

1) 直接説話の主文の置換

309. 主文@(或は独立命題)は、表示、意志、或は疑問命題であり得る。間接説話に於ては次の如く訳せられる。

310. 表示命題は

直接説話に於て
間接説話に於て
注意
直説法におかれる。
:"Volo" pugnare.
私は戦いたい。
:Primus "ibo" .
最初に行こう。
不定法におかれる。
:Dicit se "velle" pugnare.
彼は戦いを望むと言っている。
:Dicebat se primum "iturum esse".
彼は最初に行くだろうと言っていた。
不定法命題の時称の
一致を守らねばならぬ
(n. 247)。
.
.

@ 主文の同位命題(enim, autem, tamen 等によって結ばれた)は、間接説話に於て主文の規則に従う。

:Fugiebdum est, "nam" periculum instat. 危険が近づいて居るから逃げなければならぬは間接話法に於ては:dicebant fugiendum esse, "nam" periculum instare.となる。

p. 140

311. 意志命題は

直接説話に於て
間接説話に於て
注意
1。命令を表わす為には、
a) 第二人称に与えられた命令に対しては命
令法による。n. 185.
:Ite, create consules.
行って領事を任命せよ。
b) 他の人称に与えられた命令は、接続法現
在におかれる。n. 185.
:Aspiciat exercitus.
軍隊が了解せんことを。
2。禁止を表わす為には、
a) Noli (nolite)先行された不定法に、或
ne に先行された接続法過去におかれる。
n. 186.
:Noli abire 或は ne abieris.
出発するなかれ。
b)他の人称(二人称以外の)に於ては ne
に先行された接続法現在におかれる。n. 186.
:Ne exeat.
彼は外出しない様に。
1。命令の為には直接説
話に於ける人称に関係せず
常に接続法におかれる
:Dicebat irent,
crearent consules.
彼は彼等に、行きて領事を
任命せよと言っていた。
Dicit aspiciat exer-
citus.彼は軍隊が了解せ
んことをと言う。
2。禁止の為には直接説
話に於ける人称に関係せず
常に接続法におかれる。
:Dicit ne abeat.
彼は彼に出発しない様に言
う。
Dicebat ne exiret.
彼は彼が外出しないと言
っていた。
もし主動詞が現
在にあるならば、
現在或は過去が使
用され、もし過去
にあるならば、半
過去あるいは大過
去が使用される。
n. 271.
命令を表わす為
には一般に ut
省略される。
Ne は常に略さ
れない。第二禁止
を第一禁止に結ぶ
ためには、 neve
が用いられる。
n. 187, 3。
.
.

312. 疑問命題は真の疑問又は弁術的疑問を表わし得る。

313. 真の疑問は

直接説話に於て
間接説話に於て
注意
直説法によって表わされる@
:Quid vis?
君は何を望むか?
接続法によって表わされる。
:Interrogavit quid "vellet".
彼は何を望むかと尋ねた。
間接疑問に於ける
時称の一致。
n. 293.
@ 直説説話に於て接続法(疑念 n.194; 反駁 n. 195 等)にある命題は間接説話に於ても其
の儘接続法に留まる。

314. 弁術的疑問は

直接説話に於て
間接説話に於て
注意
直説法によって表わされる@
:Quid est turpius?
より恥ずべきものは何であるか?
通常不定法によって表わされる。
:Quid "esse" turpius.
より恥ずべきものは何ぞ、と。
表示的命題の規
則@(n. 310)。
.
@ 実際には何が最も恥ずべきものか?何も恥ずべきものはないと同義であり、また其は明白
ではないか?其は全く明白であると同義である。

p.141

2) 直接説話の附属文の置換

315. 附属文は

直接説話に於て
間接説話に於て
注意
1。直説法にあることがあ

Bestiolae quaedam nas-
cuntur "quae" unum diem
"vivunt".
一日しか生きない或る虫が生
れる。
Fugiendum est quia pe-
riculum "instat".
危険が迫るので逃げなければ
ならない。
Quoniam a Caesare "vic-
ti sunt", stipendiarii facti
sunt.
チェザルに負けたので朝貢者
になった。
2。接続法にもあることがあ

Ita didicimus "ut" ma-
gis virtute quam dolo
"contendamus".
我等は詭計よりも勇気によっ
て戦うことを学んだ。
1。一般に接続法におかれる。
Aristoteles ait bestiolas
quasdam nasci, "quae" unum
diem "vivant".
アリストテレスは日しか生きな
い或る虫が生れると言う。
Dicebant fugiendum esse
quod periculum "instaret".
危険が迫るので逃げるべきである
と意って居た。
Fama erat eos, quoniam a
Caesare "victi essent", sti-

pendiarios factos esse.
彼らはチェザルに負けたので、朝
貢者となったとの噂があった。
2。常に接続法におかれる。
Dixerunt se ita didicisse
"ut" virtute magis quam
dolo "contenderunt".
我等は詭計によってよりも勇気に
よって戦う様に学んだと言った。
.
.
1。然し次の場合、直説
法におかれる。
a) 関係命題が名詞の意
義をもつ時:Putabat ea
"quae gesserat" pos-
se celbrari.
自分の功績が称揚される
であろうと思っていた。
b) 関係命題が、作者自
身の考えを示す時:Aris-
toteles ait, ad Hypanim
"qui influit" in Pon-
tum, nasci bestiolas...
黒海に注ぐヒパニス河の辺
りに虫は生れるのであると
アリストテレスは語る。
2。直接説話の接続法が
その儘間接説話に於て残る
としても、その時称には時
称の一致の規則に従って変
化が有り得ることを注意し
なければならない(特に主
動詞が過去にある場合)。
@ 例えば、直説法を要求する接続詞或は関係代名詞の後で。
A 例えば、接続法を要求する接続詞に、或は目的、理由を示す関係代名詞の後で。

316. 接続法に於ける未来の概念

未来の概念は-urus
助動詞によって表わされる
未来の概念は示されない

注意

1。間接疑問命題に於て。
2。理由命題に於て。
3。結果命題に於て。
1。- sequitur ut;の後。
2。- non dubio quin の後。
他の命題即ち条件、時間
限定関係命題に於て。
.
.
.
-urus に終る形がない場合
(受身動詞と目的分詞とを有しな
い動詞に於て)は、時称の全般
的一致のみを守る。
.

p.142

2。-- 時称に於ける変化

317. 一般原則

直接説話の表示命題の場合
直接説話の附属文の場合
間接説話に於ては不定法命題の一致の規則
n。247 によって時称を決める。
間接説話に於ては接続詞命題の一致の規則
n。271 によって時称を決める。@

@ 間接説話が普通過去の動詞に属するのでその時称は殆ど半過去と大過去しか用いられない。

318. 実際には間接説話の附属文において

直接説話の現在、半過去、単純未来は
直接説話過去、先立未来、大過去は
1。半過去におかれる。
2。大過去におかれる。

319. 時称の一致の規則の適用。

次の直接説話は
間接説話に於て次の如くなる
Si pacem populus Romanus "fa-
ciet"(単純未来)、in eam partem
"ibimus"s-(表示命題、310)atque ibi
"erimus"(同位表示命題、310, n. 1)ubi
nos esse "volueris"(先立未来);sin
bello persequi "perseverabis"(単純
未来),"reminiscere"(命令、311, 1。)
veteris incommodi populi Romani.
Quod improviso unum pagum "ador-
tus es"(過去), cum ii qui flumen
"transierant"(大過去)suis auxilium
ferre non "possent"(315, 2+318,1),
noli(禁止、311,2。)ob eam rem nos
"despicere".
Quare ne "commiseris"(禁止、311,2。)
ut is locus ubi "constitimus"(315,1。)
ex calamitate populi Romani nomen
"capiat"(315, 2。).
.
[Dixit] Si pacem populus Romanus
"faceret"(315+318,1)in eam par-
tem "ituros"(310)atque ibi "futu-
ros"(310)atque ibi "futu-
ros"(310, n.1);Helvetios ubi Caesar
eos esse "voluisset"(315,1。+318,2。);
sin bello persequi "perseveraret",
(315+318,1。)"reminisceretur"(311,1。)
veteris incommodi populi Romani.
Quod improviso unum pagum "ador->
tus esset"(315,1。+318,2。)cum ii qui
flumen "transissent"(315, 1+318,2。)
suis auxilium ferre non "possent"
(315,2。+3182。), ne ob eam rem ipsos
"dispiceret(311,2。)
Quare ne "comitteret"(311,2。)ut
is locus ubi constitissent(315,1.+
318,2。)ex calamitate populi Romani
nomen "caperet"(315,2。+318,1。)
もしローマ人等が我々と和を結ぶならば、我々は貴方が欲する所の住処を定め、そこに住むで
あろう。然しもし貴方が我々と戦をなすことを固持するならば、貴方はローマ人達の嘗ての不幸
を思い出し給え。
貴方が独立した一群の人々を襲撃したが、その時他の者は河を渡っていたので彼等に救助をも
垂らすことが出来なかった、それ故貴方は我々を軽蔑すべきではない。
それでローマ人達の敗北によって、我々の居るこの土地が有名となる様な軽率な態度を取らな
い様にと[ディヴィゴはチェザルに]言った。

p.143

320. 一致の規則の例外 -- 時称の一致の全般的規則に従えば半過去又は大過去であるべき古典ラテン文中では、接続法の現在又は過去を用いた例を見出すことがある。

チェザルは次の様に書いた:
然し規則通りの時称は
[Respondit] Cum ea ita "sint", tamen si obsides
ab iis sibi "dentur", uti ea, quae "polliceantur,"
(eos) facturos "intelligat," et si AEduis de injuriis,
quas ipsis sociisque eorum "intulerint,""satisfa-
ciant" sese cum iis pacem esse facturum.
.
Essent,
Darentur,
Pollicerentur,
Intelligeret,
Intulissent,
Satisfacerent,
チェザルはそれにも拘らずもし彼等が約束を実行することを確証する為に人質を与え、又もし
エドイ人及びその同盟国人等に加えた不義を償うならば自分が彼等と和を結ぶだろうと答えた。

