+++君の。+++



「ハリー、誕生日プレゼント何が欲しい?」
面と向かって言われた放課後の音楽室。
こう言う時は、俺の事を考えて買ったもんをくれるのが定番じゃないのか?
欲しい物をプレゼントすると言うのは確かに合理的で
貰った本人にしてもありがたいのかもしれないけど。
けど、それって何か寂しくないか?

俺はお前がくれるもんなら何でもいいのに・・・。

佐伯からはピックを貰った。(俺はアイツのギターの先生だからな)
志波からははばたき市ミステリーブックを貰った。(・・・嫌がらせか?)
今度志波にはお礼として俺のお気に入りの場所、天守閣へ連れて行ってやろう。
祝いの言葉は・・・数え切れない程のやつらから貰った。
あいつからのプレゼントはまだで
それはきっとサプライズを狙って最後の最後に貰えるもんだと思っていた。
それがどうだ。
「何が欲しい?」って・・・準備もしてねぇのかよ。
目の前でにこにこしているこいつに、俺の繊細な心は理解できないかもしれない。
すっかりいじけモードに入ってしまった俺は頬杖をついてオレンジ色に染まる空を見た。

こいつから貰いたい物。

いじけながらも考えてみる。
欲しい物、欲しい物・・・何でもリクエストに応えてくれるのかろうか?
いや、応えて貰う。絶対に。
ハリー様の純粋な心を傷付けた代価はでかいのだ。
こうなれば欲しいもんがっつり貰ってやろうじゃないか。
考えを巡らせていると、一つの答えがふわりと浮かんだ。
数日前の朝にふと思った事・・・。



「お前の・・・が欲しい・・・。」

「・・・え?」

面と向かって言うのは照れるので、空を見たままつぶやいた。
何だよ、そんなに驚いた声出して。難しい事じゃねぇだろう?

「っと・・・こ、ここで?」
「・・・?ここじゃ都合が悪いんか??」
「やっぱり・・・えっと・・・その・・・。」

歯切れの悪い答えに少しいらっとした。

「欲しいんだよ、お前のが。」
静かな音楽室に俺の声だけが響いた。
真っ直ぐ見るお前の顔は赤らんでいて伏し目がちで。
何か・・・どこか変な気がした。
こいつ何か勘違いしてる?勘違い・・・勘・・・違い・・・・・・・??



「・・・ばっ!!!!お前何考えてるんだよっ!?」

思わず立ち上がると、ガタンと派手な音を立てて椅子が倒れた。
俺の思い当たった答えが正解ならこいつの狼狽ぶりもに納得がいく。

「おおおお、お前っ・・・ななな、何考えて・・・!!!!」

あいつは下向いちまうし、予想外の答えに俺はテンパっちまうし。
・・・俺にとって女ってのは本当に摩訶不思議な生き物だ。







『ハリー、起きて起きて!朝だよ!!』
あいつの声が聞こえる。
俺が欲しかった物、そしてあいつから貰った物・・・。
ずっと聞いていたかったけど、手を伸ばし布団の上の携帯を取る。
寝起きの悪い俺だけど、あの日からはすんなり起きられる様になった。
この声のおかげで。

お前の声だから起きられるんだからな。

絶対あいつには言ってやんねぇ。調子に乗るから。
大きく伸びをしてカレンダーに目をやると、もうすぐクリスマスである事に気付く。
このお返しも込めて何かプレゼントを考えないとな。


ちょっと照れくさく温かい気持ちのまま、カバンを手に俺は一階へと階段を駆け下りた。