バレンタインの夜に。






「佐伯君、これ!」
「わぁ、どうもありがとう!!」



28個目のチョコ。
帰って店に出たらお客さんからも貰うんだろうな。
嫌いじゃ無いけど
こうも大量になると見るのも辛くなってくる。
100個のチョコよりも
昨日ニュースで見た数千万円のチョコよりも
1つだけあればいいって言うチョコもある。
今は・・・まだ手にしていないけど。


辺りを見回すけど気になるあいつの姿は無い。
何だよ、いつも俺の周りをちょろちょろしてる癖に
こんな時に限って居ないなんて。
誰かの所へチョコ、渡しに行ってんのかな・・・。

あーっ、やめやめ!!!
何かイライラしてきた。今日はもう帰ろう。
これ以上増えても困るだけだし。

夕焼けに染まる空の下、たくさんの紙袋を下げ
俺は小走りに校門を駆け抜けた。








「お帰り、瑛。
そうそう、今日は貸し切りの予約が入ってるからね。」
「え!?そんな話し聞いてないよ!!
何時からだよ?何人のグループ?仕込みは・・・?」
パニくる俺をじーちゃんは笑いながら見てる。
「そろそろ時間だな。」
そうじーちゃんが呟いた時だった。
カランとドアベルがなってお客さんが入って来る。
「いらっしゃいま・・・」
俺の目はその人物に釘付けになった。


「佐伯君、こんばんは。遅くなったけどこれ・・・」
差し出されたのはブルーのリボンがかかる小さな包み。
「予約って・・・」
じーちゃんの方を見れば、相変わらずにこにこしてる。
「ハ・・・ハハハ。」
急に力が抜けて
側にあった椅子に座り込んだ。



俺は今、世界に1つしかない
俺だけのとびっきりのチョコを手に入れた。
あいつの笑顔と一緒に・・・。


バレンタインの夜はまだ長い。










(1st Love&タイピング発売記念カウントダウン50様参加作品)