3。人称の変化

321. 原則 -- 間接説話では殆ど常に第三人称のみを用いる。

322. 再帰形容代名詞 -- n. 157 及び n. 162 の規則に従う、即ち、

Sui, sibi, se
或いはsuus, sua, suum
の適当な格を用いる。
Is, ea, id の適当な格
或はeius, eorum, earum
を用いる。
直接説話に於てもし一人称の代名詞又は形
容詞がある時。
:"Mihi" nullum est auxilium et
verba "mea" contemnuntur.(私に何
等の助けもなく、私の言は軽んじられる)は
間接説話に於ては次の如くなる。
Dicit "sibi" nullum esse auxilium
et verba "sua" contemni.
直接説話に於てもし二人称、三人称の代名
詞又は形容詞がある時。@
:"Ei" nullum est auxilium et
"eius" verba contemnuntur.(彼に何
等の助けもなく、彼の言は軽んじられる)は
間接説話に於ては次の如くなる。
Dico "ei" nullum esse auxilium
et verba "eius" contemni.
@ 然し、n. 158, A) 1。の規則を忘れてはならぬ(所有者が同一命題の主語である時)。
:Hannibal Scipionem adhortatus est ne (Scipio) victoriarum "suarum"
splendore obcaecaretur.
ハンニバルはシピオに自分の勝利の光栄によって傲慢にならない様に注意した。

323. 備考 -- n. 321 に記された原則に反して、作者がもし自分に就て語るならば、第一人称を、又或る人に作者が直接に語る場合には第二人称を用いる。
:Confessus est Atticus se "tibi" litteras "meas" exhibuisse.
アッチクスは私の手紙を貴方に見せたと告白した。

p.144

2.広義の間接説話

324. ラテン文に於ては屡々直接説話にあっても接続法におかれた附属文を見出すことがある。其等は陳述又は思想の動詞に属していないけれども、作者の考えではなく、他の人の考えを言い表わすものである。特に次の様な附属文の場合:

1。関係命題
2。理由状況命題
:Praetus libros quos frater suus
"reliquisset" mihi donavit.
ペトゥスは私に本を与えた。その本は彼の
兄弟が彼に残したものだと意っていた。
:Noctu ambulabat Themistocles
quod somnum capere non "posset".@
テミストクレスは夜散歩していた。それは
眠ることが出来ないからだと言って居た。
@ 接続法 posset は、テミストクレスから述べられた理由を表わす。チチェロは自分の考え
を示す為には直説法 poterat を使うべきであった。

3.法の模倣

325. 原則 -- 間接説話でなくても、規則的には直説法であるべき附属文も、もしそれが接続法或は不定法命題に従属するならば、屡々接続法におかれる。

326. 原則の適用 -- 法の模倣は義務的な場合と、ただ可能なる場合とがある。

1。義務的な場合
2。可能なる場合
もし附属文によって表わされた概念が主文
たる接続法又は不定法の概念を完成するため
に是非必要である時@。
:Mos est laudari eos qui in proe-
liis "sint interfecti".
戦いに於て殺される者が賞讃されるのは習慣
である。
.
附属文が独立した一つの事実を示す時(即
ち接続法或は不定法命題によって示される概
念に無関係に、作者によってその事実が示さ
れる時)。
:Accidit ut nonnulli, qui "disces-
sissent" interciperentur.
静れていた少数の者が捕まえられるというこ
とが起こった。
@ 特に限定されたものがない時、主語が不定なる時。
:Indignum est eum qui culpa "casreat" supplicio non carere.
罪を犯さなかった者が罰されることは不適当である。
然し、Indignum est "hunc" hominem qui culpa "caret" supplicio non
carere.と言う。それは一般的断言ではなく、特殊の出来事を述べるからである。

327. 備考 -- 和文羅訳に於てもし附属文が主文の概念に無関係であり、特にもし作者によって加えられた説明的挿入句の如きものである時は、直説法を使った方が良い。

p.145

第六章 -- 奪 格(状況補語)

328. 単独に、或は前置詞と共に用いられた奪格は概ね状況補語である。

第一項 -- 状況補語たる語

329. 前置詞無しの奪格 -- 次の状況補語を前置詞なしに単に奪格におく。

状況
備考
1。道具
.
2。手段
.
.
.
3。価格
.
.
.
.
4。差異
.
.
.
5。原因
.
.
.
.
.
.
6。観点
.
7。方法
.
.
.
.
.
.
.
.
.
Interficere "gladio".
剣を以て殺す。 "Precibus" impetrare.
祈りによって得る。
Discere "legendo".
読んで学ぶ。
Multo "sanguine" victoria
eis constitit.
彼らは多くの血を払って打勝った。
"Magno" emere.
高く買う。
"Capite" superare.
頭の高さ丈け、より高い。
"Dimidio" minor.
半分小さい。
"Fame" interiit.
飢えで死んだ。
Paene ille "timore", ego
"risu" corrui.
彼は恐れで、私は笑いで殆ど死の
うとしていた。
"Scientia" vincere.
学問で優る。
1) 方法を示す補語が修飾或は限定
されている場合: "Magna voce" loqui.
高い声で話す。
2) Jure, 正しく;
iniuria, 不正に;
modo, 節度を以て;
dolo, 狡猾に,等に於て。
.
.
然し ingredi "cum" gladio=剣を持って入
る(同伴、n.330,2。参照)。
もし人である場合 per と対格におく:
Hanc tibi "per patrem" epistolam mitto.
貴方の父に頼んで貴方に手紙を送る。
価格を示す動詞と共に、magno, 高く;maximo,
大変高く;parvo, 安く;nihilo, 唯で、を用いる。
然し対語たる副詞は属格の形をとる、即ち、
tanti...quanti, それ程高く;pluris...quam
より高く(p.173 参照)
比較級又は最上級を修飾する副詞は奪格の形をと
る(p. 172 参照)。
"Multo" maior,より大変大きい。
"Multo" maximus.はるかに大きい。
或る行為を強いる理由は propter と共に対格に
おかれる。
Eum "propter humanitatem" amo.
彼を親切のために愛する。
行為を妨げる理由は prae と共に奪格におく。
"Prae lacrimis" loqui non potest.
涙のために話されない。
Servus "a pedibus." 供廻り;"e re pub-
lica" est, 国運に大切である、等の表現句。
1) もし補語が修飾或は限定されていない場合は次
の如く表現し得る。
a. cum奪格
"Cum cura" scribere.注意深く書く。
b.適当な意味の方法の副詞によって
"accurate" scribere.
2) 補語が修飾或は限定されていても、cum が用
いられていることが稀にある。
Multis "cum" lacrimis obsecrare.
多くの涙を流して願う。

p. 146

330. 前置詞と共に用いられる奪格 -- 次の状況を示す補語は前置詞と共に奪格におかれる。

状況
備考
1。同伴
cum
.
.
.
.
2。出生
ex或はab
.
.
.
.
.
.
.
.
.
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.
.
.
.
3。出所
ex, ab, de
.
.
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.
.
Venit "cum matre".
彼は母と共に来る。
Dux progreditur "cum sex-
centis equitibus".
将軍は六百騎と共に前進する。
.
1) 補語が事物の名詞である時は常
ex と共に:
Honestas exoritur "ex vir-
tutibus".
名誉は徳に由来するものである。
2) 人の場合、補語が直接起源(父
母)を示す時には、一般に ex と共に:
"Ex Scipione" natus.
シピオより生れた。
Nati "ex bestiis".
禽獣より生れたもの。
.
3) 補語が非直接起源を示す時には
一般に ab と共に:
Ortus "ab Catone"
カトー家出身の。
1) 補語が事物の名詞である時は
ex と共に:
"Ex litteris" cognoscere.
手紙によって知る。
Gaudium capere "ex sutudio"
-- "ex discendo".
勉強に興味をもつ。
.
2) 補語が人物の名詞である時には
ab, ex,又は de と共に:
Hoc "a te" exspectat.
彼は之を汝より期待している。
Id "a me" petivit.
彼は私にそれを願った。
"Ab amico" audire.
"Ex amico" audire.
友から聞知する。
1) 補語が将軍を伴う軍隊を示す場合には cum
は必要ではない:progreditur "ingenti
exercitu".
2) 然し、その場合と雖も、もし補語が数詞に
よって修飾されるならば、cum を用うべ
きである。
1) 或る物の材料を示す補語はこの規則に準ず
る:vas "ex auro" 又は vas aureum, 金
の器物(但し ex は材料を示す補語が形容詞
を伴っている時は必ず用いられる:vas "ex
auro solido.(n. 205, 2 参照)。
2) 次の場合には ex を省いてもよい。
a-) 補語が形容詞を伴っている時:nasci
"patre ignoto".賤しい父より生れる。
b-) 補語が分詞 natus の補語である時:
natus "Assaraco". アッサラコの子、但し
単独の人称代名詞の前にては ex は必ず用い
られる。
3) 家族、民族、地位等の語は之等が ortus,
natus 或は之等の分詞の複合時称の補語であ
る時には、前置詞なしに奪格におかれる。"no-
1) から汲む、から取る、から判断する、によっ
て知る等の動詞はこの規則に従う。
haurire( ex 又は de),から汲む;
sperare (ex),から希望する;
exspectare (ex, 稀に ab),から期待する;
cognoscere (ex),から知る;
capere (ex),から取る、引く;
sumere (ex),から取る、引く。
2) 願う、聞く、待つ、獲得する、買う等の動
詞はこの規則に従う。
sperare( ab 又は ex),から希望する;
emere (de 又は ab),から買う;
quaerere (ex, ab, de),に願う;
cognoscere (ab, ex) から聞く;
audire (ab, ex, de) から聞く。
Audire de aliquo も亦、或るものについ
て聞く、との意味をもつこともある。)

