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歌舞伎・劇作家 YUKIKO IWAGO

悠々人report

こゆきが出会った素晴らしき人々をご紹介します。


三ヶ尻善子さん


 三ヶ尻さんとの出会いと、人となりをお話しするにあたり、
2012年10月11日の大分市能楽堂の舞台公演をご紹介させていただきます。

ひとり芝居 三ヶ尻善子
「天領豆」〜たらちねの心の闇を知るものは〜

演出/山下晃彦 音楽/木村俊介 脚本/岩豪友樹子 プロデュース/篠永朋子



 道歌(どうか)は道徳的、教訓的な短歌で、仏教や心学などの教えをわかりやすく詠み込んだものです。よく知られたものは、
「なせばなる なさねばならぬ なにごとも ならぬはひとの なさぬなりけり」
「這えば立て 立てば歩めの 親心 吾が身に積もる 老いを忘れて」
「いつまでも あると思うな 親と金 ないと思うな 運と災難」などがあります。

 その中に、
「たらちねの 心の闇を 知るものは 子を思うときの 涙なりけり」という和歌をみつけました。
このひとり芝居「天領豆」の主人公の心情にあまりにもぴったりなので、副題としました。

 この芝居を書くことになったのは、かれこれ10年以上も前のこと。国立劇場で「大力茶屋」が上演されたあと、合同新聞社の今戸さんの紹介で三ヶ尻善子さんにお会いし、「ひとり芝居を書いて欲しい」と依頼されました。

 テーマを何にしようか、舞台はどこがいいだろうかと思い悩むうち、三ヶ尻さんはご自身の演劇活動が忙しくなり、私も上演作品の締め切りに追われたりなどして、お互い、「じっくりと時間をかけて創り上げましょう」ということになりました。
長い年月を経て出来上がった作品は、さらに何年か寝かされ、あたかも時を経て醸成したお酒のように、このほどようやく姿を現しました。



 日田祇園祭りの夜に豆田町の骨董屋に現れた御高祖頭巾の女性、綾。
かんざしを買い戻しにきたという綾は哀しい身の上話を始める。
江戸から明治へと変わろうとする激動の時代に、天領日田の片隅で、代官所の下級武士の妻として生きた綾は、最愛の息子の死、夫や姑と死別、初恋の人との決別を経て、今もなお息子の姿を探し続けていた・・・



 時代に翻弄されながらも、懸命に生き抜いた母を演じた三ヶ尻善子さん渾身の芝居は、総合プロデュースの篠永朋子さん、国内外で活躍する演出の山下晃彦さん、音楽の木村俊介さんなど一流の方々のお力を得て、芸術性高い舞台となりました。
能楽堂の舞台で、幾人もの登場人物の魂をその身ひとつに宿らせ、泣いて笑って転げまわる、体力の限界に挑戦する覚悟で臨んだそうです。






 三ヶ尻さんが一番好きなセリフです。
「残された私たちは、生きていかなければならないのです。
この新しい時代がこれからどうなっていくのか、しっかり見定めなければならないのです」


 近年は、下記の作品などにご出演されています。
■2010年第12回大分県民芸術文化祭 大分文化会館
「たそがれて 今ubaざかり〜あの空の下に〜」
■2011年11月、NHK大分放送局開局70周年記念ドラマ「無垢の島」(全国放映)
豊後水道に浮かぶ無垢島で暮す少年つばさの両親に代わり、温かく育て見守る祖母、松本悦子を好演されました。

三ヶ尻さんのこれからの、さらなるご活躍をお祈り申し上げます。


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