p.147

4。分離
(奪格のみ又
ab+奪格)
.
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1) 補語が事物の名詞である時、
a- 解放する、贖う、奪う等を意味
する動詞又はそれと同意の形容詞
は前置詞なしに奪格を要求する。
Obratus "dignitate".
品位を失墜した。
Liber "cura".
心配に拘泥しない。
.
.
.
.
b- から離す、から排斥する、から
隔てる、から守る、から区別する、
から異る等を意味する動詞及びそ
れと同意の形容詞は ab と共に奪
格を要求する。
Deterrere "a scibendo".
書くことを中止させる。
Tutus "a periculo".
危険より守られた。
.
.
.
.
2) 補語が人物の名詞である時には
上記の如き動詞及びそれと同意の
形容詞の後には ab と奪格とを用
いる。
Aliquem "ab inimicus" li-
berare.
或者を敵より救出す。
Est "a ceteris" longe di-
versus.
他の者とは大いに異なっている。
.
.
.
1) この規則に準ずる動詞は、下記の如くである。
a) 前置詞なしの奪格を要求するもの。
orbare,奪う;
nudare,はぎ取る;
spoliare,はぎ取る;
liberare(時としては ba, ex), から解放する;
redimere,から贖う;
levare,から自由にする;
exonerare,軽くする;
solvere,を解く;
exsolvere,から取除く;
vacare(稀に ab), 免除する;
b) ab を要求するもの。
separare,(稀には ex),から離す;
secernere,(稀には ex),から離す;
arcere(或は奪格のみ), から離す;
distare,から遠くにある;
differre,から異なる;
desistere,(時としては ex又は奪格のみ),
断念する;
movere(時としては de, ex), から遠ざける;
prohibere(又は奪格のみ), 思い止まらせる;
seiungereから分離する;
se abstinere,を慎む;
temperare,を制御する;
2) 然し、nudare, orbare, を欠かせる、は前
置詞なしに奪格における:nudare murum
"defensoribus,"城壁の防御者を排除する。
奪格を意味する動詞:auferre, から奪う;
avellere, から引抜く; eripere, から奪う
は補語たる名詞を与格におく:eripere ocu-
los "alicui",或る者の眼をえぐりとる。
Interdico は人物の名詞を与格に、事物の名
詞を奪格におく: interdico "tibi" "domo"
mea. 私は汝が私の家に入るのを禁ずる。--
受動形の時には、この動詞は寧ろ非人称動詞にす
る: mihi aqua et igini "interdicitur".
私は水と火との供給を断たれた。。

331. 充満、相応、感情を示す動詞及び形容詞の補語は奪格におく。

充満@
相応

感情A

Abundat "divitiis".
財宝で一杯である。
Puer "virtute" praeditus.
徳を具えた子供。
Dignus est "laude".
賞讃に相応しい。
Indignus "patre".
父に似ない。
Gaudeo "sorte" tua.
汝の運命を喜ぶ。
Superbus "origine".
生れを誇る。

@ 欠乏を示すものも同様奪格を要求する。n. 330, 4.

A これらの動詞の補語は de 又は in と共にも構成される:dolere "de morte" fratris.

p. 148

332. 次の六つの受動形能動詞は(道具の)奪格を要求する。

Frui (otio),(休みを)楽しむ;
vesci (pane), (パンを)食べる;
uti (ense), (剣を)使う;
niti (hasta),(槍に)凭れる;
fungi (munere), (務めを)果す;
potiri @(urbe), (町を)占領する。
@ Potiri "rerum", 最高権を占める、を除いて、potiri が属格を要求することは極く稀 である。

333. Opus esse の補語 --

一般に
時として
必要とする人物の名詞を与格、必要とされ
る事物(又は人物)の名詞を奪格におく。
Opus est "mihi" "duce",-- "con-
siliis".私は指導者を必要とする -- 意見を
必要とする。
必要とされる事物の名詞は
a- 主格におかれる:Opus est "dux";
b- 属格におかれる:Opus est "ducis".
[但し、この後者は古典文には見られない。]
.

場所を示す状況補語

334. 場所を示す状況補語は次の四つの質問に答えるものである。

Ubi (es)何処に汝が居るか? Quo (vadis)?何処へ汝が行くか?
Unde (venis)?何処から汝が来るか? Qua (iter facis)?何処を通って汝が行くか?

1.Ubi(何処に)?の質問に対して。

335. 一般規則 -- この質問に対しては或は前置詞と共に、対格又は奪格により、或は奪格のみにより、更に又地格によって答えられる。

336. 前置詞と共に構成される補語

In
Ad 又は apud
Apud
居る場所@又は或る行
為がなされる場所を示すに
in と奪格とを用いる。
Sum "in urbe".
私は町に居る。
Commorari "in Sici-
lia".シチリアに滞在する。
場所の近くを示すには ad
又は apud と共に対格を用い
る。
"Ad"(又は apud"Za-
mam" Romani vicerunt.
ローマ人はザマの附近で勝
利を占めた。
或る人物の傍を示すには apud
(時として ad)と共に対格を用
いる。
Cenabam "apud patrem".
私は父のうちで夕食をとった。
"Apud me" habitavit.
彼は私の家に住んだ。
@ 色々なものが具体的に場所を示さなくとも、場所を示すものとして取り扱われる。
Multi "in eligendis amicis" negligentes sunt.
多くの人々がその友の選択に於て無関心である。

p. 149

337. 前置詞を伴わない奪格の補語

町の固有名詞
Locus
他の名詞
もし居る場所の名詞が町或は小
さな島@を指し、且つ第三変化か
或は複数かであるときは前置詞な
しの奪格を使用する。
"Avennione" natus est.
彼はアヴィニオンで生れた。
Vixit "Salamine".
彼はサラミネ島に生活した。
Mortuus est "Athenis".
彼はアテネ市で死んだ。
補語が locus@であり、
且つ一つの形容詞に伴われ
ている時は、屡々前置詞な
しに奪格Aにおかれる。
"Salubri loco". 健康
地で(或は in salubri
loco).
"Omnibus locis".
る所で(或は in omnibus
locis")
もし補語が(普通名詞或
は国の名詞) totus(時と
してはomnis, univer-
sus, medius)に伴われる
ならば、前置詞なしの奪格
が用いられ得る。
"Tota Asia" .全アジ
で(或はin tota Asia).
"Omni " ora maritima.
全海岸で。
@ フランス語で前置詞 a で先立たれているものは小さな島の如く見倣される。例:a Malte,
a Salamine 等。-- 前置詞 en を取る島は大きな島を示す:例: en Corse, en Irlande 等。
A 次の奪格が単独に用いられる表現句に注意すること:terra marique,陸にも海にも;
dextra,右側に;laeva,左側に;domo, castris se tenere,家に、陣営に居る;tecto,
mensa recipere,家に、食卓に接待する;libro,もし人が本の全体を示さんと欲すれば;de
amicitia "alio libro" dictum est,他の本で友情について論ぜられている(全部は友情を取
扱っている)。然し次の例、即ち、agricultura laudatur "in" eo libro qui est de tuenda
re familiari,に於ける in eo libro は...本の或る所で...となる。
B Loco 或は in loco としてを意味する。 -- Habere aliquem loco (或は in loco)
patris, 誰かを自分の父の如く見倣す(n. 136 参照))

338. 地格の補語

町の固有名詞
特殊な語A
備考
もし居る場所が第一或は
第二変化単数の町或は小さ
な島@の名詞であるなら
ば地格(属格の形)を用いる。
"Lugduni" natus est.
彼はリオンで生れた。
Vixit "Romae".
彼はローマで生活した。
Mortuus est "Cypri".
チプルス島で彼は死んだ。
次の語が限定されていな
いならば、地格におかれる。
humi,地に;domi,家で;
ruri,田舎で;belli...do-
mi 或は militiae...domi,
戦争の時、平和の時。
"Ruri" vivere.)
田舎に住む。
Estne "domi"?
彼は家に居るか?
a)地格は修飾され得ない、故に
”景色の美わしい田舎で”は(n.
336 の一般規則に由って)"in
rure" amoenoと訳される。
b)然し、属格の補語又は所有形
容詞に伴われ得る:domi "Cae-
saris"; domi "maea".然し
in domo Caesaris;-- in
domo mea とも言い得る。
n. 340.
@ 然し乍ら、ipse, totus, omnis, meus によって限定された町或は小島の名詞は通常 in
と友に(或は unde, どこからの質問には ex と共に)おかれる:in ipsa Alexandria eram.
私はアレキサンドリアその町に居た。
A Animi, 心の中にも亦地格である。然し詩的に用いる:pendeo animi,私は未決定である。

p.150

339. 特殊な場合 -- 同格名詞に伴われた補語

もし補語も同格名詞も形容詞或は限定補
語をもっていないならば
もし補語或は同格名詞が形容詞或は限定
補語をもっているならば
1.補語たる普通名詞は一般規則に従い
(n. 336)、固有名詞の前におかれる。
2.背詰め理たる固有名詞は普通名詞と同格に
おかれる。
Natus est "in urbe" "Roma".
彼はローマの町に@生れた。
1.固有名詞の説明たる普通名詞は固有名
詞の後におかれ、一般規則に従う。
2.固有名詞は要求された格におかれる
(n. 337 或は 338)。
Natus est "Romae" "in urbe nobili".
彼は有名な町Aたるローマに生れた。
@ もし前置詞 ad を使うべきであるならば、同格名詞の前では繰返さない:
Constiterunt "ad Romam" urbem nobilem.彼らは有名な町たるローマの近くに止まった。
A 品質形容詞はラテン語の固有名詞に関係し得ないので、もし普通名詞が日本語で示されて
いないならば、ラテン語ではそれを挿入する。例:Constiterunt Corinthi, in "urbe" no-
bili. 彼らは有名なるコリントに止まった。

340. 限定された domus rus

所有形容詞以外の他の形容詞によって
限定されたとき
所有形容詞或は属格語によって限
定された domus
Domus rus とは普通名詞の一般規
則に従う(n. 336)。
Habitat "in rure amoeno".
彼は景色のよい田舎に住んでいる。
Habitat "in hac domo".
彼はこの家に住んでいる。
Domus(rus ではない)は前置詞をとる
か、或は地格におかれる。
In domo mea,私の家で。
Domi meae,私の所で。
In domo Caesaris,チェザルの家で。
Domi Caesaris,チェザルの所で。

2.Quo (何処へ)?の質問に対して

341. 一般規則 -- この質問に答える語は常に前置詞と共に或はそれなくして対格におかれる。

342. 前置詞を伴う補語

In @
Ad
人がその中へ行く場所を示すためには in
と対格とを用いる。
Eo "in urbem" .私は町へ行く。
Proficiscor "in Angliam".私は英国
へ出発する。
...の方へ(場所或は人)行く、を示すには
ad と対格とを用いる。
Accesserunt "ad muros".
彼らは城壁に近づいた。
.
@ 動詞的名詞はそれが転化した動詞を要求する構文法をとる。
:"Reditus" "in patriam".帰国すること。

p. 151

343. 前置詞を伴わない対格の補語

町の固有名詞
Domus rus の場合
もし行く場所が町の固有名詞或は小島を示
すならば前置詞@なしの対格が用いられる。
Regulus "Carthaginem" rediit.
レグルスはカルタゴへ帰った。
Domum rus はもし限定補語をもたな
いならば前置詞を伴わない。
Eo "domum" ; -- "rus".
私は家へ -- 田舎へ行く。
@ Ad は町の固有名詞の前でも省略されない。
:Miles "ad Capuam" profectus sum.私はカプアへ兵隊として出発した。

344. 特殊な場合 -- 同格名詞に伴われた補語

もし何れも形容詞或は限定補語を
もたないならば
もし何れかが形容詞或は限定補語を
もつならば
1.補語たる普通名詞は一般規則(n.342)
に従い、固有名詞の前におかれる。
2.説明たる固有名詞は対格におかれる。
Profecti sunt "in urbem" "Romam".
彼らはローマの町へ出発した。
1.固有名詞の説明たる普通名詞は固有名
詞の後におかれ、一般規則に従う(n.342)。
2.固有名詞は対格におかれる。
Eo "Lugdunum", "in urbem nobi-"
lem".私は有名な町たるリオン@へ行く。
@ 私は有名なコリントへ行く=Eo Corinthum, in "urbem" nobilem.339, n.2 参照。。

345. 限定された domus rus

所有形容詞以外の他の形容詞によって
限定されたとき
所有形容詞或は属格語によって限
定された domus
Domus rus とは普通名詞の一般規
則に従う(n. 342)。
Eo "in rus amoenum".
私は景色のよい田舎へ行く。
Eo "in hanc domum".
私はこの家へ行く。
Domus(rus ではない)は前置詞と共に
或はそれなくして対格におかれる。
Eoin domum meam或は domum
meam. Eo in domum Caesaris或は
domum Caesaris.
.

346. 前置詞の合成動詞

一般には前置詞を繰返す
前置詞を繰返さなくともよい
次の動詞と共に、即ち:
incidere, の上に或はの中に落ちる;
inducere, の中に導く;
invadere, の中に入る;
Invadere "in" urbem.町へ侵入する。
次の動詞と共に、即ち:
ingredi, の中に入る;
inire, の中に入る;
adire, 近づく;
Ingressus est urbem.彼は町へ入った。
N.B.-- Petere, へ行く、は他動詞である:Italiam petivi.私はイタリアへ行った。

p. 152

347. Quo の質問の一般規則に従って、次の補語を ad と共に対格におく。

1。傾向及び精神的刺激を示す動詞及び形容詞
の補語
.
2。能力、物質的傾向@を示す動詞および形容詞
の補語
.
.
3。Attinet, pertinet, spectat, に帰する、
に関する、
の動詞の補語、又はinterest,
refert
と共に事物の名詞(n. 220 参照)。
.
.
.
Pronus "ad irascendum".怒り易い。
Merces "ad laborem" invitat.
報いは労働を奨励する。
Calceus aptus@"ad pedem".
足に合う履物。
Idonea@"ad agendum" tempora.
働くに適した時間。
Venae "ad cerebrum" pertinent.
血管は大脳に至る。
Hoc "ad me attinet.
このことは私に関係する。
"Ad honorem" nostrum refert.
我々の名誉に関することである。
@ Aptus, に適応した;idoneus, に適切な;natus, の為に生れた 、の補語は与格にもお
く:res apta "aetati", 年齢に適した事柄。
A 唯単なる適合性を示す形容詞は与格を要求する。n. 235.

348. 動詞たる目的語 -- 目的語は動詞でもあり得る。その時ラテン語では次の如く訳される。

1。Ad と共に-dum に終る動
詞的中性名詞によって
2。Causa と共に-di に終る
動詞的中性名詞によって
3。Ut と共に接続法によ
って(n. 368)
:Eo "ad ludendum".@
Eo "ad visendamAurbem".
:Eo "ludendi causa".
Eo "visendaeAurbis causa".
:Eo "ut ludam".
Eo "ut visam" urbema.
@ 古典的散文以外には、-um の目的分詞(運動を示す動詞の後に)又は -urus の分詞を用
いたものもある:eo lusum; eo visum urbem; eo lusurus: eo visurus urbem.
A 動詞的中性名詞の動詞的形容詞への置換えは、n. 120 参照。

349. 距離を示す状況補語 -- Ubi, quo の質問に関連する距離の状況補語は次の様に訳される。

一般に対格によって
時として奪格によって
特に abesse, distare, @の動詞と共に
:Abest viginti "passus".
二十歩距たっている。
.
他の動詞Aと共に。
:Viginti "passibus" a castris con-
sedit.彼は陣営から二十歩距たった所で止ま
った。
@ これらの動詞と共に奪格は稀にしか用いられない:abest viginti "passibus".
A 然し乍ら如何なる動詞の場合でも、距離を示す intervallum, spatium の御は必ず奪格
におかれる:aberat decem milium "intervallo".十マイル距たっている。

p. 153

3.Unde (何処から)の質問に対して

350. 一般規則 -- Unde の質問に答える補語は前置詞と共に、或はそれなくして奪格におかれる。

351. 前置詞を伴う補語

Ex @
Ab @
出る場所を示す為には e, ex と共に奪格に
おく。
Redeo "ex urbe".私は町から帰る。
"Ex Sicilia" profectus est.
彼はシチリア島より出発した。
遠ざかる場所及び人物を示す為に、a, ab
と共に奪格を用いる。
Caesar "aAGergovia" discessit.
チェザルはゲルゴビアより遠ざかった。
Venio "a patre" .私は父の所から来る。
@ 表現句:ex equo pugnare.馬に乗って戦う;ex又は de equo desilire.馬からと
び下りる(時として equo desilire と言う。何となれば desilire de を含むからである)。
A Ab は町の固有名詞の前でも省略されない。

352. 前置詞なしの奪格補語

町の固有名詞
Domo rure@
もし出て来る場所が町の固有名詞か小島で
ある時には前置詞なくして奪格におく。
Regulus "Roma" discessit.
レグルスはローマから撤退した。
Domo, 自分の所より、家より;rure, 田
園より、が修飾限定されていない場合は前置
詞をとらない。
Redeo "rure".私は田舎から帰る。
@ Surgere "humo", 地から起上がる、は詩的言い方であるが、詩人を真似て多くの散文家
(特にTitus-Livius Tacitus )は詩人と同様前置詞なくして唯奪格のみで humo を用いて
いる。

353. 特殊な場合 -- 補語が同格名詞を伴っている場合

もし何れにも形容詞又は限定
補語がない時
何れかに形容詞或は限定補語
がある時
1。普通名詞なる補語は、n. 351 の一般規
則に従い、固有名詞の前におく。
2。説明たる固有名詞は奪格におく。
Redeo "ex urbe" "Roma".
私はローマの町から帰る。
1。固有名詞の説明たる普通名詞は固有名
詞の後におかれ、n. 351 の一般規則に従う。
2。固有名詞は奪格におかれる。
Redeo @ "Lugduno", "ex urbe"
nobili.私は有名なるリオンより帰る。
@ 私は有名なるコリントより帰る=redeo Corintho, ex "urbe" nobili. 339, n. 2 参照。

p.154

354. 限定された domus rus とについて

所有形容詞以外の形容詞により
修飾されている時
Domus が所有形容詞或は属格語
により限定されている時
Domus rus とは普通名詞の一般規則
に従う(n. 351)。
Redeo "ex urbe amoeno" .
Redeo "ex hac domo".
Domus(rus ではない)は前置詞なくし
て、或はそれと共に奪格におかれる。
2。固有名詞は奪格におかれる。
Redeo domo mea又は ex domo mea.
Redeo domo Caesaris又はex domo C...

4. Qua (何処を通って)の質問に対して

355. 一般規則 -- この質問に答える補語は普通 per と共に対格に、時として前置詞なくして奪格におかれる。

Per @と共に対格

前置詞Aなくして奪格

:Iter faciam "per Italiam".
イタリア経由で旅をしよう。
Se "per medios hostes" immisit.
彼は敵中に身を投じた。
"Per domum" patris mei.
父の家に寄って。
通過の概念を含む確定した場所の名詞の場
合。
"Via" Sacra.サクラ街道を通って。
"Porta" Pia.ピア門を通って。
"Jugis" montium.山嶺を伝って。
@ Transire と共には per を用いない:Italiam trasibo.イタリアを通過しよう。
A 表現句:terra marique, 海陸を経て(参照 337, n. 2);時として只 terra, 陸を経て、
又は mari, 海を経て;terra Galliam petit.彼は陸路ガリアに行く。

場所の補語の一覧表
質問
前置詞と共に
前置詞なしに
Ubi?
(335-340)
.
.
.
Quo?
(341-347)
.
.
Unde?
(350-354)
.
.
Qua?
(n. 355)
Sum in urbe,n. 336.
Commorari in Sicilia,n. 336.
Ad Zamam vicerunt,n. 336.
Cenabam apud patrem,n. 336.
In rure amoeno,n. 338.
Eo in urbem,n. 342.
Profiscor in Angliam,n. 342.
Accesserunt ad muros,n. 342.
Eo in rus amoenum,n. 345.
Redeo ex urbe;-- ex Sicilia,n. 351.
A Gergovia discessit,n. 351.
Venio a patre,n. 351.
Redeo ex rure amoeno,n. 354.
Iter faciam per Italiam,n. 355.
Per domum patris mei,n. 355.
Avennione natus est,n. 337.
Terra marique,n. 337, n. 2.
Vixit Romae,n. 338.
Ruri viverem,n. 338.
Domi meae,n. 340.
Carthaginem rediitm,n. 343.
Eo domum;-- rus,n. 343.
Eo domum meam,n. 345.
.
Roma discessit,n. 352.
Redeo rure,n. 352.
Redeo domo mea,n. 352.
.
Via Sacra,n. 355.
Italiam transibo,n. 355.n. 1.

p.155

時の状況補語

356. 時の状況補語は行為の日時或は期間を示す。

I -- 行為の日時

357. 補語が quando? 何時?の質問に答える時、その補語は原則として前置詞と共に、或はそれなくして奪格におかれる。数詞を伴う場合は順序数詞を使用する。

補語

条件


1。前置詞なき
奪格
.
.
.
.
.
.
.
.
2。In と奪格 .
.
1) 時の一つの区分を表わす名詞:例えば
時間、日、月、年、季節等であれば、
.
2)定期的な公式行事を示す名詞:例えば
公式の競技、市(いち)、公民会等であれば、
3)[一般に]それ自身、時の区分を示さな
い名詞:例えば青年期、戦争などであって
も、もし形容詞又は一つの属格を伴うなら

.
.
それ自身の区分を表わさず、しかも形容
詞も属格も伴わない名詞、
.
Venit "hora tertia".
彼は三時に来るでしょう。
Hieme,冬に。
"Ludis"
競技の時に。
Extrema senectute.
老年期の末頃。
Adventu Caesaris.
チェザルが到着した時。
Bello Punico.@
ポエニ戦争の時。
"In" juentute.青年期に於て。
"In " consulatu.
私が執政官であった時代。
@ 然し乍らこの場合にも in が用いられた例がある:"In" bello Punico.

358. Quando の質問に関する特殊用法 --

Post @と対格

In と対格

の後、を訳す為には post と共に対格を
用いる。
:"Post tres dies" profiscar.
私は三日の後に出発するでしょう。
目的時間(迄に)を訳すためには in と対
格とを用いる。
:Eum "in posterum diem" invi-
tavit.翌日来る様に彼を招いた。
@ しかし数詞の後にある post ante とは副詞である:
Decimo ante anno或は decimo anno ante =九年前(一般規則 n。357, 1 参照)

p. 156

II -- 行為の規則

359. 期間に関して、行為には三つの質問がなされ得る。

1。Quamdiu?(どれだけの間?)

どれ位の間一つの行為が継続したか又継続するであろうかを示す補語を、

一般に前置詞なしに対格に 時々前置詞 per と対格に 稀に前置詞なしに奪格におく。
(基本数詞と共に)
:"Multos annos" vixit..
彼は長い間生きた。
Regnavit "tres annos".
彼は三年間統治した。
もし一つの行為の期間の
継続を強調しようとする時
"Per totum diem".
dormivit.彼は終日眠っ
た。
Regnavit "tribus annis".
(しかしもし補語が omnis
totus の語を含んでいる時
には奪格が相当用いられる。)
表現句:per tempus, 好機の間;in annum creantur consules.執政官は任期の一年
として選ばれる。

2。-- Quamdudum?(からどれ程?)

361. Quamdudum は二つの事柄を示し得る、すなわち、

開始以来の行為の継続期間を示す
行為の完了以来の期間を示す
対格を使用する(順序数詞@と共に)。
Multos iam "annos" regnat.
彼が治め始めてから数年になる。
"Tertium annum" regnat.@
彼が治め始めてから二年が過ぎた。
"Tertium annum" regnabat, cum...
その時彼は二年前から治めていた。
.
1) Abhinc Aに伴われた対格(基本数詞
と共に)。
"Abhinc tres annos" mortuus est.
彼は死んでから三年になる。
2) Ante と対格とを使用してもよい。そ
の時基本数詞は指示形容詞 hic, haec, hoc
に先立たれている。
Ante hos tres annos" mortuus est.
@ 日本語で満二年であっても、ラテン語では順序数を使うから第三年目になる。故に満を
示す基本数詞の代りに順序数詞を使う場合は一年を加えねばならぬ。
A Abhinc は現在から計算してどれ程前かを示す。それで過去の時からどれ程前かを示すに
は用いられない。この概念は、
I-- の後にの表現法によって代えられて示される。即ち、その時附属文は主文になって、
a)Post(副詞)と奪格と基本数詞或は順序数詞とを用いる。例:彼が死んだ時は彼が帰って
から三年であった(=彼は帰ってから後、三年後或は四年目に死んだ)。
Obiit tribus post annis,或はquarto psot anno quam redierat.
b)Post(前置詞)と対格と基本数詞或は順序数詞を用いる:Obiit post tres annos,或は
post tertium annum quam redierat.(この時は順序数詞に一を加えない)。
II -- Effluere, 経過する、の動詞の構文法によって示される:Tres anni effluxerant ex
quo redierat, cum obiit.
表現句:ab Urbe condita,ローマ建国より;a (me) puero,(私の)少年時代より;a
(vobis) pueris,(貴方がたの)少年時代より。

p. 157

362. 備考 -- 年齢は生れた時よりの期間を示すから quamdudum に関連する。ラテン語に於ては二つの表現法がある。即ち

Natus によって
Agere annum によって
これと共に対格と基本数詞とを使う。
Senex "nonaginta annos natus".@
九十歳の老人。
.
これと共に順序数詞を使う。
Mortuus est "nonagesimum pri-
mum annum agens.
満九十歳で死んだ(即ち九十一年目に)。
@ 或は senex nonaginta "annorum".(度量属格 n. 203, 1。参照)

3。-- Quanto tempore?(どれだけの時間で?)

363. 行為を完了するために要する時間を表わす補語は次のようにする。即ち

一般に
時々
奪格に(基本数詞と共に)、
"Tribus annis" urbs capta est.
町は三年で占領された。
Intra と対格(足らずでを示す為に)、
"Intra tres annos" urbs capta est.
町は三年足らずで占領された。

時の状況補語の一覧表

Quando?
(357-358)
.
.
.
.
.
Quamdiu?
(360)
.
.
Quamdudum?
(361-352)
.
.
.
Quanto tempo-
re?(n. 363)
1)前置詞なき奪格
.
.
2) In と奪格
.
3) post と対格
4) In と対格
1) 前置詞なき対格
.
2) Per と対格
3) 前置詞なき奪格
1) 前置詞なき対格
.
.
2) Abhinc と対格
3) Ante と対格
1) 前置詞なき奪格
2) Intra と対格
Venit hora tertia.n. 357.
Ludis.n. 357.
Extrema sennectute.n. 357.
In iuventute.n. 357.
In consulatu.n. 357.
Post tres dies proficiscar.n. 358.
In psoterum diem invitavit.n. 358.
Multos annos vixit.n. 360.
Regnavit tres annos.n. 360.
Per totum diem dormivit.n. 360.
Regnavit tribus annis.n. 360.
Multos iam annos regnat.n. 361.
Tertius annum regnat.n. 361.
Nonaginta annos natus.n. 362.
Abhinc tres annos mortuus est.n. 361.
Ante hos tres annos mortuus est.n. 361.
Tribus annis urbs capta est.n. 363.
Intra tres annos urbs capta est.n. 363.

p. 158

第二項 -- 状況補語たる命題

364. 基本概念 -- 状況命題は主動詞の補語として使用される。然し乍ら補足命題の様に文章の合理的意味には必須のものではない。

365. 状況命題についての一覧表

状況命題
定 義
接続詞
1) 目的
.
.
2) 理由
.
.
.
.
3) 条件
.
.
.
4) 譲歩
.
.
.
.
5) 時間
.
.
.
.
.
6) 結果
.
.
7) 比較
.
.
.
目的命題は主文の行為の目標たる事実を示す。
"汝の両親に気に入らんが為に学べ"。
.
理由命題の主文によって表わされた行為の根拠たる
事実を示す。
"彼は勉強した結果学者である"。
.
.
条件命題は主文の行為がそれなくしては為され得な
い事実を示す。
"もし私が本をもつならば勉強するであろう"。
.
譲歩命題は主文の行為がそれに拘らず為される事実
を示す。
"彼が如何に勇敢であるとは云え然し彼は恐れた".
.
.
時間命題は主文の行為が附属の行為の前、後、或は
同時又は間になされる事実を示す。
"彼が到着したとき、私は貴方の手紙を読んでいた"。
.
.
.
結果命題は主文の行為より出る事実を示す。
"彼は死ぬ程それ程打撃を受けた"。
.
比較命題は主文の事実との類似関係を示す。
"私がそれを予見した如く事は進行した"。
.
.
Ut,
Ne,
Quo.
Quia, quoniam,
quod, quando,
Cum,
Non quod, non quo,
Ut.
Si, quod si,
Nisi, (ni),
Dum, modo,
Sive...sive.
Quanquam, etsi,
tametsi,
Cum,
Ut,
Licet, quamvis.
Cum, ut, ubi,
Ut primum, ubi primum,
Quamdiu,
Donec, quoad,
Postquam,
Antequam.
Ut,
Ut non,
Quin.
Quam,
Ut, sicut, velut,
quemadmodum,
tanquam.

p. 159

1)目的状況命題

366. 動詞の法 -- 目的状況命題は常に接続法におかれる。

367. 動詞の時称 -- 接続法の時称は接続命題の時称の一致の規則に従う(n. 271)。

368. 接続詞 -- 目的状況命題は種々の接続詞によって引き出される。すなわち

1。Ut @によって 2。一般に quo Aによって 3。Ne(ut ne)Bによって
目的命題が肯定の場合。
Eum abduxerunt "ut"
dictator "esset".
彼を独裁官になさん為に引
出した。
目的命題に比較級があるとき。
Otiare "quo melius labo-
res.
よりよく働く為に休め。
.
目的命題が否定の場合。
Id Caesar facit "ne" se
hostes "opprimant".
チェザルは敵が自分を圧倒し
ない様にこれを為す。
@ Ut は時々比較級と共に用いることがある。しかし quo は比較級なしには稀である。
A Quo それによって....ようにを意味する。
B Ut ne,チチェロはかなり屡々これを用いた。然し彼以後には殆ど遣われていない。

369. Ut の置換 -- 否定命題に於ては

以下の様に云われぬ
以下の様に言われる
Ut nemo, ut nihil, ut nunquam, et ne Ne quis, ne quid, ne unquam, neve.
:Id fecit, "ne quid" respublica detrimenti caperet.
国家が如何なる損害をも受けぬ様に之を為した。

370. 目的命題を引き出すqui -- 関係代名詞の qui, quae, quod (役目に従って要求する格におく)も、接続法の目的命題を引き出し得る(接続命題の時称の一致の規則 n. 271)。
:Mitte hominem "qui" me "moneat".
私に告げるために人を遣れ。

371. 目的命題の他の表現法@ -- 次の如きものによって目的動詞が作られることは既に n. 348 に於て述べた。即ち

1。Ad と共に-dum の動詞的中性名詞
Ad と共に-dus の動詞的形容詞
-di の動詞的中性名詞と causa
-dus の動詞的形容詞と causa
:Mare trajecit "ad pugnandum".
戦うために海を渡った。
..."ad patriam defendendam"
国を護るために....
:Mare trajecit "pugnandi causa".
.
:Mare trajecit "patriae defendendae
causa".

@ 目的分詞は運動の動詞の後にしか用いられない。然し之は余り古典的ではない。n. 348 参照。

p. 160

2) 理由状況命題

372. 動詞の法 -- 理由命題は接続詞又は文章の意味に従って接続法或は直説法におかれる。

373. 動詞の時称 -- 原則として理由命題は独立命題の時称の規則に従う() n. 179, 180)。

374. 接続詞 -- 理由状況命題は種々の接続詞@によって引き出される。即ち

1。Quia, quod,
quoniam, quando によって
2。Cum によって
.
これらの接続詞は一般にA直説法と共に用
いられる。
Doctus est "quia studuit".
彼は勉強した結果、学者である。
この接続詞は常に接続法と共に用いられ
る。
"Cum laboret", erit doctus.
彼は勉強するから学者になるであろう。
@ 理由を示すut は稀にしか用いられない。その時は常に直説法と共に構成さる。
A これらの接続詞が接続法と共に構成される時は、作者が自分の思想ではなくて、他人の思想
を表わそうとする時である。
:Noctu ambulabat Themistocles, "quod" somnum capere non "posset".
テミストクレスは眠られないからといって、夜散歩していた。

375. 理由命題を引き出す qui -- 関係代名詞 qui, quae, quod (屡々これを強化するために ut, utpote, quippe を前におく)は理由命題をも引き出し得る。その時は接続法と共に用いられ、時称に関して独立命題として取り扱われる。
:Fuit mirifica vigilantia, "qui" suo toto consulatu somnum non viderit".
彼はその執政官の全期間中眠らなかったので、非常な警戒をあらわした。

376. 接続法と共に用いられるnon quod -- Non quod, non quo(特に比較級と共に用いられた)、non quod non, non quo non, non quin(二重否定)の後には接続法が用いられる。
然し sed quod, sed quo の後には直説法を用いる。何となればその時は事実の確実性についてのべるからである。
:"Non quod" illud "probem", sed quod prohibere "nequo".
私はそれを認めるからではなく、妨げることが出来ないからである。
:"Non quo" mihi "sit" alter altero carior...
一方が他のものよりも私にとって親しいからではなく...
:"Non quin" tibi "confiderem"...
私が汝に信頼をおいていなかったわけではなく...

p. 161

2) 条件状況命題

377. 動詞の法 -- 条件命題は接続詞に従って、(又命題の意味に従って、例えば si と共に)接続法或は直説法におかれる。

378. 動詞の時称 -- 時称は一般的一致の規則に従って(或は言わんとする概念によって)決められる。

379. 接続詞 -- 条件命題は種々の接続詞によって引き出される(n. 365, 3)。

380. Si によって引き出される条件命題 -- Si の規則は、n. 149 に述べられている。

381. Si non 或は nisi によって引き出される条件命題 -- これらの接続詞は又は etiamsi, たとい...ともは同様に si の規則に従う。

382. Si non nisi との使用法:条件命題が否定である場合(もし...ないならば)。

Si non@を用いる
Nisi を用いる
1。肯定条件に否定条件を対立させる時。
Si feceris, habebo gratiam -- "si
non"A feceris, ignoscam.
もし汝がそれをするなら感謝しよう、もし
しないとしても汝に悪意をもつまい。
2。結題が、at, at certe, saltem, at
saltem, 少なくとも或は tamen, attamen
それでも、で始まるとき。
"Si non" hominis, "at" aetatis
ratio habenda est.
もし人格に対して尊敬を持たないならば、
少なくとも年齢に対して尊敬をもつべきである。
"Si non" est perfectio, "at" cona-
tus "tamen".
完全さはないとしても、少なくとも努力があ
る。
.
他の場合に於て、特に、
1。Nisi fallor, 私がもし誤らなければ
nisi molestum est, うるさくなければ
の表現句に於て。
2。一般的格言に於て。
Memoria minuitur, "nisi" eam ex-
erceas.
記憶はこれを鍛錬せねば、減退する。
3。反語の意味を有する命題中に於て
でなければを訳するため、この場合 vero
或は forte を伴い、直説法と共に構成される。
"Nisi forte" creditis eum demen-
tem esse.
汝らが彼を発狂者とさえ思わなければ。
4。主動詞が否定Bであるときは屡々。
Non credam, nisi videro.
それを見なければ信じまい。
@ 否定詞を省略する時 si non "si minus"或は" sin minus" によって置換え
られる:si fefeceris, habebo gratiam; -- "si minus", ignoscam.
A 第二条件が第一条件の否定ではなく、反対の条件であるとき "sin"或は "sin autem,"
けれどももし...であれば、を用いる。例:Si verum est, gaudebo;-- "sin" falsum, non
dolebo,もしそれが真実ならば私は喜ぶだろう(然し)もし虚偽であっても悲しまないだろう。
B 否定文に於て、nisi ...を除いて、もし...でなければ、...しかないを意味する(動詞を引き
出さない)。
:Juravit se, nisi victorem, non reverusurum.彼は勝利者としてしか、帰らないだ
ろうと言った。

p. 162

383. Sive によって引き出される条件命題 -- Sive...sive, 或は..でも、或は...でもの後には
直説法を用いる。
:"Sive loquebatur," "sive tacebat," semper augustus erat.
彼は語っていても、黙していても、常に尊厳であった。

384. Modo によって引き出される条件命題(制限的意味で)-- 接続詞 dum, modo, dum-
modo, もし...さえならば、...の条件で、は接続法を要求する。否定の場合は ne を使う。
:Omnia honesta neglegunt, "dummodo" potentiam "consequantur".
彼らは権利を得さえするならば、正直さには何らの注意も払わない。

385. 条件命題を引き出す qui -- 関係代名詞 qui, quae, quod は条件命題を引き出し得る。
その時之は接続詞 si の如く直説法又は接続法を伴い得る。
:Hoc "qui videat", nonne confiteri cogatur?
人はそれを見るならば、認めるを余儀なくされないだろうか?

4)譲歩状況命題

386. 動詞の法 -- 譲歩命題は接続詞に従って直説法或は接続法におかれる。

387. 動詞の時称 -- 譲歩命題が直接法にある時は、n. 179, 180 の規則に従い、接続法にあ
るときは接続詞命題の時称の一致の規則に従う( n. 271 )。

389.Quanquam によって引き出される譲歩命題 -- 接続詞 quanquam, tametsi, とは言え、
と雖も、は常に直説法と共に構成される。
:"Quanquam est" incredibili audacia, tamen pertimuit.
信じ難い大胆さを有するとは言え、彼は全く恐れてしまった。

390. 副詞 quanquam -- 独立命題の冒頭におかれたquanquam(etsi, tametsi)は前の
肯定を矯正し、然し、而も、更に、の意味を有する。
:Quanquam quid opus est in hoc philosophari?
然し乍ら、この点では空論する必要があるか?

391. Cum 及び ut によって導き出される譲歩命題 -- 接続詞 cum, と雖も、とは言え然
及び ut, としても、仮令...ともは接続法を要求する。
:Socrates, "cum" facile "posset" educi e custodia, noluit.
ソクラテスは、たやすく出獄することが出来たとは言え、それを望まなかった。
"Ut desint" vires, tamen est laudanda voluntas.
力は欠けているとしても、意向は賞讃さるべきである。

p. 163

392. Licet によって引き出される譲歩命題 -- 接続詞 licet, とは言え、は接続法を要求する。然し、それは過去の主動詞と共には用いられない( licet は実際は現在の動詞であるからである、n. 131,2 参照)。
:"Fremant" omnes "licet," dicam quod sentio.
皆が激昂するとは言え、私は思う所を述べよう。

393. Quamvis によって引き出される譲歩命題 -- 接続詞quamvis(直訳は、汝が欲するだけ如何程...とも、如何なる...とも、とは言え)も接続法を要求する。

一般には形容詞或は副詞を修飾する
時としては動詞@を修飾する
Patriam, "quamvis" in me "ingrata
sit," amare non desinam.
祖国は私にとって如何程忘恩であっても、
私はそれを愛することを止めまい。
"Quamvis imprudenter agat", eum
juvabo.彼が如何に軽率に行動するにして
も、私は彼を助けよう。
Quod turpe est, id, "quamvis" oc-
cultetur", tamen honestum fieri non
potest.

恥ずべきことは如何にそれが隠されようと
も、正直に言うことになり得ない。
.
.
@ Quamvis は過去の動詞と共には稀にしか使用されない。例:Illa, quamvis ridicula
"essent," mihi tamen risum non moverunt.これらのことが如何に笑うべきことであ
ったとしても、私には笑を催させなかった。

394. Etiamsi によって引き出される譲歩命題 -- 接続詞 etiamsi と(稀に)etsi, としても、それでも、とは言え)とは、 si の規則に従う。従って次の様に構成される。

1。接続法と共に
2。直説法と共に
主動詞が危惧のある可能或は事実の反対の
意味を有する時。
Nonne impetrare debeat, "etiamsi"
vim adhibere non "possit"?
力に信頼し得ないとしても成し遂げる義務
はあるまいか?
"Etiamsi" mors oppetenda "esset",
in patria mallem quam in alienis locis.
死すべきであるとしても(実際は死なないの
であるが)、私は他国に於て死するよりも、祖
国に於て死することを望む。
"Etsi" nihil aliud Sullae nisi consu-
latum "abstulissetis", "tamen eo
contentos vos esse oportebat?
汝らはシラより執政官職だけしか奪わなか
ったとしても、汝らは満足すべきではなかっ
たろうか?
主動詞がは事実のことであるとき。
Quod crebro videt homo non mi-
ratur, "etiamsi", cur fiat, "nescit".
人は屡々見る所のものを、それが何故然る
かを知らないとしても驚かない。
Gaudeo, "etsi" nihil "scio" cur
gaudeam.
私は何故嬉しいか、とっとも知らないが嬉
しい。
Viros bonos sequor, "etiamsi
ruent."
善人が滅亡に瀕するとしても、私は彼らの
意見に従おう。
"Etiamsi" quod scribas non "ha-
bebis", scribito tamen.
書く様なことがなくとも、私に手紙を書き
なさい。

p. 164

395. 譲歩命題を引き出す qui -- 関係代名詞 qui, quae, quod は譲歩命題を引き出し得る。その時は接続法を使用する。
:Phocion, "qui" ditissimus esse "posset", pauper esse maluit.
フォチオンは富者であり得るとしても、貧者であることの方を願った。

5)時間状況命題

396. 動詞の法 -- 時間命題は接続詞或は文章の意味に従って直説法か接続法かにおかれる。

397. 備考:反覆の場合 -- 現在或は過去の反覆された事実を示すためには接続詞の如何に拘
らず、直説法を用いる。接続法は古典的ラテン語には例外的である。
:Membris utimur, "priusquam didicimus".学ぶ前に肢体を、我々は使っている。
"Cum" cohors impetum "fecerat",@hostes confestim refugiebant.
大隊が攻撃を行っていた度毎に、敵はすぐに逃げていた。
"Cum" a me "discedunt", flagitant litteras.
彼らは私より去る時は、いつも手紙を要求する。

398. 動詞の時称 -- 時間命題が直接法にある時は、n. 179, 180 の規則に従う。もし接続法に
ある時は、接続詞命題の時称の規則 n. 271 に従う 。

399. 接続時間を示す状況命題は種々の接続詞によって引き出される( n. 365, 5 参照)。

400. Ut, postquam によって引き出される時間命題 -- 接続詞 ut primum
ubi primum, simul ac, ...や否や;postquam, ...後;dum, の間、間中は、常に古典的ラ
テン語に於て直説法を要求する。
:"Ut" Hostius "cecidit", Romana inclinatur acies.
ホスチウスが倒れるや否や、軍列は崩れた。
Eo "postquam" Caesar "pervenit",obsides poposcit.
到着後チェザルは人質を要求した。
Hoc feci "dum" licuit.それが赦された間だけ、われを私は為した。

401. 備考 -- Dum ...間を意味する時は直説法の現在と共に用いられる
:Pullus, "dum" escam "quaerit", margaritam invenit.
雛鳥は餌を探しているとき、真珠を見出した。

@ Fecerat faciebat ではない。ラテン語は論理的に二つの行為の相対時間を示す、攻撃は敵が逃げる以前に行われたものである。

p.165

402. Cum によって引き出される時間命題 -- 接続詞 cum(又は quom, quum)は文章の意味によって直説法か接続法かを伴う。

Cum と直説法
Cum と接続法
直説法の時称は二つの出来事の間の時間的
関係 -- 事件の単なる同時性 -- を示す。その
cum 丁度その時、時、時から、を意味
する。
Cum " haec "scribebam@" , cen-
sorem iam te esse putabam.
私がこれを書いていた時、貴方が既に検閲
者であると思っていた。
"Cum" Caesar in Galliam "venit",
principes erant Aedui.
チェザルがガリアに来た時は、エドウス人
が統治者であった。
Vicesimus annus est, "cum" sce-
lerati me unum "petunt".
悪漢が私一人を攻撃するのは二十年目になる。
"Cum" de bello Romano "cogita-
bis", inter primos amicos Hanniba-
lem habeto.
貴方がローマ人と戦争を考える時には、ハ
ンニバルを貴方の一番の友人と見なせ。
Vix dumA epistulam tuam legeram,
"cum" ad me "venit".
丁度私が貴方の手紙を読みおえた時、彼が
私の所へ来た。
接続法(半過去、大過去)は以下の場合に
用いられる。
1。主動詞の行為への時間命題の影響を示
すために。
Multa "cum essem" consul, de
periculis reipublicae audivi.
私は執政官であった時(又は"故に")共
和国の危険について多くのことを聞いたた。
Alexander, "cum interemisset"e
Clitum, vix a se manus abstinuit.
アレクサンデルはクリツスを殺した後(又
は"故に")殆ど自殺しようとした。
2。話中の事件の単なる時間的連絡を示す
場合にも、主に半過去又は大過去を使う様な
時。
"Cum" hanc jam epistulam "expli-
carem", tabellarii a vobis venerunt.
私が丁度この手紙を閉じつつあった時、貴
方達から使が来た。
Ad fontem cervus, "cum bibisset"
restiti.
鹿は飲んだ後、泉の傍に止まった。
.
.
@ 半過去であるから cum scriberem をも使い得る。チチェロの cum "explicarem"
...の例に於ては、時間命題の行為は主文の行為に何等影響しない。
A 主文が vix, vixdum, iam, nondum の何れかを有しているときには、(時間命題の動
詞が半過去におかれていても)一般に直説法におかれる。

403. 備考 -- Cum の特殊意義 -- Cum がもつ時間的意義に時々結果的意義も加えられる。特に fuit cum, erit cum, fuit tempus cum の表現句に於てそうである。その時 cum ような時にを意味し接続法の適当なる時称を伴う。
:"Fuit cum" mihi quoque initium requiescendi fore iustum "arbitrarer".
休み始めるのは私にも正当であると思われる様な時もあった。

p. 166

404. Priusquam によって引き出される時間命題 -- 接続詞 priusquam (prius .... quam ) antequam(ante...quam), 以前に、dum@時まで、は或は直説法或は接続法を伴う。

A) 時間命題が過去の事実を述べる場合
B) 時間命題が未来の事実を述べる場合
1。単なる時間の関係を示すためには直接
法にするA -- その時接続詞は...の前に、...
時まで、はを意味する。
:Non fugere destiterunt, "prius-
quam" ad flumen pervenerunt".
河に着く迄は逃げるのを止めなかった。
Haec omnia "ante" facta sunt,
"quam" Verres Italiam "attingit".
ヴェレスがイタリアに到着する以前に、こ
れ等凡てのことは起こった。
2。時間の概念以外に、意向又は遅れるこ
との観念Cを示す時、接続法にする。--そ
の時、接続詞は...を待ちながら、...を待たず
に、を意味する。
:"Priusquam" signum pugnae "da-
retur", Hannibal tabellarium mittit
(n. 180 参照).
戦闘の合図を与えるのを待たずに、ハンニ
バルは使者を送った。
"Antequam" de meo adventus au-
dire "potuissent", iter perrexi.
彼等が以前に私の到着を聞き得ないように
早く私は道を続けた。
1。或る動作が行われる時まで、或はその
時の前を示すためには、接続法現在Dにする。
:"Priusquam" ipsi liberi "sitis",
dominari in adversarios vultis.
貴方達は自由になる以前に(待たずに)、敵
に対して覇権を握ることを望んでいる。
Requiescam "dum" se calor "fran-
gat".
私は暑さが減ずるまで(待ちわび乍ら)休
憩しよう。
2。或る動作が成就されるまでを示すため
には直説法先立未来Bにする。
:De Carthagine vereri non desi-
nam, "antequam" illam excisam
"cognovero".
私はカルタゴの滅亡を知るまでそれを恐れ
ることを止めないであろう。
Expecta "dum rediero".
私が帰るまで待ちなさい。
.
.
.
.
@ Donec quoad 時までの意味があるが、この接続詞は殆ど接続法を使用すべき場合
にしか用いられない。然し...程長く、...間中の意味のあるquoad(donec は古典時代後のこ
とである)は常に直説法を要求する。
:Tribuno plebis, "quoad potuit", restitit.彼が能う限りの間、護民官に反対した。
A もし主文が否定であるか、或は時間命題中の動詞が実際に行われた過去の動作に関係して
いる時には、殆ど常に直説法が用いられる。
B 先立未来の代りの接続法現在は古典時代以後のことである。
C 遅れることの概念 -- 時間命題の事実がなされ得ない中に主文のことがなされたことを言う。
:"Prius" ad castra pervenit, "quam" quid ageretur Germani sentire
"possent".ゲルマン人が何が起るかを感づき得ない中に、彼は陣地に到着した(彼の
到着は時間命題のなされることを妨げた)。
D この接続法は少なくとも通俗文体又は...について離す前に...ついて離そうを意味する表現句
に於ては直説法現在(未来ではなく)によって代えられ得る。
:Antequam ad sententiam "redeo", de me pauca dicam.
問題に戻る前に、私について少し離しましょう。

p. 167

6)結果状況命題

405. 動詞の法と時称 -- 結果命題は ut と共に接続法におき、また時称は一般的一致の規則に従わず、意味によって異なる(n. 179, 180 参照)。

:Tantus pavor fuit ut etiam nunc "tremam".
私の恐れは私を今も尚震えさせる程であった。
Tot accepit plagas ut inde "moriturus sit".
彼は死ぬ程それ程の傷を受けた。
Tam sapiens erat ut decipi non "posset".
彼はだまされることの出来ない程の賢人であった。

406. 時称の一致の特殊的な場合 -- 歴史的事実を述べる場合次の如き時称が用いられる。

) 接続法半過去
) 接続法過去
主文の強度性を強調したい時(結果命題の
事柄が単に主文の強度性の証拠である。)
Tam@fortiter pugnaverunt Romani
ut "vincerent.A
ローマ人は勝利を得る程勇敢に戦った。
.
.
原因への従属性を強調することなく、特殊
な歴史的事実として結果命題の事実を示さん
とする時。
Consul ita@ fudit hostes ut An-
tonius "fugerit".
執政官が敵を敗北させたので、アントニウ
スは逃亡した。
@ 上記の二つの例によってわかる様に屡々主文におかれた一つの語は、次に結果命題の来る
ことを予知せしめる、この語はtam, ita, sic, adeo 等の副詞或はis, talis, tantus, tot,
tam multi 等の形容詞(代名詞)である。主文に於ける対語は必ずしも必要ではない。
:Fortiter pugnabant ut vulnera non sentirent.彼は傷を感じない程勇敢に戦った。
A 半過去の vincerent は勝利が勇敢の証拠たることを表わす。

407. 否定的結果命題 -- この命題は次の様に引出される。即ち

) Ut non @によって
) 屡々A quin によって
主文が肯定である場合。
Tanta tranquillitas exstitit "ut" se
ex portu commovere "non" pos-
sent. 出港することが出来ない程の凪が突如来た。
.
主文も否定(形式上或は意味上B)である
場合。
Nunquam tam male est Siculis
"quin" aliquid facete dicant.
シチリア人は冗談を言わない程決して不幸
ではない。
@ 場合によってはut nemo, ut nullus, ut nihil, ut nunquam 等によっても引出される。
:Tanta tempestas coorta est, "ut nulla" navis cursum tenere posset.如何
なる船もその航路をたどることが出来ない程暴風が起った。
A また否定主文の後にも ut non を用い得る。
B 例えば否定的意味たる疑問命題。 例:Quis hoc videre potest, "quin" te accuset?
汝を告訴することなくしては誰がそれを見ることが出きるか(誰も見ることができない)。

p. 168

408. 結果命題を引出す表現句 -- 以下の命題は結果命題の接続法を要求する。

1。Dignus @esse qui,
...に価する
2。 Is esse qui
...ような人である
3。不定の意味Bの表現句
[関係代名詞は ut と代名
詞と同等である]
Non digni estis "quo-
rum" (=ut vestri)me
"misereat".
汝等は私の憐みに価しな
い。
Voluptas non est dig-
na ad "quem" (=ut
ad eam) "respiciat"
sapiens.
快楽は賢人がそれに気を
止めるに価しない。
[関係代名詞は ut と代名
詞と同等である]
Non is es "quem"
(=ut te) pudor a sce-
lere "revocat".汝は
羞恥によって罪より遠ざけ
られる様な人ではない.
Ea est mater tua
"quae" te probe "in-
stituat".
汝の母は汝を正しく教育
し得る様な人である。
.
1)SuntB qui;
ようなものがある。
reperiuntur qui,
ような人が見当たる。
2)Nemo est qui;
ような者は誰もいない。
quisC est qui?
ような者は誰か?
"Nihil est quod" tempus
non "molliat.
時が和らげない程のものは何もな
い。
.
@ 同じく indignus qui に価しない;idoneus qui, aptus qui, に適当であると共にも
同様な構文にする。
A 他の不定表現法として est quod, ...筈である;habeo quod, 理由が私に或る;est ubi,
...ような場合がある。

B Multi, quidam, alii, pauci, duo 等に伴われる表現句の場合直説法又は接続法を用い
る、然し、法によって意味が異る。
:Sunt multi qui "fallunt".(直説法)欺く人は多い。
Sunt multi qui "fallant".(接続法)欺きそうな人は多く居る。
C 否定的表現句(形式上或は意味上の後には、qui non の代わりに(関係代名詞が如何なる格
にあっても)quin(ut non ではない)を用い得る。

409. 特殊的意義をもつ表現句。

) 比較級と quam ut@(否定 non)
) Tantum abest ut...ut contra...
:Ad "maiora" genitus sum "quam
ut" mancipium "sim" mei corporis.
私は私の肉体の僕であるためには、余りに
高い運命をもっている。
"Maiore" praeditus est virtute
"quam ut non fateatur".
彼が自白しない為には余り有徳である。
:"Tantum abest ut" te "contem-
nat" .(補足命題[n. 279]の時称の一致の
規則、[n. 271]), "ut contra" te magni
"faciat"(結果命題)[或は adeo non te
contemnit, ut contra te magni faciat].
彼は貴方を軽蔑するどころではなく、反っ
て大変重んじている。

@ Quam ut の代わりに quam qui (適当な格におかれる)を使い得る。

410. 結果命題を引出す qui -- 関係代名詞 qui, quae, quod 又は関係副詞 ubi も接続法の決壊命題を引出し得る。
[然し、結果命題が adeo, ita, sic によって、主文に於て予告されているならば、qui を用いずに ut を用いる。
:Quae est tam firma civitas "quae" non odiis "possit everti"?
不和によって滅ぼされない程強固な国はどれであろうか?

参考文献:

  • 初等ラテン語文典 Latinae Grammaticae Rudimenta, 田中秀央著、研究社、 1954
  • 初級ラテン語入門 Elementa Linguae Latinae, 有田 潤著、白水社、1964
  • Gildersleeve's Latin Grammar, Third Edition revised and enlarged, by B. L. Gildersleeve and Gonzalz Lodge, London, Macmillan & Co, 1960
  • 羅和辞典 Lexicon Latino-Japonicum, 田中秀央著、研究社、1957
  • Macmillan's Elementary Latin-English Dictionary, G. H. Nall、Macmillan、1960
  • An Elementary Latin Dictionary, by Charlton T. Lewis, Oxford at the Clarendon Press, 1966
  • Oxford Latin Dictionary, P.G. W. Glare、Oxford at the Clarendon Press、1982
作成日:2004/08/03
最終更新日:2005/05/19

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羅典文法 第一部

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